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男は最凶の勇者か魔王か  作者: ミイナ
20/23

女神アヴィス12

獣魔族連合の死者23、重傷者多数と圧倒的な勝利を見せつけたウィザーはその足でゴーマンを出る事にした。

積み上げられた獣魔族柱を背にアラクネ、アルケニー達を引き連れてゴーマンの街中を歩く。

噂が噂を呼び街中の獣魔族がウィザーを一目見ようと集まっていた。


「皆の者!良く聞け!ウィザー王はこの大森林全土を狩りつくし!その力を見せつけ歴代の獣王が成し遂げられずいたダイタロス全てを征服する意思を御見せになられた!聞け!獣王支配領域の外の者達よ!お前達に選べる選択肢は3つだ!降伏か死かそれとも戦うか、どちらかを選べ私はウィザー王にかわりゴーマンを治めるハリ、その全権を委ねられし者。街に住む者に告げるこれより獣王支配領域に住む者にはウィザー王特需で生活が豊かになると宣言する!それと私の一族、狐獣魔族一族以外は下位へと落ちた………上へと上がるチャンスだぞ」


集まる群衆の前でそう宣言をしたハリを見つめる獣魔族達の目が熱い。

実力は下位に落ちたとしてもある獅子、虎、大猿、熊、豹、狼ではあるが発言力は無くなりいままで通りとはいかなくなる。

横柄で横暴だった者達も何かあれば直ぐに排除対象になったことで肩身の狭い思いで生活する事になる。


だが6席が空いた。

このチャンスに成り上がろうとする者、商売チャンスと捉える者、そして今までの恨みを晴らすチャンスをえて笑みを浮かべる者、そしてそれを聞き見つめる支配領域の外の者などあつい熱をもってウィザーが進むのを見つめる。

