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第二話

「タクミ殿!タクミ殿、起きるでござる!」


金属製の扉が壊れるかも知れないと心配になるほど乱暴なその打撃音に3人掛けソファーで転寝をしていた青年、タクミはその重い瞼を開けた。

ふあ~、と大きなあくびとともに頭をぼりぼりとかく。


「その声、バルトか?」


「おお、タクミ殿起きられたか。この扉を開けるでござる」


「おいおい扉へこんでんじゃねえか、この扉鋼鉄製なんだけど」


よっこいせとソファーから降りたタクミは扉の前へと向かう。


「昨日徹夜だったからすっごい眠いんだけど、しょうもない用事だったらぶっ飛ばすからな・・・んっ?」


「どうされた、タクミ殿?」


ガチャガチャと取手を動かす音は聞こえるが、一向にあかない様子にバルトが疑問の声を上げる。


「いや、へこみすぎて扉あかねーんだけど」




「いや、申し訳ないことをした、扉の修理費は後で防衛本部が支払うでござる」


「いや、それはお前が・・・まあいいや」


目の前で正座をしながらたんこぶを作っている赤髪の男を一瞥し、タクミはため息をつく。


原因は目の前のこの男と、壁にめり込んでいる鋼鉄製のドアである。


「お前開かないからって扉壊すこと無いだろ、扉直るまでどうするんだよ?」


「修理が終わるまで拙者の隊から2名ここにおいておこう、それで問題ないでござろう」


「問題あるわ!!」


正座の体勢から足を崩し、胡坐になった男、バルトはよく言えば真直ぐ、悪く言えば猪突猛進だ、身長190cmもある筋肉質の体躯に堀の深い顔、赤髪のツンツン頭は良くも悪くも猪、という言葉がよく似合う。


「今、自分の悪口が聞こえたでござる」


おまけに勘もなかなかに鋭い、野生生物かよとタクミは内心で思った。

この性格とござる口調が無ければこの男がジルベール防衛本部の花形箒飛ブルーム隊の隊長といわれても納得いくのだが。


「で、なんだよ用って」


ソファーの上で片手で頬杖をつく。


おおそうであった、とバルトは懐から書簡を取り出すと先ほどとは一変、真面目な顔で読み上げた・

怪異ストレンジがヤンチェップ区南西外壁に出現、防衛本部は魔法都市位階序列第4位、『無音』の出撃を決定した、なおこれはセラス皇女の名の下に証明されるものであり、速やかに戦場へと向かうように、との指令だ」


「俺に出撃命令?それって言うと」


「左様、護国七柱に本当にふさわしいか、最終テストでござる」


「よし、じゃあ行きますか!!」


そういうとタクミは窓枠に足を掛け、文字通り跳んだ。


「タ、タクミ殿、そちらは逆方向でござるよーーー!くっ箒飛ブルーム隊、タクミ殿んぼ後を追うぞ、ついて参れ」


そういい空間魔法により軍用箒を取り出したバルトはタクミの背中を追ったのであった。


聖暦594年

魔法文明全盛の折、各地に怪異ストレンジと呼ばれる巨大生命体が出現、怪異ストレンジの詳細が不明なまま各国はその恐ろしいまでの力にひとつ、またひとつと数を減らし、生活領域を縮小、その間防衛手段を確立するもミーリア大陸サザラント王国、カノッサ大陸リントリム王国、アメリア大陸ルーブド帝国合計24都市を残すのみとなった。

各都市はそれを独立自治都市とし当時まだ余力のあったサザラント王国が盟主となりサザラント連邦共和国へと統合、怪異ストレンジの調査とともに撃退を行っている。





「さて、それじゃ行きますか」

黒髪をたなびかせ射出カタパルトへと跳ぶ少年、タクミは眼下に見える戦場を見た。

「外壁自体にはあんまり損傷はないな、街との距離はすでにあと10キロってとこか」


緊張感の無い声でひとりごちるタクミにパン、パパンと乾いた音が後方より響いた。


「赤ひとつに白二つ、制限なしってことね」


タクミはくるりと身を翻すと射出カタパルトの2キロほど先の空中で停止した。


「でっけーなぁ」


突然現れたタクミに移動していた射出カタパルトは停止し、幾何学模様を明滅させている、さも理解しようとしているような仕草であった。


「へえ~怪異ストレンジが生命体かも知れないってのはあながちうそじゃないかもな」



キイィィィィィィィィィッィィ


そういいながら右手をあごに乗せ考えるタクミに業を煮やしたのだろうか射出カタパルト咆哮の後幾何学模様を一層発光した。



射出カタパルト咆哮、もう一度同じ攻撃来ます。迎撃は?」


「必要ない」


「は?」


迎撃命令を待っていた男性司令は以外な上官の言葉に思わず呆けた声を出してしまった。

それを見たエルロイは口に笑みを浮かべ通信玉の先に入りであろう男へと問うた。


「それでいいのだろう、バルト」


「左様、位階序列4位は伊達ではござらんよ」


バルトは左耳に当てた小型通信玉に手を当てにやり、と不敵な笑みを浮かべた。


「さて、それでは」


タクミは左手をおもむろに上げたかと思うと。


ぐっと手を握り。


そして引いた。


ズパンッ、と、その一挙だけで目の前の射出カタパルトは横一門に亀裂を生じさせ、そして割れた。


射出カタパルト沈黙!魔力量の減衰を確認対象対象を撃退しました!!」


アイラの興奮した声にエルロイは目の目に起こった現実へと意識を戻した。


「これが・・・位階4位の実力・・・」


大型表示窓スクリーンに映しださっるそこにはすでに飛び去る黒髪の少年の後姿しか写らなかった。

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