1‥事件
この話は全8話完結予定です。 この話は暴力的な表現を含むためご注意ください。
2007年…
月夜の晩…
夜空に浮かぶ満月は深夜の街並みを眺めていた…。
ビルの屋上に一人佇男は
夜空を見上げるとゆっくりと目蓋を閉じた。
そして全てを終わらせると心に誓った…。
2002年
深い闇の中…
誰かの足音が聞こえる…
その足音は徐々に近づいてくる…
やがて足音が消えた。
それと同時に何かをスライドさせたような金属音が辺りに響いた…。
鏡は悪夢から目が覚めた。シャワーを浴びて汗を流すそしてジャケットを羽織ると深夜の街へと消えた‥。
午前二時…深夜にもかかわらず街は若者達や終電を逃した仕事帰りのサラリーマン達で賑わっていた。
鏡はその街中で人込みを避け、人通りの少ない道を歩いていた。
ケラケラ笑いながら歩いている若い男の肩にぶつかり鏡は因縁を付けられた。
『てめぇどこに目付けて歩いてんだ!!あぁ!?』
『すまなかった。』
鏡は淡々とした口調でそう答えた。
『てめぇ舐めてんのか!?こらぁ!!』
鏡は若者達を順番に見渡した。
金髪、スキンヘッド、眉無し、その時眉なしが襟を掴みかかってきた。
『てめぇ!!聞いてんのか!?』
『手を離せ』
鏡は眉無しを睨み付けた。『んだこらぁ!!上等だ!!てめぇ!!』
鏡はその瞬間凄まじい速さで眉無しの手を捻り上げ足を払い地面に転げ落ちた眉無しの鳩尾に拳を叩きつけた。
眉無しはうめき声をあげ蹲っている。
金髪とスキンヘッドは一瞬呆気にとられていたがすぐに襲い掛かってきた。
『てめぇ!マジでぶっ殺すぞ!!』
鏡は襲い掛かってきた金髪の顔面を殴り付け更に首筋に蹴を入れた。
地面に転がった金髪を無視してスキンヘッドに近づいた。
『あ‥あぁ‥』
スキンヘッドは地面に転がった仲間を置き去りにして走り去っていった。
鏡は乱れた髪を掻き上げて何事も無かったかのように再び歩き始めた。
鏡は以前乱闘騒ぎを起こし留置場に入れられた事があった。
その乱闘騒ぎを見ていた若者達からの証言で正当防衛であることが証明され直ぐに釈放された。
その乱闘騒ぎの目撃者の会社員は会社帰りにその現場を偶然目撃した。
会社員はとある公園を通りかかった時一人の若者が15人位の男達に囲まれているのが見えた。
会社員は直ぐに警察に通報しようとしたがその時会社員は自分の目を疑った…。
絶体絶命と思われた囲まれている若者が突然近くの男に殴りかかったのだ。
囲んでいる男達全員が一瞬怯んだ。
そして乱闘が静まった時そこには15人もの男達が皆地面に転がり蹲っている異様な光景が広がっていた。
その直後警察が到着し男達は全員連行された。
紫織は突然の天候の変化に困り果てていた。
仕方なくタクシーを拾い家へと向かった。
紫織は自宅に着くと鍵が開いている事に気が付いた。そして紫織は笑みを浮かべ家の中へ入っていった。
中は真っ暗で何も見えない明かりを付けたがそこには恋人はいなかった。
紫織はすぐに恋人の携帯に電話を掛けた。
『潤一??今日私の家に来たでしょ?鍵掛け忘れてるわよ』
『何言ってるんだ?俺は行ってないぞ。』
『えっ?…』
『うっかり鍵を掛け忘れたんじゃないのか??』
『そんなはず無いんだけど何か気味悪いわ。潤一‥直ぐに来て?』
『分かったよ、30分位で着くから待ってろよ』
『気を付けて来てね』
『ああ、また後でな』
紫織は携帯を切り玄関へと歩きだした。
鍵を締めチェーンを掛けた
そして紫織は居間に戻り戸締まりも確認した。
紫織は落ち着かずとりあえずソファに座った。
喉が渇き冷蔵庫に近づいた時どこからか音楽が聞こえてきた。
