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非力な私が悪いのか?  作者: 七
こんにちは異世界
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異世界?ここ地球じゃないって事?


信じられない。だって私は部屋にいた。いつも通りの普通の生活をしていただけだ。だけど――


鈴は青年――ライの獣耳を見る。獣耳の人間。鈴のいた世界ではありえないモノだ。


「さ、触ってもいい?」

「いいぞ。」

「わっ!」


足を持ち上げられた反動で上半身がベットに沈んだままだった鈴の身体が浮く。ライは鈴を軽く持ち上げると自分がベットに座り、向き合う形で鈴を膝立ちに降ろした。


ライが手を軽く振る。すると部屋の明るさが増した。


「え?今何したの?」

「光の精霊に頼んで明るくしてもらっただけだ。」


ファンタジーきたー。精霊だって、凄ーい☆


……だめだ、今は深く考えるのはよそう。私の許容量が越える。取り敢えずは耳の確認だ。


「ほら。」

「……ドウモ。」


ライは腰に腕を回して鈴の身体を固定し、もう片方の手で鈴の手首を持つと自分の耳元に宛がった。先程からライの行動に対してに大いに意義を申し立てたいが今は確認が先だと我慢する。ズイッと頭を差し出されたので鈴は目の前の獣耳にソロリと手を触れた。


……うわ、柔らかい。それに温い。


予想以上のモフ感に感動しつつ、血の通った生物(ナマモノ)であると認識できた。


本物かー痛いコスプレじゃなかったのね。

へぇー…………………………………………まじか。


根本まで確認するが固定バンド等は見当たらない。ツンッと軽く引っ張ってみたら耳がフイッと鈴の手から逃げていった。


「あ、ごめんなさい。痛かった?」

「いや、全然大丈夫だ。」


強く引っ張り過ぎたかと眉を下げてライを見て――鈴の動きが止まる。


「どうした?」


突然静かになった鈴に気付き、膝立ちしている為に自分より少し高い位置に顔がある鈴の顔をライが覗き込む。必然的に上目遣いで。


部屋が明るくなったからライの顔がよくわかる。


あー聞き覚えがある声だと思ったら一番最初に森で会ったお兄さんだ。


と、ぼんやりと考えながら鈴はライを見つめた。


襟足の長い黒髪の間から同じ毛並みの獣耳が凛々しくピンと立ち、鼻筋の通った精悍な顔と何も纏わず無駄のない筋肉を惜し気もなく見せる上半身。下履きはアラブの民族衣装のようなふくらはぎでキュッと締まったユルユルのズボンを履いている。


そして、先っちょしか見えないが真っ黒なフサフサ尻尾がユラユラと布団の上を泳いでいた。


……やっぱりこの尻尾も本物よね。


初対面の時は一瞬だったしほとんど獣耳に意識がいっていた。2度目は舐められるという衝撃的な事がありあまり意識しなかった。


よって、鈴は初めてシッカリとライの顔を見た。


イケメン。いや、2回目に会った時もイケメンなのは理解していたけど今改めて認識した。


野性味溢れる男らしい顔なのにどこか品もある、見た目20代後半の魅力溢れるイケメン。ただし獣耳と尻尾付。


この人は格好いいのと可愛いを両方を手に入れてどうする気なのだろうか。見事な破壊力である。そしてそんな男性にこともあろうか自分は今向き合って密着体勢中。


自慢じゃないが年齢=彼氏いない歴。イケメン抗体どころか男抗体すら持ってない。うん、気付いてしまったからにはもはや一寸たりともこの体勢は無理だ。


なので、自分から触らしてほしいと言っておいて申し訳ないが上目遣いをやめていただきたい。


鈴はソロリとライの耳から手を離した。


「あの、もういいデス。ありがとう。」

「もういいのか?」


はい、もう十分です。だから私の髪や頬をを撫でるのをやめて降ろしてください。


「あの、降ろ――」

「腹減らないか?」


鈴が下ろしてと言いきる前にライが話し掛けてきた。


ぐーー。


「……」

「……」


答えたのは鈴のお腹の虫だった。だって仕方がないじゃない!家に帰ってから今まで何も食べてないのよ!


ライはフッと口元を緩めると、真っ赤に俯く鈴の頭をポンポンと撫でてからまたヒョイと軽く持ち上げて立ち上がった。鈴はそのままポスンとライの逞しい腕に乗せられる。


「空いてるみたいだな。起きてたらと思ってご飯を持ってきたんだ。」


そう言うと鈴を抱き上げたまま入り口に向かって歩きだした。慣れない視界で思わずライの頭に抱き付く。


「あの、歩けます。」

「駄目だ。足がまだ治ってない。人族とは傷付きやすいだけでなく治るのも遅いんだな。もう1日経つのにまだ真っ赤じゃないか。」


ということはほぼ半日寝ていたようだ。1日で治るわけないじゃないと思いつつも自分で包帯をむしり取った手前強く言えずに鈴は口を閉じた。


「ご飯の前に治療だな。」

「……ありがとうございます。」


舐められたり色々言いたい事もあるがライに悪気は見られない。助けてもらってお世話までしてもらっているのだ、鈴は文句ばかりの自分を反省して素直に感謝の言葉を述べた。


ポツリと呟いた鈴にライはニコリと笑い鈴の頭を撫でた。


「よしよし、ありがとうが言えるなんて偉いぞ。治療は薬が少し滲みるかもしれないが、終わったらご飯を食べさせてやるから泣かずに頑張ろうな。っと、聞くのを忘れていたがお嬢ちゃんの名前は?」

「……鈴。」


お嬢ちゃん……これは突っ込む所だろうか。ライの言動が何かがおかしいと思いつつも鈴は名を告げる。


「スズか。突然親と離れ離れで寂しいと思うが皆スズには優しい者達ばかりだ。スズと同じくらいの子供も沢山いるから傷が治ったら紹介してやるからな。スズは何歳だ?5歳くらいか?」


ん?と聞いてくるライに鈴は目が点になった。


子供?5歳だと?なるほど、ならばライの言動も納得がいく。小さな子供相手ならば舐める以外はさしておかしくない。納得ーってオイコラ!


生まれ落ちて20年。若く見られる顔立ちではあるが5歳と言われたのは初めてだ。


……え?本気?










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