和茶と書いて「わちゃ」と読む名の少女の苦悩と歓喜とは?
和茶と書いて「わちゃ」と読む少女。
幼い少女なりに、どー考えてもキラキラネーム感を感じていた。
人が「わちゃ」と呼んだ時、かすかに失笑もしくは苦笑が漏れるのを、幼いながら感じていた。
親があれだから・・みたいな雰囲気を。
「あれってなんやねん!」和茶は心の底で思った。
ツッコんでみたものの、和茶は「あれ」が何かを知っていた。
幼いながら、明確に理解していた。
和茶の両親は、どーーーーー見ても浮いている。
いつも、わちゃわちゃしてる。
お前らそれでも大人か!って思う位。
それに気づいた時、大変な家庭に生まれたものだ!と嘆いたものだ。
家族写真を1枚1枚見なおしても、全部、お前らいつもパーティーしてるの?
ってくらい、わちゃわちゃ感が溢れていた。
それを和茶は、恥ずかしい。と思った。
お前ら大人だろ!
ちゃんとしろよ!
人生をふざけんな!
結果、和茶は自身のわちゃわちゃ感の羞恥心を消すように1つ1つ消して心の底に沈めていった。それが自分の運命だと思い込んで。
そして和茶は、幼稚園より大人にならなくてはいけない小学校に入る前に、物静かな自分を完成させた。
「これで良いんだ。あたしは1つのミッションを成功させたのだ」
しかし事件は、小学校に入った時に起こった。
入学式を終えて教室に入って、教師が児童の名前を呼び出した時、
「・・・わちゃ」
と言う音を耳にした。
背後で
「はい」
と声がした。
和茶は素早く振り向いた。
「同じ名前?」
その声の主を見ると、和茶と同じ苦悩を感じていたであろう雰囲気があった。
さらに教室の後ろでは、和茶の両親と同じわちゃな両親がいた。
「これは!」
和茶はどうするべきか幾つかの案を思考回路に巡らせたが、結論は出なかった。
入学式の日は、そのまま家に帰った。
そして次の日の登校中、
「わちゃ」
と声を掛けられた。
もうひとりの【和茶】だと、すぐ分かった。
和茶は振り返り、
「わちゃ」
と声かけた。
二人は見つめあった。
多分、同じ境遇の同志を見つけたのだ。
「「わちゃ」」
二人は見つめあうと、何も話さなくても理解しあえた。
そして、二人は心の底に沈めた、わちゃわちゃ感を解放した。
ただの解放でない、物静かな境遇を超えた後の、解放だ。
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「おい!和茶和茶!わちゃわちゃうるさいぞ!」
担任の声が教室に響いた。
わちゃわちゃが楽しい。
きっと、これがあたしの人生の始まりなのだ。
完