街を出るとウェザーはキラリから貰ったダイタロスの地図を見る。

獣王支配領域以外は空白が多く目標物は山か川など簡単なものしか書かれていない。

半径50キロが支配領域であるため先ずはもっとも遠い東にある村へと向かうことにした。

ダイタロスは魔王城から東にある国、女神アヴィスが住む山と平行に進む感じだ。


「ウェザー王、どこまで進む予定でしょうか?」


ウェザーを先頭にユリ、ユフィ、コタロが並びその後ろに狐獣魔族のキンラカ、兎獣魔族のチャラナ、犬獣魔族のザライフそして何故か虎獣魔族のパナラもついてきていた。

そしてその後ろにアラクネ、アルケニー、ケンタウロス、邪妖精の総勢50名が続く。

ここにケンタウロスや邪妖精が入ったのはアラクネやアルケニーの半分を残す事に決めたハリの采配のせいだ。

当初、威勢の良いことを言っていたが流石に城砦の警護を考えると不味いと気づいたらしい。


「先ずはこの地図に載ってるカカハラという村へと向かう」


「………いえ、それは聞きました。そこに行くには20日ほどかかるかと。もうすぐ夜になります。夜営するのか近くの町へ向かうのか聞いたのですが………」


「そんなにかかるか?深夜には着くつもりでいたが」


「………」


「ウェザー王!それは夜通し歩き続けるという事?」


「道は平坦ではない。魔物も出る、俺達には無理だ」


キンラカは絶句し、チャラナは怯え、ザライフは無表情だが弱気が見えた。


「はい!陛下に質問があります」


そう言って手を上げたのはアラクネ15名の一人でアラクネリーダーのフェスタだ。

ハリが少女ぽい感じならこの娘は元気娘といった感じで髪は黒のショートヘアー、パッチリ二重の可愛らしいアラクネだ。

その隣にアルケニー10名のリーダーのエスタが控えている。

こちらは黒髪ロングの知的美人さんでフェスタが十代前半ならエスタは十代後半の女性に見える。

同じ大蜘蛛に人の上半身が生えているがアラクネは着の身着のままだがアルケニーはきちんとした女性用の服を着用し上半身だけみれば人間に見える。


「なんだ?」


「はい!陛下が言う行程は私達にも無理です!それにハリ様から魔物肉の調達も頼まれているのですが」


「この辺りなら私達だけでもいけるわよフェスタ、なんならアルケニーだけでやりましょうか?」


「へぇ~、エスタ達でゴーマン分を確保できるんだ~」


「ウッ………時間をかければなんとか」


そういえばそんな事も頼まれていたなと思い出したウェザーは二人の話を聞きながら考えていると。


『ちょうど良いじゃない!』


「なにがだ?」


『ウェザーも気づいているでしょう?こっちをコソコソとつけ回す奴が複数いる事によ』


「それで?」


『狩りをしながら炙りだしましょうよ。目的地に進みながら魔法で狩る。気配察知を使えるでしょう?』


ああ、あのやり方かとウェザーは地球で覚えた狩りを思いだす。

魔族と魔物の気配の違いを覚え大森林へとその感覚を広げるとそこら中に魔物がいるのがわかる。

もちろん離れた所でこちらを見つめる魔族の気配もあった。


「では行くか。アラクネ、アルケニー、ケンタウロスは獲物の回収及び運搬、邪妖精達は獲物を見つけ皆に知らせろ」


「「え??」」


首を傾げるフェスタとエスタ、それに構わずウェザーは魔法を使う。

使う魔法は土魔法、ウェザーの回りに太い杭のような形で無数に浮かべると魔物の気配がある場所にそれを放つ。

それは森中に走り次々と破壊音を響かせた。


「……あの、何を?」


「魔物狩りだ。今放った場所に魔物がいるからお前達はそれを回収して街へと運べ」


「へ?」


「聞こえなかったか?」


「いえ!皆、聞いたわね」


「「「はい!!!」」」


少し凄んでみせるとフェスタは慌てて皆に指示をだし森中に散っていく。

それを見送りウェザーは歩きはじめた。


「旦那様、せっかく鍛えたのでユフィさんとコタロさんの分を残してほしいのですが」


約500メートルほどの範囲で気配を探り見つけては魔法を放っていたウェザーの横からユリが声をかけた。

この場にいるのはユリ達とキンカラ達だけ、他はウェザーが仕留めた魔物を探し回っている。

遠くで歓声のような声も聞こえるので上手くいっているようだ。


「なら前方の魔物は残してやろう」


「はい。ユフィさんにコタロさん聞きましたね?」


「は、はいですの!」


[わかったッス!]


「おい、パナラといったか、お前も行け。チャラナとザライフもだ」


「は~い!」


「わかった」


「ビクッ!………はぃ」


「あの~、僕は?」


「お前は別の仕事がある。とりあえず月が見える頃まで進め」


「「「「はい」」」」


頬をひきつらせながら前へと駆け出すユフィ達を見送ると再び歩きはじめた。

止むことのない激突音を響かせながら歩くこと6時間。

大量の魔物を担ぎアラクネ、アルケニー、ケンタウロス達がゴーマンへと戻る。

それでも残る大量の魔物を前に今夜はここで夜営することを決め一夜を明かす。

ユリが地図を見ると一日目で約5キロほど進んでいた。

街へ向かうにも比較的安全に行けるはずなのでフェスタ達も最速で戻ってこれるだろう。


「で、お前達の成果は?」


火をおこしその回りを円を描くように座るユフィ達に聞く。

全員が傷だらけで戻ってきていて、ここに戻ってくると全員が倒れたのは負傷だけではなく疲労のせいもある。

前方にいたユフィ達へとウィザーが魔物を魔法で誘導したせいだ。

それでもこの周辺の魔物はそれほど強くもなかったので休憩される暇を与えなかったが。


「えっと……どのくらいでしたかっけチャラナさん」


「………アハハ。ザライフ、言ってやってよ」


「………覚えてない」


「だ、だよね。数が多くて大変だったし」


「………128」


「「え??」」


ボソッと呟いたパナラをユフィとチャラナが見る。


「だから128よ!何なのよ馬鹿なの!死ぬわよ!休みなく次々次々と………ごめんなさい許して下さい」


突然雄叫びをあげたと思ったらウィザーに向いて土下座をして泣いて謝るパナラ。


「私の一族の虎獣魔族はウィザー様に絶対の忠誠を誓います。この身、この命全てを捧げますのでどうか許して………」


地面に頭を擦り付け謝るパナラをキンラカ達はオロオロと見つめる。


「そんなのいらんな」


「ヒッ!」


ウィザーのゴミを見るような視線にパナラは身を強ばらせる。


「そうです!必要ないです。旦那様のお体は私が管理してますので貴女の出番はないのです。熟女の魅力とユフィさんの少女の魅力があるので!」


「か、関係ないですよね?ユリ様。私は別に……その」


「フフフ、いつでも良いのですよ」


「………まだ…い、いいえ、何でもないですの!」


「そうですか?まあ、いいです。パナラさんといいましたか貴女の力を見てあげましょう。次いでにキンラカさん達も来なさい」


「え?」


「え~、関係ないよね?」


「わかりました」


森の中へとパナラの手をとり歩いていく。

キンラカ、チャラナは困惑しながらも着いていき、素直に返事をしたザライフは強い者には逆らわないらしい。

それをお見送りウィザーはユフィを見る。


「城砦での訓練の成果がでているようだな。今日はもう休んでいいぞ」


「……は、はいですの!」


[俺っちもいるッスよ~]


テントへと駆け出すユフィの顔は嬉しそうにほころんでいた。

その後をコタロも追いかける。

するとユリ達が向かった森から悲鳴が聞こえはじめた。


「今日の動きは無しか」


こちらをつける獣魔族達は数は減ったがちゃんと着いてきている。

それはウィザーが攻撃をしたわけでなく報告のため離れたのだろう。

いつでも殺れたのだが探すより来てもらった方が楽なのだ。

支配領域外の獣魔族、その強者がウィザーの首を狙ってくるだろうと想像すると楽しみが広がる。

焚き火を見つめながら笑うその顔は子供なら泣き出すだろう凄みがあった。




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