学友
「そこまで!!」
槍が届く直前、合図が響いた。
慌てて止めたが間に合わず、槍はシュウの体に触れた。
シュウは大剣を俺の眼前で止めている。
「時間切れによって両者引き分けとする。すみやかに移動するように。」
近くの判定員にそう告げられ、その場を離れる。
攻撃は当たったが、引き分け。時間を全く意識していなかった。
(少しでも時間があれば…いや、早めに攻めに行くべきだった?)
「おい。」
考えながら歩いていると、後ろから声を掛けられる。
シュウだ。
険しい顔をしている。攻撃を当てたことだろうか…。
「あ…。申し訳ない、脇腹平気か?」
「ん?あぁ、全然平気。そんなことより最後のあれ、狙ってたか?」
文句を言われると思ったが、そんなことは無さそうだ。
最後のあれというのは、弾かれるのを利用したことだろう。
「イチかバチかだけど、一応。ただ上手くいっても、時間切れで結局引き分けじゃなぁ…。」
「何言ってんだよ、あれは判定がおかしい。完全に虚を突かれた、普通に俺の負けだろあんなん。」
シュウはただ、結果について愚痴を零す。
自分が勝ちということではなく、負けでないことに不満を持っているらしい。
その反応は少し意外だった。
シュウは、勝ちにこだわるタイプだと勝手に思っていた。
それに驚いている俺に気づいたのかはわからない。
シュウは笑いながら手を差し出してくる。
「やられたよ、やるなお前。あそこまで速いとは思わなかった。」
「そっちの方こそ。技量もそうだが、なんだよあのパワー。まるで勝てる気がしない。」
出された手を握る。
褒められて嬉しかった。
俺も返すようにシュウの実力を称賛した。
「改めて自己紹介させてくれ、オレはシュウ・ブルベルト。歳は16だ、よろしく。」
「オウガミ ヨヅキだ。15歳、こちらこそよろしく。」
16歳か、もしかしたら一個上なのかもしれない。
そう考えていると、シュウが不思議そうな顔をしている。
「どうかしたか?」
「オレはさっき聞いたヨヅキってのが名前だと思ってたんだが、そっちは家名か?」
なるほど、合点がいった。
「いや、ヨヅキが名前であってる。俺の故郷だと名前を後ろに来るんだ。こっち風にするなら、ヨヅキ・オウガミになるか?」
「名前が後ろか、なるほどね。見ない髪と目の色だ。他人の事言えねぇが、遠くから来たんだな。」
「まぁそうだ。」
「んで、ヨヅキ。お前この後暇か?今日は模擬戦やって終わりだし、寮で飯食うなら一緒に食おうぜ。」
「あー…。」
シュウに誘われて、少し考える。
アヤメと別れる前に、約束をしたばかりだ。
「都合が悪かったか?」
「いや、支援魔法科のやつとも約束してて。」
「もう先約があったか、それならしゃーない…。」
シュウは残念そうな顔をする。
さっきから思っていたが、こいつめちゃくちゃ顔に出るな。
「ただ、そっちも寮で食べるって話だから、相談して平気だったらでもいいか?」
「お、いいのか?じゃあ平気そうなら一緒させてもらうわ。それと…。」
「あ、待ってくれ。」
こっちが案を出すと笑顔で話を続けようとしたが、それを止めた。
武具を片づけているシュウが、なんだと言う表情でこちらを見てくる。
「腕がまだ痛いから、念のため先に診てもらいたい。」
「それはすまん。」
左手をさすりながら訴えると、謝られた。
近くにいた職員に伝え、俺たちは訓練場を後にした。
「…なんだあれ。」
「すげぇ人だかりだな。」
医務室で腕を診てもらった。
訓練場にいたときは特に何もなかったが、気づけば赤く腫れていた。
事前の説明では、武器で殴られても怪我はしないと言われていた。
ただ、最後に受けたのはシュウの全力の蹴り。
そう、武器ではなく肉体の攻撃。
バックラーで防ぎきれていなかった。
そりゃ痛いわけだ。シュウには後でご飯を奢ってもらう約束をした。
魔法で治療してもらい、俺たちは支援魔法科の方へ向かった。
かなり時間も経っていたし、アヤメの方も試験が終わっているだろうと踏んだからだ。
「――しい。」
「まさに――」
向かった先で見たのは、一か所に集まる人だった。
まだ遠目で見た程度だが、それはもうすごい人数がそこに集まっている。
何かを興奮気味に話しているのが聞こえてくる。
「あれ全部支援魔法科か?」
「あー、いや。訓練場にいたやつもいるぞ、というか教員も交じってるな。」
俺の質問に対し、シュウが教えてくれる。
何が起きてるんだ一体。
「どうなってるんだあれ、巻き込まれてなけりゃいいけど。」
「さっき言ってた約束の相手か。もうちょい寄れば見えるかもしれん。」
話しながら人ごみに向かって歩く。
確認しようとしたが、教員も含め背の高い人がいて向こう側が見えない。
アヤメがいるかどうかの確認すらできなかった。
「全く見えない。」
「オレならワンチャン探せるかもしれん。特徴は?」
シュウが聞いてきた。
そうじゃん、シュウなら背が高いから俺よりも前の方が見えるはずだ。
アヤメと同じ特徴の人間は他にはそういないだろう。
「白髪で、薄い紫っぽい目の女子なんだが…。」
「こりゃまた随分と目立ちそうな見た目だ。見つけるのも簡単そうだ。」
そう言ってシュウが前の様子を見てくれる。
すると探していたシュウが、ピタリと動きを止めた。
「なぁ、白髪と紫っぽい目の女の子で合ってるよな?」
「合ってる。見つけた?じゃあ頑張って行くか。」
この人ごみをかき分けてアヤメのところまで行くのは大変そうだ。
ただ、すぐに見つかったようなので全てかき分けて行く必要はないだろう。
「見つけはしたんだが…。」
「ん?」
シュウが何か言い淀んでいる。
奥の方にいるのだろうか。
「この人だかり、その女の子が原因っぽいぞ。」
「…は?」
予想してなかった答えに、俺は間抜けた声で返事をした。
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