模擬戦
なんと連日投稿。
読み返したら文章変なとこあったので早速修正しました。気を付けよう!
「時間です。名前を呼ばれたら前へ出てきてください。」
案内係らしき人から声がかけられる。
剣や槍、斧だけでなく、盾や籠手のようなものまで様々な武具が置いてあった。
全員選んだものを持ち、先ほどと同じ場所に集まる。
ほどなくして名前が呼ばれ始め、一対一の模擬戦が訓練場の中で行われ始めた。
「はぁ…。」
ため息が出る。自分でも緊張していることを実感する。
模擬戦は複数同時に行われる。全員に見られ続けるよりはマシなのだろうが、それでもどうしても緊張はする。しかし、手足が震えるということはなさそうだ。動くこと自体は問題ない。
そうこうしていると、自分の名前が呼ばれた。他に呼ばれた人たちとともに、前へ出る。
指定の場所に案内されると、俺の相手の人物もやってきた。
(マジかよ…。)
その人物は、暗みを帯びた赤い髪と明るいオレンジ色の瞳をした筋肉質な大柄の男だった。
手には訓練用の大剣を肩に掛けて持ち、堂々とした佇まいでこちらを見てくる。
先ほど、近くでガリウスに質問をしていた学生だ。
「よろしく頼む。」
「こちらこそ…よろしく。」
低い声で淡々と挨拶をされたので、言葉に詰まりながら返す。
歴戦の猛者のようなオーラがある。そしてなによりその体格。俺も成長して背も伸びたし、筋肉だってそれなりにつき始めている。だというのに俺よりも背は大きく、筋肉も服の上からでもわかるほどにがっしりとしている。
正直少し怖い。
「まもなく開始します。各自武器を構えて準備してください。」
容赦のない開始準備の声が聞こえる。
その声を聞いて、目の前の男はゆっくりと肩に掛けていた大剣を構えた。
俺が選んだのはバックラーと槍だ。
左の腕に長さを調整した持ち手を通し、両手で槍を持つ。
深呼吸をして姿勢を低めに構えると、その男が話しかけてくる。
「珍しい。普通の盾じゃなくてバックラーか。」
「…片手で扱えるほど筋肉も技量もないからな。あんたならでかい盾持っても、その大剣を振り回せそうだけど。」
「どうだろうか、持つだけなら行けるかもな。」
俺の返答に少し驚いた様子を見せる。
そして軽く笑った後、大剣を目の前ではなく自身の腰横に構え直した。
「俺はシュウ。お前は?」
「ヨヅキだ。」
「そうか、遠慮はしないからな。ヨヅキ。」
「こっちのセリフだ。」
深く息を吐き、槍を握り直す。
模擬戦だというのに、開始の合図まで異様に長く感じる。
集中して、目の前の相手を見る。
「――始め!」
ようやく聞こえた合図で、俺はシュウに向かって飛び出す。
槍の突きは線ではなく点の攻撃、腰横に剣を構えるのなら防ぐのは難しい。リーチの長い槍なら、反撃されるより先に攻撃が届く。避けようとしても対応できる。
狙いは胴体。シュウの体が動いたが、このまま突く方が早い。
(入る――)
そう思ったとき、鈍い音が響く。
見れば大剣の横っ腹が、槍の矛先を受け止めていた。
「嘘だろ!?」
思わず零れる。突きの速さと精度には自信があった。
しかし攻撃を防がれる。身を引きながら、横にした大剣を陰にするように動かれた。
「思っていたより速いな…!」
顔に焦りが見えたが、綺麗に防がれている。
俺にはシュウを弾くほどのパワーはなく、勢いそのままに弾みで自分の体が少し浮かび上がった。
シュウは踏み込み、そのまま盾にした大剣で切り上げてくる。
慌てて身を丸く縮めこみながら、バックラーを前に出して大剣の刃にあたる部分に当てに行く。
シュウが大剣を振り抜くと、先程と同じような音が鳴り俺は横に弾き飛ばされた。
「いっ…てぇ…。」
自分から当てることでフルスイングされることは回避した。しかしそれでも左腕が痺れ、鈍い痛みが走る。
まともに振りかぶらず、無理やり当てるための切り上げ。だというのに俺が突撃したのと変わらない音が聞こえた。
(受けてたら腕ごと壊れんじゃねぇかこれ…。)
「防がれるとは思わなかった。」
「こっちもだよ…!」
慌てて立ち上がり構え直す。
シュウはすでに構え直し、こちら向かってきている。
さっきので分かった、まともには受けてはいけない。
攻撃をしてくるシュウに向かって、慌てて近づいた。
振り抜かれる前に、槍で大剣の横を叩いて勢いを止める。
「遠慮はしないって、言ったよな!」
「ここまでとは、聞いてねぇ!」
笑みを浮かべながら話すシュウに、必死で対処しながら抗議する。
――こうして、俺の初めての模擬戦が幕を開けた。




