聡美ちゃん
従兄弟の聡美は、少し天然で。
近所に住む彼は、ちょくちょく遊びに来る。
決まり文句は、
「広君、アメちょーだい」
だ。
仕方ないから、いつも何かしら用意してやってるが、今日に限って アメがない。
なので、からかってやる。
「アメはないが、チョコはあるぞ」
しばらく考えてから聡美は答える。
「…いい。チョコでも。しょーがないから、ゆるす!」
偉そうに威張ってやがる。
なので、今日は少し懲らしめてやろう。
透明セロファンに包まれた、スクエアな一口チョコ。
「ねぇ、コレ毒入り?」
キャンディーをやると、決まって聞くセリフ。
「ああ、毒入りだ」
これも、いつもと同じ。
けれども、今日はいつもと違う台詞を吐いてみよう。
「聡美、今日は俺にも〈毒〉を分けておくれ」
両端ひねったチョコを、俺が開けて自分の口に放り込む。
ポカンとあっけにとられた聡美を促す。
「そら、聡美、チョコはこの中だ。一緒に死のう」
ようやっと理解した聡美が俺の口に吸いつく。
二人の口の熱で、チョコはものの見事に、消えて無くなった。
「……ぷは」
聡美の頬が真っ赤だ。
恐らく、人生初の、ディープ・キス。
聡美は何と答えるか。
「広君、もっとちょーだい、毒」
ことのほか、気に入った様子に俺も満足した。
〈オシマイ〉