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日の出


 世の中には、理不尽というものがある。


 努力も、善意も、何の意味も持たない瞬間。誰かの思いつき一つで、すべてが無意味になる瞬間。

 それが、理不尽だ。


 そんな経験をすれば、誰もが思うだろう。「なぜ自分が」「どうしてこうなった」と。

 私も、そう思った。






「報告します。実験の第一段階は問題なく完了いたしました。」


 椅子に座り、部下からの報告を聞く。

 その人物は隣に立つ男からカップを受け取る。

 熱い茶を飲み、喉を潤わせてから指示を出す。


「よろしい。引き続き観測を続けなさい。魔法師が来る可能性も考慮し、いつでも撤収できるように。」


「はっ。」


 万事順調。自分の計画が順調に進んでいることを確認し、深く息を吐く。

 長かったが、今回は成功する見通しが立っている。

 今回の結果をもとに進めれば、実現が現実味を帯びてくる。大きな一歩になるだろう。

 そう考えていた時、慌てた様子で走ってくるものがいた。それに気づき声をかける。


「何事ですか?」


「ほ…報告します!戦闘魔法師の部隊が、現地への緊急対応を行うとの報告がありました!」


「ふむ…想定より早いですが、まぁ元々可能性のあったものです。問題ありません、観測を続けなさい。」


 大方、近場にいた魔法師の部隊が応援や避難民の受け入れ準備をしろと言っているのだろう。よくあることだ、放置で構わない。

 街はあの様子だ。住んでいた人間のほとんどは手遅れだろう。それに、弱い魔物ではない。並大抵の魔法師では対処に時間がかかる。

 そう考え指示を出す。しかし、報告に来た部下の一人はまだ何かを伝えようとしている。


「何かあるのですか?ただの魔法師部隊。観測が察知されることはないでしょう。魔物の波を超えるのも難しいはず。」


「救助に向かった部隊ですが、ガリウス・ロボが部隊長だと報告があり…。」


 その話を聞いて合点がいく。ガリウス・ロボと言った。その話を聞いて、座っていた人物の隣に立つ男が声を出す。


「ガリウス・ロボ…。対処いたしますか?戦闘のできるものは現場に控えています。腕もそれなりに立つ人員揃いです。」


「…直ちに撤収しなさい、痕跡を残すことも許しません。一人先行していたとしても彼らでは歯が立ちません。」


 急いで指示を出し、部下に行かせる。

 思いつく限り最大の不幸だった。まさか被っていたとは。

 深くため息をつき、椅子にもたれかかる。


「第二段階はいかがいたしましょう。このまま実行すると、ある程度巻き込む可能性がありますが…。」


 先ほど報告を上げた部下に聞かれ、少し考える。


「そちらは定刻になり次第実行します。多少巻き込んでも問題ありません、むしろ都合がいい。」

 

 向かった部隊の全てがガリウスの管轄でないにしろ、使い道は多いにある。

 犠牲も含めて使わせてもらおう。


 しばらくすると、ガリウスや他の部隊が民間人を救出したという報告も入ってくる。

 被害は甚大だが、当初の想定より救助されている。

 これもまぁ、問題はない。あまり多く救われても困るが、かといって全滅されても困る。

 被害を目にした人間の生の声というのは、影響力が大きい。


「定刻になりました、いつでも投入可能です。魔法師もある程度いますが、ガリウスの部隊ではなさそうです。」


「わかりました。見られないよう、もう少し待ちます。」


 指示を出し、タイミングを待つ。

 やるなら日が完全に沈んだ時がいい。


 しばらく待ち、日が沈む。明かりがないと目視は不可能だ。


「投入しなさい。」


 指示を出して少し待つ。大した時間ではないはずなのに、酷く待ち遠しい。

 ここまで長かった。この一歩にかなりの時間を要した。


 その人物は両手を組み、ただ祈る。 


(成功率は高いはず。頼む、上手くいってくれ…。)


 一生続くかと思われた時間のあと、遠くでついに激しい光が起こった。


「第二段階、成功です!」


 現象を観測し、報告を受ける。

 それを聞いて思わず立ち上がる。


「おめでとうございます。時間がかかりましたが、これで軌道に乗りますね。」


「ありがとう…。あぁ、長かった。これからだ、私の思い描くものは、これから始まる。」


 そう、これからなのだ。これはあくまで第一歩。

 人間念願がかなうとこんなにもうれしいものなのだろうか。

 感動と興奮で全身が震えているのを自覚する。


「よし、全員ただちに撤退するように。私は先に戻ります。記録は後で私のもとへ報告書とともに持ってくるように。」


 そう部下に伝え席を立ち、隣にいた男とともにその場を去る。

 最高の気分とはこのことだ。体を弾ませながら歩く。


「帰ったらうまいものでも食べに行こうか。もちろん私の奢りだ、いい酒も用意しよう。」


「よろこんでお供します。」


 そんな会話を最後に、明かりに照らされた明るい道を歩き街並みへ消えていく。





 世の中には、理不尽というものがある。


 努力も、善意も、何の意味も持たない瞬間。誰かの思いつき一つで、すべてが無意味になる瞬間。

 それが、理不尽だ。


 そんな経験をすれば、誰もが思うだろう。「なぜ自分が」「どうしてこうなった」と。

 私も、そう思った。


 理不尽に遭った人間は、様々な行動に出る。

 復讐する。忘れる。取り戻そうと足掻く。他にも、いろいろあるだろう。

 

 しかし、私は違う。

 私は選んだ。「理不尽を生み出し操る。」そういう道を。


 だから、戦う。

 この世界を、美しい世界にするために。



 

プロローグ終わり!読んでくださりありがとうございます!

次回から物語が進んでいくので、引き続き読んでくれたらうれしいです!!

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