焼け跡からの出発
「アヤメちゃん待ってるわよ!ガリウスさんにも送ってもらうんでしょ!」
「わかったよ母さん!今行く!」
あの事件から5年。俺とアヤメは15歳になった。
ガリウスさんに助けられた後、無事に父さんと母さんに会うことができた。アヤメの両親は元々遠くに行っていたこともあり、家族一緒に暮らすことができている。
用意をして、慌てて家から出ようとすると母さんに呼び止められる。
「パンあるから途中で食べなさい。忘れ物ないわよね?」
「昨日のうちに用意したから平気!」
母さんからパンを受け取ると、そのまま抱きしめられる。
「無事に帰ってくるのよ。それと、向こうでアヤメちゃんに迷惑かけるんじゃないわよ。」
「わかってるよ。そんなに心配しないでってば。」
「あれだけ言ったんだからがんばれよ。たまには顔見せに帰ってこい。」
「わかったよ、父さんも気を付けてね。」
今日は俺が魔法学校に入学する日。まだ日も登り切っていないが、今住んでいるところからは遠いため向こうの寮で暮らすことになる。
しばらく家に帰ってくることはない。もちろん、帰ろうと思えば帰れるのだが、長期間の休みでないとろくにゆっくりできないため長期の休みじゃないと顔を見せに来ることすら大変だ。
「おはよう、ヨヅキ。」
「おはようアヤメ。」
外に出ると幼馴染のアヤメが待っていた。制服を身にまとい、腰まで伸びている綺麗な白髪はそのまま下ろしている。玄関から出てきた母さんが、アヤメの手を握って言う。
「アヤメちゃん、ヨヅキをよろしくね。今日だって散々起こしたのに…。」
「おばちゃん任せて、寝坊したらちゃんとその分報告するから。」
「やめてくれ…ちゃんと起きるって…」
アヤメも同じ魔法学校に通う。俺と同じく寮で生活するようになるので、二人で一緒に向かうことになっていた。
だからと言ってそんなことまでしなくていいだろうに。流石に少し恥ずかしい。
「いいだろ母さん、もう行ってくるよ。」
「それじゃあ、行ってきます。」
二人にそう言って、俺たちはガリウスとの集合場所に出発する。
「ガリウス待たせてるし、少し急ぐぞ!」
「どっかの誰かが寝坊したからでしょ!初日から遅刻したら許さないから。」
「悪かったって!」
二人で走り出す。わざわざ魔法学校に行かなくても、近場に普通の学校だってある。それでも、俺とアヤメは魔法学校に入ることを選んだ。
あんな悲劇は二度とごめんだ。助かった後、俺とアヤメは強くそう思った。だがそれ以上に、同じ思いをする人がいないでほしいと思った。
俺たちはガリウスに助けてもらえた、あの人がいなければ、俺たちはこの歳まで生きていなかっただろう。その経験があったのも、きっかけのひとつだ。
普通の学校の方がいい、危険だから止めろと何度言われたのかわからない。二人して両親からは猛反対を受けた。
それでも俺たちは説得を続けて、ようやく納得してもらえた。
二人で走っていると、駅の前に金髪で長身の男性が見えた。ガリウスだ。向こうもこちらに気が付いたようで、手を振っている。
「予定より遅かったね。何かあった?」
「ヨヅキが寝坊しました。」
ついて早々アヤメにチクられた。それを聞いたガリウスに笑いながら拳骨を落とされ、鈍い音がする。
「いだっ!」
「ははは、まぁそんなことだろうと思ったよ。そろそろ列車が来るからそれに乗るぞ。ここから7時間くらいだ、忘れ物はないな?」
「ないです。」
「俺もない…。」
二人とも何もなかったように話を進めてるがかなり痛い。これ後で腫れるんじゃないか?
「しかしまぁ二人も今年で16か、時間が経つのは早いね。…それはそうと、ほんとに良かったのか?」
少し心配そうな顔をして俺たちを見る。
ガリウスに聞かれているのは魔法師になることだろう。アヤメと顔を見合わせて頷く。
「もうずっと前から決めたことだ。そのためにガリウスに鍛えてもらったし。」
「私も同じです。ヨヅキほど鍛えてもらってないですけど…。」
「アヤメちゃんは体力作りが必要だったしな。でも魔法はアルマからある程度教わっただろ?その若さで君ほど扱えるやつはそういないさ。」
「俺全く教わってないけど。」
「ヨヅキは魔法より運動能力あげなきゃ話にならん。レリックや俺と同じくらい戦えるようになるんだろ?前衛ならそこからだ、基礎は教えたからあとは学校で教えてもらえ。」
魔法師になることを決めてから、ガリウスに鍛えてもらっていた。魔法学校に入学すると勉強の他にも訓練があるため、二人で頼み込んだ。
最初は断られたが、そのうち根負けしたのか了承してもらえた。これは後から知ったが、俺たちの両親もガリウスたちならとお願いしたらしい。その結果、特に俺に対して遠慮がなくなったのだが。
とはいえ、ガリウスも魔法師としての仕事がある。ガリウス以外にもレリックやアルマにもたまに見てもらっていた。
「あ、もう列車来るって。これですか?」
そうこう話していると、駅から案内が聞こえる。ガリウスは時刻を確認して頷いた。
「そう、乗車券は買ってあるからあとは乗るだけ。じゃあ行こうか。」
「はーい。」
「わかりました。」
俺たちは魔法学校へ向かう列車に乗り込んだ。
ちょうど向かいから差し込む朝焼けの光が、新しい日常の始まりを告げているような気がした。
読んでくださりありがとうございます。
本編開始です。最低週一投稿を目指すぞ!
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