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非力な私が悪いのか?  作者: 七
こんにちは異世界
9/13

きゅう

外は晴天。今は暖期のため気温が高く、狼族の皆さんは薄着が多いようだ。具体的には男は上半身裸で女性も大事な部分だけ隠してますよ~って感じ。皆さん見事な肉体美です。肉祭りです。


「スズだ」


ライが私の名前を紹介する。私の背中を押して前に出しながら言うもんだからザワリと騒がしくなった広場の視線を独占だ。わーい、嬉しくなーい。


…これは視線を背そらしたら喰われるのかしら?


どいつもこいつも整った顔ばかりの狼族に囲まれて、鈴はゴクリと喉を上下させた。ええぃ、女は度胸。入社2年目の営業スマイルを舐めるなぁぁ!


「は、初めまちて、鈴です」


噛んだ。





今は広場にて鈴のお披露目中である。


まだ完治とはいかないが歩けるようになったから、そろそろ皆に紹介するとライに言われたのが今日の朝ご飯中。


ちなみに最近はちゃんと鈴でも噛める料理を作ってもらっているからアーンで済んでいる。料理番の皆さん本当にありがとうございます。アーンをセーフティラインに置いてるあたりもう何かが違う気がするんだけど、人間諦めが肝心だ。でないと何かがゴリゴリと減る。


「歩ける」

「治ってないから駄目だ」


広場へは何故かライに抱っこされて向かった。歩けるようになったからお披露目するのではなかったのか…諦めが肝心である。





集落の真ん中にある広場に50人位の狼族の人(?)たちが集まっていた。前にも述べたが狼族は男女共に大きい。よって集まった狼族に囲まれると威圧感が半端ない。まじでない。


そんなに見られても何も出ないですよー。


じーっと見つめられるのに耐えられず鈴はライの服をギュッと握った。何故か強まる視線。勘弁してーと内心唸っていると不意に視界が高くなった。


「皆すでに知っていると思うが、スズは落ち人だ。親父がまだ部族会合から帰ってないから正式ではないがここで保護するつもりだ。」


ライの精悍な顔を既に慣れ親しんでしまったライの腕に座りながら見下ろす。背中を撫でられながら相変わらずの安定と温もりに鈴はホッと肩の力を抜いた。


コテンとライの肩に頭をのせる。何かまたザワついたけどもう知らない。本日の営業は終了致しました。


何もわからない異世界で今鈴が頼れるのはライだけだ。子供扱いされて過保護すぎるのか困りものだがこの腕の中だけが唯一安心きる場所である。




鈴がライに撫でられながらHPを回復していると、マーサお姉様の声がした。


「ライ、スズの事詳しく話しておかないと危ないんじゃない?」


危ない?ライにもたれたまま鈴が首をかしげた。


「そうだな。皆に注意してほしい事はスズの接し方だ。」


んん??


「皆落ち人が弱い生き物だと言うことは知っているな?いいか、皆が予想する倍は弱い生き物だと認識しろ。触るならムーの卵のつもりで触れ」


再びザワつく中、1人の若い雄がライに話し掛けた。少しつり目のヤンチャな感じのイケメンだ。真っ黒な長めの髪をカラフルな羽根を加工した髪止めでまてめているお洒落さん。


「ライ様、いくらなんでも大袈裟ではないですか?ムーの卵と言ったらチョット爪が当たっただけで割れる卵ですよ?」


ムーの卵弱っ!確かに大袈裟…いや待てよ。まだ見てないけど狼族と言うくらいだから狼にもなれるんだよね?大きさはわからないけど、狼の爪がチョット当たるって……………あ、駄目なヤツだ。うん。大惨事間違いなしだわ。ムーの卵でお願いします。


「全然大袈裟じゃないわよディール」

「そうだな、全く大袈裟じゃない。」


鈴が納得しているとマーサがれやれって感じで答え、ライも大いに同意した。お洒落さんはディールと言うらしい。


「まずスズはそこら辺の最弱の魔草に巻き付かれるだけで皮膚が裂けて出血し腫れる上に、傷付いてから7日経ったがいまだに完治してない。」


シーンとなる広場。目を見開く狼族の人々。え、何?


「ピョムの肉も噛みきれない位には顎の力はないわねぇ。おまけに少食でパルの小鉢でお腹一杯よ」


パルの実でできた器でチョット大きめのご飯茶碗くらいである。ちなみにライはどんぶり茶碗3杯は食べてるし、マーサですら2杯は食べるのが普通だ。


「というか全身ほぼ筋肉がないな。これでよく動けると感心する。特に腕とかお腹なんかフワフワ…スズどうした?」


私の腕を掴みながら物凄い失礼な事言いかけたから思いっきり腕をつねったのに全く痛くなかったみたい。おのれ筋肉め。フーンだ。どうせお腹も腕もタプタプですけど何か?


ソッポを向く鈴を不思議そうにしながらもヨシヨシと撫でる。


「走りは一歳の子より遅いし、攻撃や防御なんかも出来そうもない。俺達が軽く力を入れるだけで簡単に怪我するし下手すると死ぬな。」


…なんだろう。何も出来ない駄目な子みたいに聞こえる。いや確かに今のところただ飯食らいだけどね。これでも一人暮らしして働いてたんだけどなー。


「落ち人は大切に保護する決まりがある。」


ライに撫でられながらいじけていると突如背中に悪寒が走った。


「――くれぐれもスズを傷付けないように。」


後頭部をナデナデされているためにライの顔が見えない。でも見えなくて良かった気がする。全身の産毛が総立ちだ。ライ超怖い。威嚇ってやつ?次期族長の名は伊達じゃなかったようだ。


狼族の皆さんも神妙な顔で頷いている。弱くてすいません。


「言っとくが転けただけで血が出るからな。スズが走る時は要注意だ。後は――」


うん、やっぱりただの過保護すぎるイケメンだった。この後しばらくライによる鈴の取説が続いた。





ちなみに。


皆さん初めて見る落ち人に興味津々のようでお披露目が終わったらワーって囲まれて、触られまくられました。もうお嫁にいけなーい…。


抱っこしたいとも言われたがライが離さなかったため助かった。「ライ様ズルい!」って言われていたけど当の本人は知らん顔だ。


ムーの卵がどれだけ脆いのかわからないが皆超慎重に触ってくるのがチョット面白かった。


子供達はまだ力加減が難しいから駄目らしい。残念。


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