六節ノイチ
六節にとつにゅー!
優香目線です。
暗い……
何も見え無い、
ううん、みようとしてい無い。
ここはどこだろう?
ーーほんとはわかってるくせにーー
私は誰だろう?
ーー結局嫌な事から眼を背けてるだけじゃ無いーー
嫌だ……!
怖いよ……助けて!
ーーわかってるんでしよ?自分に愛される価値なんか無いってーー
いや……助けてよ……
神父様……怖いよぉ……
ーー違うでしょ?貴女が本当に怖いのは自分自身なんでしょ?ーー
ママぁ……私をおいていか無いでよ、私の事、嫌いに成っちゃったの?
ーーそうよ、貴女は誰からも愛されてい無い、誰からも必要とされてい無いーー
出して……出してよ、ママ……
神父様……どこに居るの?
ーー自分自身の事すらまともに好きに成った事ないのに……誰が貴女を助けてくれると言うの?ーー
パパッ!パパッぁ!
嫌だよぉ!ここから、ここから出してよ!
私をおいていか無いで!私の事……嫌いになら無いでよ!
草月みたいに……私を、私をいじめ無いでよ……
ーー結局自分の事が大事なだけじゃないの、貴女に価値なんか無いは、愛される必要もーー
なんで!
なんでパパは私をおいて行くの!
辞めてよ!ママを連れていか無いでよ!
私はここに居るよ!私を探さ無いでよ!ここに居るモン!パパは目の前に居るモン!
ーー貴女なんか居無いは、ヒトとのつながりを絶って来て、それで闇の中に埋れたつもり?ーー
嫌だよ!もうこんな暗い所は嫌!
パパ!パパ!私をここから出して!ここから助けて!早く私を見つけてよ!
イズル……私を、私を……助けてよ……!
ーー結局はそうやって光に息継ぎを求めるんじゃ無い、そんな脆弱な心……それが、私自身、貴女自身ーー
その瞬間、
私の心に、光が溢れた。
☆
太陽光が夜を引き裂く様に、
ソレの始まりは訪れた。
私の弟草月が能力、『聖櫃』を発動させたらしい、
光の奔流が私を包んで居た暗がりを溶かす様に『破』がした。
私の心の夜が開けた。
「ねぇちゃん!」
遠い光の岸の向こうで草月は私に手を延ばして居た、
まるで掴まれと言う様に、
今まで私が草月に求め続け、
そして草月が私に求め、私が拒絶し続けて居たその手……
今更、つかむ事なんか、できるはずがなかった、
私は、その手をとる資格なんか無いから、草月に救われるなんで、あり得てはいけ無いから。
「「手を……!諦めるなよ!」」
ーー⁈
誰?
「“君には生きる資格が……愛される義務が在る、ここは、君が生きる為の世界なんだから”」
わかった……よ、
でも、でも……!
「ねぇちゃん!」
ダメだよ!
怖いんだよ!私は……弱虫だから、
ヒトと、ヒトとの間に在る、見えない闇そのもの、
それが、その暗がりが怖いんだよ。
それで、草月や、イズルの光に頼って、
また……みんなを不幸にするのが……嫌なの、そうやって、取り残されて、自分だけが闇に孤立するのが、嫌なの。
「“じゃあ、それこそ、君の弟の手を取らなきゃ、僕は絶対に君を一人になんかさせ無いか”」
でも、でも……!
貴方に会う事もなければ、私はヒトの光なんか知る事もなかったのに……!
なんで!
「“君はもう、知って居たはずだろ、僕と出会う、ずっと前から、それにもしも今度君が闇に捉えられて、草月くんが助けられないなら、僕は、絶対に君を助けにいくから……、安心して……”」
その後の言葉は聞こえなかった、
ううん、聞かなかった。
もしも聞いてしまったら、私はきっと、この闇の中から出られなかったと思うから……
ありがとう、イズル……
絶対、絶対……約束だからね……
☆
「ハァ……ハァ…… ねぇちゃん、大丈夫か……?」
私は必死そうな草月の声で目を覚ました、
今までの事、分かる、何一つこぼす事なく……
私を助けてくれたヒトがだれなのかも……
私に、心地の良い夢を見させて、私を闇の中に引きずり込もうとしたヒトも……
全部、わかった。
「そう…げつ……」
私はあまり顔の似ない弟の顔を仰ぎ見た、
私はどうやら草月に抱きかかえられて居る様で、
草月の心配そうな瞳が覗き込む様に見下ろして居た。
「なに?」
辞めて……
私に、優しくし無いでよ……
「…………ありがとう」
私はその日、
およそ二年ぶりにまったく意識せずに微笑んで居た。
☆
許さない……
あのヒトは絶対に……
あのヒトがなにを企んで居るかは知ら無いけれど、
その企みの中に、多くのヒトが含まれて居るのは確か。
イズルも、草月も、私も、父親や英雄達さえも……。
大人の下らない遊戯に大人を巻き込むのはどうでも良い、同世代でじゃれあっていて私は文句は言わない……
でも、私たちを、そんな下らない、薄汚い計画の歯車にするのは許さない……
「優香さん……」
だから、私は誰も信用し無い、
英雄も、弟も、……イズルのコトも。
だから……
「ゴメンなさいね 桐野さん……急に呼び出してしまって」
私も、ヒトの心を、利用します……ゴメンなさい、神父様……私はこれから罪深い行いをしてしまいます。
「あ、いいえ……」
かぶりをふる桐野さん、
頭を降るたびに一つに纏められた髪が振り回されて居た。
「貴女は、本当に生きて居ますか?」
「……え?」
私の唐突の質問にわけがわから無いといった顔をする桐野さん、
良い兆候だ。
「いいえ、違いますね……血が流れて居るだけなんですよ、結局息をしているだけなんですよ」
「え?ぇ?」
「大丈夫デスよ、生きられますよ、ヒトは生きて、力を、得るのですから、神と、一つに、融合の、と、き、を、」
汝の敵を愛せ、
汝を責める者の為に祈れ。