その音は自分の部屋の方から聞こえてくる。
紫織は恐る恐る自分の部屋へと近づいて行った。
部屋の前で立ち止まった‥部屋の中からクラシックの曲が聞こえてきた。
紫織はドアを開けた。
部屋は真っ暗で闇の中からクラシックの幻想的な曲が聞こえる。
紫織はすぐに明かりを付け曲を停止した。
恐くなり潤一の携帯に掛けたが運転中の為繋がらなかった。
そして暫らくするとチャイムが鳴った。
紫織は急いで玄関に向かいドアを開けたが外には潤一どころか誰もいなかった。
周りを見回しても誰もいる気配は無い。
紫織は家の中に戻り鍵を掛けたその時、背中に物凄い衝撃を受け紫織は意識を失った。
鏡はソファに座りテレビを見ていた時携帯が鳴った。
着信は紫織からだった。
『潤一??今日私の家に来たでしょ?鍵掛け忘れてるわよ』
『何言ってるんだ?俺は行ってないぞ。』
『えっ?…』
『うっかり鍵を掛け忘れたんじゃないのか??』
『そんなはず無いんだけど何か気味悪いわ。潤一‥直ぐに来て?』
『分かったよ、30分位で着くから待ってろよ』
『気を付けて来てね』
『ああ、また後でな』
潤一はコーヒーを一杯飲むとジャケットを羽織り外へ出た。
外は猛吹雪で30分で紫織の家に着けるかどうか怪しいところだ。
潤一はギャランに乗り込みエンジンを掛け紫織の家へと向かった。
男はいつも紫織の事をずっと遠くから見ていた。
鍵を開け紫織の家に侵入する…家の中で息を潜め紫織が帰ってくるのを待つ。
玄関が開く音がして紫織が帰ってきたと分かると男は紫織の部屋へと移動した。
そこで男は部屋のコンポで曲を流しその場を離れる。
紫織は自分の部屋に行き曲を停止させた。
男は外に出てインターフォンを鳴らした後、玄関の近くにある脱衣所に隠れた。
紫織は勢い良く玄関の外に飛び出して行ったが直ぐに戻ってきた。
そして居間に戻ろうとしたところをスタンガンで気絶させた。
男は気絶した紫織を居間の椅子に縛り付けると電気を消して部屋を真っ暗にし自らもソファに座り紫織の意識が戻るのを待った。
5分位経った時紫織は意識を取り戻した。
『何…これ…誰かいるの…?乱暴はしないで…』
『恐がらないで手荒な事はしないから…』
『何でもするから乱暴はしないで…お願い…』
『……』
男は闇の中でにやりと笑った。
『じゃあ服を脱ごうか』
『それだけは嫌…』
男はナイフを取り出し
紫織の首元に当て囁いた。
『さっさと脱いだ方がいい…可愛い顔に傷が付いてもいいのか?』
そう言うと紫織は黙って脱ぎ始めた。
その時携帯が鳴った…
潤一は遅れる事を伝えるため紫織の携帯に掛けたが繋がらなかった。
潤一はこの時紫織の身に起きている事を知る良もなかった…。
1時間半かかりようやく
紫織の家に着いた。
潤一は紫織の携帯に掛けたが一向に繋がらない。
インターフォンを鳴らしても反応はなかった。
玄関のドアノブに手を掛けると鍵は開いていた。
潤一は不審に思い家の中へと入って行ったが家の中は真っ暗で何も見えない。
潤一は電気を付けた…
そこには信じられない光景が広がっていた…
紫織は裸でソファに横たわっている…反対側にある椅子には目を背けたくなるような見知らずの男の死体がある…。
男の性器は切り取られ全身には無数の切り傷や刺し傷があり心臓にも深々とナイフが突き刺さっている。
その上顔面の皮膚の皮が削ぎ取られていた。
『何だこれは…まともな人間のやる事じゃない…』
潤一はあまりの酷さに目を背けた。
紫織は見たところ怪我をしてるわけでも無かったので一安心だが、一体紫織の身に何が起こったのか。
潤一は紫織をベットに寝かせた後警察に通報した。
つづく…