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和茶と書いて「わちゃ」と読む名の少女の苦悩と歓喜とは?

作者: 健野屋文乃
掲載日:2026/10/22

和茶と書いて「わちゃ」と読む少女。

幼い少女なりに、どー考えてもキラキラネーム感を感じていた。


人が「わちゃ」と呼んだ時、かすかに失笑もしくは苦笑が漏れるのを、幼いながら感じていた。


親があれだから・・みたいな雰囲気を。

「あれってなんやねん!」和茶は心の底で思った。

ツッコんでみたものの、和茶は「あれ」が何かを知っていた。


幼いながら、明確に理解していた。

和茶の両親は、どーーーーー見ても浮いている。

いつも、わちゃわちゃしてる。

お前らそれでも大人か!って思う位。

それに気づいた時、大変な家庭に生まれたものだ!と嘆いたものだ。


家族写真を1枚1枚見なおしても、全部、お前らいつもパーティーしてるの?

ってくらい、わちゃわちゃ感が溢れていた。


それを和茶は、恥ずかしい。と思った。

お前ら大人だろ!

ちゃんとしろよ!

人生をふざけんな!


結果、和茶は自身のわちゃわちゃ感の羞恥心を消すように1つ1つ消して心の底に沈めていった。それが自分の運命だと思い込んで。


そして和茶は、幼稚園より大人にならなくてはいけない小学校に入る前に、物静かな自分を完成させた。

「これで良いんだ。あたしは1つのミッションを成功させたのだ」


しかし事件は、小学校に入った時に起こった。

入学式を終えて教室に入って、教師が児童の名前を呼び出した時、

「・・・わちゃ」

と言う音を耳にした。

背後で

「はい」

と声がした。

和茶は素早く振り向いた。

「同じ名前?」

その声の主を見ると、和茶と同じ苦悩を感じていたであろう雰囲気があった。

さらに教室の後ろでは、和茶の両親と同じわちゃな両親がいた。

「これは!」


和茶はどうするべきか幾つかの案を思考回路に巡らせたが、結論は出なかった。

入学式の日は、そのまま家に帰った。

そして次の日の登校中、

「わちゃ」

と声を掛けられた。

もうひとりの【和茶】だと、すぐ分かった。

和茶は振り返り、

「わちゃ」

と声かけた。

二人は見つめあった。

多分、同じ境遇の同志を見つけたのだ。


「「わちゃ」」

二人は見つめあうと、何も話さなくても理解しあえた。

そして、二人は心の底に沈めた、わちゃわちゃ感を解放した。

ただの解放でない、物静かな境遇を超えた後の、解放だ。


୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧


「おい!和茶和茶!わちゃわちゃうるさいぞ!」

担任の声が教室に響いた。


わちゃわちゃが楽しい。

きっと、これがあたしの人生の始まりなのだ。


完

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