表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

困惑


「…どうしよう。」


 人だかりの中心地、周りの人からたくさん声を掛けられる。

 アヤメは困っていた。




*****




 ――時間は少し遡る。


「支援魔法科の皆さんには、魔力を測定していただきます。」


 ヨヅキと別れ、案内された場所に向かった。

 程なくして移動が終わったのか、説明が始まる。

 人が多いけど、戦闘魔法科に比べると少ないように見えた。


「魔力の扱い方を知らない人もいると思いますが大丈夫です。」


 そう言って説明係の人は何かを持ってきた。

 見ると、台座の上にガラス玉のようなものが乗っている。


「これは魔力量を測る測定器です。水晶に人が触れると魔力に反応して発光します。」


 そう言って水晶に触れると、水晶が光を発した。

 

「光の強さでその人がどれくらい魔力を持っているかがわかります。結果次第で今後のコースが決まりますが、少なくても訓練するうちに増えますので気にしないでくださいね。それでは、名前を呼ばれた人から前に出てきてください。」


 そう言って何人かの名前が呼ばれ始めた。

 測定器は複数台あり、まとめて測定を行うらしい。


 呼ばれた生徒が水晶に触れると同じように発光している。

 人によって光が弱かったり強かったりといろいろ。

 中には眩しいくらい光らせている人が何人もいて、記録をしている人が感嘆の声を上げている。


「次…ハクダアヤメ、さん?」


「はい。」


 名前を呼んだ人が不思議そうにしている。

 今までに聞こえてきた名前は名字が後ろに来ているようだった。

 私たちが住んでいた所とは違うんだろうなと思いながら、返事をして前に出た。


 待っている間も視線を感じたけれど、立った時により見られているのを自覚する。

 珍しいのはわかるけれど、いい気分はしない。

 二人でいる時はまだ平気だったが、見られるのは気恥ずかしい。


「緊張しなくても大丈夫です。ゆっくり呼吸しながら手を置いてください。」


「ありがとうございます。」


 私の様子を見て、記録係の人が声を掛けてくれた。

 緊張とは違うのだけど、お礼を伝える。


 深呼吸をしてから、水晶に触れる。

 自分の魔力はどのくらいなのだろう。


「…あれ?」


 水晶は何も反応しない。

 ペチペチと水晶を叩いても、何も変化は見えない。

 近くにいた人も不思議そうにこちらを見た後、近くに来て水晶を見る。


「魔道具の故障か?いや、水晶は魔力を受け付けている…。ハクダアヤメさん、魔力の使い方は学んだことはありますか?」


「一応あります。」


「ということは魔力は使えているはず。いや、まさか…。」


 私の返答を聞いて、神妙な顔をして考え込んでいる。

 アルマさんに使い方は教わった、魔法だって使えないことはない。

 なのに何故か水晶が反応しない。

 焦燥感が溢れてくる。どうして反応しないの。


「もう一度手を置いて、魔力を込めることはできますか?イメージ的には魔力を込めるように…。」


「は、はい。」


 周囲からもざわつきが聞こえてくる。

 何かしらのトラブルがあったことを察しているのだろう。

 最悪。ただでさえ見られていたのに、注目なんて浴びたくない。


 言われた通り、水晶に手を当てて魔力を込める。

 魔力の使い方は教わった。どうやればいいのかはわかる。

 自分の魔力をそのまま水晶に込めた。


 ――その瞬間、視界が真っ白に覆われた。


「え?」


「なっ!?」


 自分以外の声が聞こえる。記録係の人の声。

 眩しい。水晶が光っている。

 慌てて手を離すと、光は収まった。


 激しい光で見えなかった視界が、少しずつ戻ってくる。

 水晶は元に戻り、そのそばで蹲っている人が見えた。

 記録係の人だ。目元を抑えている。


「だ、大丈夫ですか。」


「うっ…だ、大丈夫だ…。」


 近づいて声を掛けると、うめき声とともに返答が来る。


「素晴らしい、魔力量だ。そして扱う技能も、なるほど…。」


 何かに合点がいったように、自分のことを褒めてくれている。

 程なくして周囲が騒がしくなってきた。

 終わったのなら、早く戻らせてほしい。


「あ、あの。測定は終わりですか。戻ってもいいですか。」


「あぁ、戻って大丈夫です。本日は測定で終了ですので、このまま退席しても構いません。」


