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非力な私が悪いのか?  作者: 七
こんにちは異世界
1/13

いち

朝の爽やかな日射しの下、山科(ヤマシナ) (スズ)はサンダーと一緒に森をお散歩中だ。


「サンダーもっとユックリ歩いて。早いよ。」


鈴と一緒の外出が楽しいのか嬉しそうに尻尾をフリフリしながら駆ける後ろ姿は大変可愛いのだが早すぎる。小走りする鈴はすでに汗だくだ。


「キュウーイ。」


立ち止まり振り向きざまに小首を傾げる様は何ともあざとい。この小悪魔ちゃんめ!

鈴が膝に手を突きゼーゼーと息を整えていると、サンダーがトコトコと二本足で戻ってきて頬をペロリと舐めてきた。


爬虫類系の緑の瞳と視線が合う。慣れたとはいえやはりドキリとしてしまうのは食物連鎖の底辺ゆえか。顎の下を撫でるとサンダーは気持ち良さそうに目を細めた。


刃物も通さない黄色の固い皮膚とザラザラの舌が覗く大きな口。今鈴の腕にチョンと乗っている前脚に少しでも力を込めれば鈴の細い腕など簡単に引き裂く事が出来るだろう太い爪。今もパタパタと羽ばたいている背中の翼。


ーー竜。現代ならばいるはずがない架空の生き物である。


見渡す限り生い茂る植物は20年生きてきた鈴にも馴染みのないモノばかり。天辺が見えないほどそびえる無数の巨木。絡み付いてくるピンクの蔦。鈴の顔ほどもある大きな虫。


極めつけは魔物と言われる生き物達。初めて遭遇した時は死を覚悟した。それくらい怖かった。


雷竜のサンダーが着いてきてくれなかったら妙に攻撃的なここの動植物達に速攻で美味しく頂かれているだろう。


そう、散歩しているのは鈴。サンダーは護衛だ。

戦争を知らない世代の鈴に、この異なる世界を1人で生きていく術は今のところ無い。





一ヶ月前、何の前触れもなくこの世界にやってきた。


その時鈴は一人暮らしのアパートにいて、仕事から帰ってお風呂でサッパリしたばかりだった。冷蔵庫からお水のペットボトルを取りだ出して一気にあおる。


「ぷはー生き返る~」


と、親父のような事を言いながら口をぬぐって瞬きを1つ。



目を開けたら森の中にいた。



「……………。」


あれ?私いつの間にか寝た?


鈴は最初夢だと思った。当たり前だ。一体誰がまばたきの間に異世界トリップしたと思うのか。


「…私ってこんな夢を見るほどファンタジーに憧れていたのかしら?」


見渡す限り背の高い木、木、木。間から漏れる木漏れ日のお陰で視界は明るい。見たことの無い植物ばかりだ。


やけにリアルな夢だな。モコモコのナイトウエアだから寒くはないが裸足のためヒンヤリとした地面の冷たさが足裏を伝う。手には飲みかけのペットボトルまで持っている。


…取り敢えず歩いてみるか。


すぐに森特有の湿気が鈴を襲う。おいおい、リアルすぎるぞ私。これ目が覚めたら汗びっしょりパターンじゃない?夢なのに渇く喉を潤すために鈴はグビリと水を飲んだ。


ザワザワザワ…


風で木々が揺れる。人影がない見知らぬ場所を1人で歩くのはなかなかキツイ。


「もぅファンタジーは堪能したから目ぇ覚ましてよ~どうせなら山盛りスィーツの夢希望!…って、え?」


1人で叫んでいるとシュルリと何かが足に巻き付いた。それを確認するより早く足を引っ張られて宙吊りにされてしまった。


「きゃあ!な、何何なに~!!?」


上着が捲れてヘソが丸見えだがそれどころではない。はずみでペットボトルも手放していた。


パニックになりながら手足をバタバタさせるが変化はなかった。疲れてグッタリとなった頃、ようやく鈴はハァハァと息をしながら自分の足元を見た。


「何これ気持ち悪い!」


見たこともないショッキングピンクの蔦が鈴の足首をガッチリ掴んでいる。しかもニュルニュルと動いて近付いて来ているではないか。


「きゃーっ嫌ー!!」


気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪ーい!!


再びパニックになりかけた鈴の耳にガサリと草木がこすれる音がした。誰か来た!?


「だ、誰か!助けて!助け――」


しかし現れたのは人ではなかった。


「っっっき、きゃぁぁぁぁ!!!」


過去これ程大声で叫んだことがあっただろうか。いや、無い。


ソレは犬に近い形をしていた。でも絶対犬じゃない。

鈴が知っている犬は目が3個もないし緑色の毛並なんて有り得ないし、何よりあんなに大きくない!


「グルグルグル…」


馬ほどありそうな大きな2匹の犬もどきは、唸り声をあげながらポタポタと涎を滴らせて鈴の真下をウロウロしだす。


「いーやー!!この仔達私を食べる気満々!?確かに脂のって美味しそうだけど美味しくないよー!!」


暴れると蔦が切れて犬もどきの真上に落ちるかもしれないから動けない。こうなるとピンクの蔦に地上高く吊るしてもらったのはよかったかもしれない。地上にいたら絶対食べられていた。


「でもこの後どうするのよ!!」


蔦は相変わらずユックリと巻き付いてきている。下にはお腹を空かせた犬もどき。そもそもビルの二階はあろうかというこんな高さから落ちて無事なはずもない。


「早く夢から覚めてー!!」


叫び巻くった上に宙吊りだ。ソロソロ頭に血が昇って来た。


「うっうっ気持ち悪くなってきた~私夢で死ぬの~?」


恐怖のあまり泣きが入りだした鈴の耳にまたもやガサリと音が届いた。


「今度は何よ~」


また変なモノが出てきたらと思うと力も出ない。視線だけ音がする方へ向ける。


「キュウー?」


可愛らしい声と共にソレはヒョコリと草の間から顔をだした。


「…え?り、竜?」


見たことはないが本とかアニメとかでよく見る竜がそこにいた。ファンタジーここに極まりな生き物が現れて一瞬呆気に取られたが、鈴はすぐに悟った。


死んだな、と。


しかし神は鈴を見捨てなかった。


「おい、急に走り出してどうした。何かいたのか?」


人!まだ姿は見えないが初めての人の声!自分の夢の癖に溜めすぎだろ!遅いよヒーロー!と思いながら鈴はここに来て一番の大声をあげた。


「お願い助けて!!」

「は?」


長時間の宙吊りからの大声のせいか、人がいた安心感からか急速に鈴の意識は遠退いていった。最後に見たのは目を見開く黒髪の男――


…犬のコスプレ中?


――の獣耳だった。




ネタに詰まると新規に手を出すと言う悪癖を最近自覚…でも思い浮かんだ新作を書かないと連載中のモノが更に遅筆になるみたいなので取り敢えずあげていきます。誠にすいません。

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