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四節ノニ

ごめんなさい、また謎人物目線です!

因みに四節はこれで終了です、次話は草月くん目線になります


「お父さん!生まれたよ、赤ちゃん!お父さんの孫だよ!」


遠い過去の暗闇から今はもう会う事の無い娘の声が聞こえて居た。


あの子は幸せだったろうか、

最初に真に愛する人との間には子は生まれず。


二度目は長く続く事は無いであろうと知りながら、

相手の心は自分に無い事を知りながら。


自ら罪を犯し、

神へと背いた。


そしてその末、

今、私の愛する孫が生まれた。


あの子は、今幸せなのだろうか、

愛する者と引き離され、望まぬ形で死の訪れた絆……


私はしわがれた手で、私と同じように色褪せた写真を撫ぜた、

写真の向こうでは変わらず一人の少女が微笑んで居た。


「主よ……これも報いなのでしょうか……?」


黒革を握り締める、

食い込む爪は茶色だ、

流れる血は心の涙か。


私は席を立った、

どうせこの部屋には私しか居無い、

カーテンを開くと其処は既に日の光が無く、

暗い海の中でちらほらと光が揺れて居た。


町を見下ろす形で建っているこの建物は皆の心の拠り所だ、

あの子もそうだ、私の娘も。


寝台に眠るのは骸の様な生者、

息をすれども会話をせず、

胸は上下せど普遍的だ。


不毛、非生産的な生ける屍、

眠るこの子は旧約聖書のアダムとイヴの様に着物を身につけず、

ただ生きている証に胸を動かし、

脈は淡々と血を心臓から全身に送り届けている。


この子は神の子羊、

まさにアブラハムの子イサクの如くに、己の身を持って真に愛おしい者、神への忠義を証明した。


何故眠るのか……

何故目を覚まさぬのか、

君は私の友では無いか。


しかし、私はこの子を憎んでいる、

私の心は弱く、脆い。


今にも無防備なこの子の首に手をかけ、

息の根を止めたいと願っている。


それは許されぬ行為、

シナイの地にてかのモーセが神より律法を授けられた。


その戒律には殺人を禁じるとある、

私は牧者にして羊飼いなのだ、

罪を犯せば悔い改め、

一人のために全員で喜ぶ。


あぁ、我が娘は災いだ、

何故あの様な男に恋したのか。


何故あの男は我が娘を顧みなかったのか、

何故あの男は我が娘を裏切ったのか、

何故私は我が娘を、我が孫を愛してやれなかっなのか。


あぁ、我が主、我が神、

どうか我が願いを聞き入れ給え。



月光の正、

天使の名、

黙示の時、

降臨の儀、


我らの儀式に生贄は不可欠だ、

肥えた仔羊を捧げねば。


彼らは皆神に教えられるだろう。







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