「ありがとうございます…。」


 許可がもらえたため、慌ててその場を離れる。

 早くこの場から離れたかった。さっさと戻って、ヨヅキと合流したい。

 早歩きをして反対側、戦闘魔法科が案内されていた場所へ向かう。


「君、さっきの見たよ。凄い魔力の量だね。」


「え、あぁ、ありがとうございます。」


 先に終わっていた男子生徒に話しかけられる。

 何か話したそうにしていたが、お礼だけ言って避けようとした。


「ハクダ君と言ったかね。遠くからでも眩しいくらいの光は中々見ない、少し話をしたいのだが…。」


 生徒を避けた先に、教員らしい壮年の男性がいた。

 避けた先に人がいて、咄嗟に足が止まる。


「扱い方も知っているようだ。師は誰かな?」


「アルマさんという方に。すみません予定があるのでまた後で…」


「え!アルマさんと知り合いなの!?あたしファンなの!」


 断りを入れている最中に、後ろから声を掛けられる。

 同じタイミングで終わったのか、女子生徒が後ろから近寄ってくる。


「あの、後でも。」


「美しい髪色と瞳だ。ぜひこの後一緒にお茶でも…。」


「予定が…。」


 気を取られているうちに、さっきの男子生徒が横に来て話しかけられる。

 道をふさがれる形になってしまった。

 予定があるから行かせてほしいと言おうとすると、さらに人が来て声を掛けてくる。


「どきたまえ、そこの彼女は僕が学園を案内するんだ。」


「魔法について興味はあるかね?この学園で学べる魔法について色々と説明してあげよう。」


「珍しい髪だよね、出身どこ?私そんな髪色初めて見たよ。」


「あの…。」


 やけに偉そうな話し方をする人、若く見える教員、容姿について聞いてくる別の生徒。

 タイミングを逃してしまった。

 次第に人が集まり始め、いろんなところから声を掛けられる。

 

 人に囲まれるのは苦手だ。どうしたらいいのかわからなくなる。

 測定が終わった生徒も続々とこちらの方にやってきた。

 こっちで見なかった生徒たちも奥の方に見える。

 全て無視し、押しのけながら進むのはとてもじゃないが無理。


 アヤメは完全に抜け出せなくなってしまった。

 その結果が今の人だかりだ。




*****




 眼前の景色を見て、困っていた。


「…どうしよう。」


 立ち尽くし、困り果てていた。

 どうにかして人だかりから脱出しようと考えていると、奥の方が少し騒がしくなっている。


「―――ません。通ります。」


 どうやら誰かがこちらに向かってきているらしい。

 よくこんなにたくさんの人を掻き分けてこれるものだと感心する。


(正直、誰が来ても嬉しくないけど。)


 最初に話しかけてきた人たちは、もはや私を放って言い争っている。

 誰が先に声かけたとか、有意義な時間がどうだとか。

 予定があると言ったのに、誰も聞く耳を持っていないらしい。

 感情を出さないようにしているが、眉くらいは顰めても文句は言われないだろう。

 

「はぁ。」


 思わずため息が零れる。

 どうしてこうなるのか。

 

「おい、あぶねぇな。」


 向こうの方を向いてぼーっとしていると、搔き分けてきた誰かがたどり着いたらしい。

 最初に声を掛けてきた生徒が押し出され、後ろを見て文句を言っている。


「思ったよりかかった。だがようやっと来れたな。」


 掻き分けてきたのは背の大きな赤っぽい髪の男子生徒だった。

 見たことすらない顔、戦闘魔法科の人なのかも知れない。

 今度は何の用だろう。私は用事ないのだけど。

 

「どうなってんだか…。助かったよ、シュウ。」


 大きな生徒の後ろから幼馴染の声が聞こえた。

 

「ヨヅキ?」


 確かめるように名前を呼ぶ。

 目を向けると、人だかりから弾かれるように出てくる少年がいた。

 周りにいた人までもが一斉に彼を見る。


「何やったのお前…とりあえず、行くぞ。」


「うん。」


 困惑している彼の誘いを受ける。

 嬉しくないなんていうのは訂正。

 口角が上がりそうになるのを必死に抑えながら答えた。


 幼馴染(ヨヅキ)が来てくれるのなら、とっても嬉しい。



読んでくださりありがとうございます!

感想やリアクション、評価などいただけると嬉しいです。

モチベになるのでぜひよろしくお願いいたします!!

次回は土曜に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