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決着は如何に


 距離を保ちつつ、両手で槍を振るう。

 自分の武器がリーチの長い槍で良かったと、心底思う。


「そらっ!」


「くっそ…!」


 攻撃を大剣で弾かれる。

 リーチの短い武器であれば、あの隙間を縫って攻撃しなければならなかったと思うとぞっとする。

 ちょっとした切り上げであの威力。至近距離で打ち合いなんて、とてもできない。


 シュウの攻撃は非常に強力だった。

 距離を置いて大剣を振りかぶられたら前に出て攻撃し、近づかれれば槍で叩きながら後ろに飛び退く。

 まともに受けないよう槍で攻撃を逸らし、合間に突きをして間合いを取る。

 それでも対処しきれないものは、バックラーで流すように受けていた。


「鬱陶しいな、その立ち回り…!」


「こうでもしなけりゃ飛ばされて終わりだろうが!」


 などと言ったが、空中で攻撃をされたのは、ある意味助かったのかもしれない。

 踏ん張ることができないから弾き飛ばされた。

 地上で受けようものなら、踏ん張りが利いてしまう。

 そのほうがよっぽど危険だ。


 槍先で攻撃を逸らすたびに凄い音が聞こえる。

 初手で受けていたら、武器や盾ごと壊しながら直撃したんじゃないだろうか。

 

 シュウが再び大剣を振りかぶろうとしているのが見えた。

 引き気味だった構えをすぐに整え、大きく前進して突きを放つ。


「チッ…。」


 舌打ちが聞こえる。

 シュウは攻撃を中断し、大剣を体の前に持ってきて俺の突きを振り払う。

 槍を弾き飛ばされないように力まず受けた。


 その時、全くぶれなかったシュウの体勢が、少し崩れた。


(行ける…!)


 ほんの少しだけとはいえ、体勢が崩れたのは大きな隙。

 畳みかければ攻撃が通る。

 胴体目がけて、薙ぎ払いをする。

 大剣でそのまま防がれるが、想定通りだ。

 

 鍔迫り合いを続けようものならこちらが負けるのは目に見えている。

 今までと同じように競り合わずに飛び退こうとした――。


 しかし、後ろに退くことができない。


 原因はすぐに分かった。

 訓練用の槍、柄と穂先の境目に大剣が引っかかっている。


 急いで槍をずらし、再び飛び退こうとした。


「流石に、対応できるぞ!」


「なっ!?」


 大きく前に踏み込まれ、蹴りが飛んできた。

 胴体目がけて一直線に飛んでくる。

 とっさにバックラーで腹を防いだ。

 

 左腕越しに腹部に衝撃が走る。

 体が再び宙に浮き、俺の視界は回転した。





*****





 模擬戦は楽勝だと思った。

 ルミナスに入学した他の学生に、実践経験のあるやつがいるとは思えない。


 北方でギルドに所属したのは13の時だ。

 戦えない俺は、最初は金稼ぎのために、魔法師のパーティにくっついて雑用をしていた。


 最初はあまり稼げなかったし大変だった。

 稼ぎも一緒になったパーティの人たちから、ほんの少しの分け前しかもらえなかった。


 雑用は辛かった。

 戦うわけではないから安全だと思っていたが、なんども危険な目にあった。

 それでも、家に帰って弟たちの顔を見れば、疲れなんて吹っ飛んでどんなことでも毎日仕事に取り組んだ。


 しばらくすると、魔力の使い方を教えてくれるようになった。魔力が少しずつ使えるようになると、次は武器の振り方を教えてくれた。頭が良くないオレは覚えるのが遅かったが、必死に努力した。魔法は覚えられなくとも、魔物の特徴や戦い方はなんとか覚えることができた。


 一年かけてようやく、魔法師といっても問題が無いくらい戦うことができるようになった。

 それからは雑用としてでなく、パーティの一員として魔物や人と戦った。


 俺に教えてくれた人には到底及ばない。だが模擬戦も楽に勝てると思った。


 対戦相手は、槍使いらしい。

 緊張した面持ちで構えてるが、理由はわかる。

 俺は上背があるし、大剣を持っている。威圧感は充分だろう。すぐに終わりそうだ、つまらない。


 そんなことを考えていた時、左に持っていたバックラーが珍しかったので声をかけた。

 返事には期待していなかった。


 軽く流されると思っていたが、返ってきたのは冗談めかした軽い調子の返答だ。

 驚いたのと同時に、意外な返答に思わず笑ってしまう。


 剣を構え直し、名前を聞いて開始の合図を待つ。

 ヨヅキと言ったか。あの返答ができるのだ、遠慮はいらんだろう。


 相手の構えから、槍での突撃が来ることは予想できた。だから、攻撃される前にカウンターをしてやろう――。


「――始め!」


 合図が聞こえると、ヨヅキはすさまじい速度で飛び出してきた。カウンターは間に合わない。慌てて防御する。


(速い…!)


 鈍い音と衝撃が響く。

 衝突した反動で体が浮かび上がっている。避けられないと踏み、攻撃を繰り出すがバックラーで上手くいなされる。

 防がれるとは思っていなかった。


 倒れているヨヅキに、そのまま追撃を行う。

 しかしすぐに起き上がり、勢いが乗り切る前に大剣を叩かれ防がれる。

 遠慮はしないとは言ったものの、まだ少し舐めているところはあった。


 驚きもあるが、何より面白かった。




 ――大剣を振るう。

 力でオレに勝てないことを理解しているのだろう、非常に面倒な立ち回りだ。

 予備動作を取ると、嫌なところに槍の攻撃が飛んでくる。


(いったいどの口が技量がないなんて言えんだよ…!)


 この反応速度、素人なんかじゃない。


 攻めているのはオレだが、反撃も鋭い。押しているとは到底言えない。

 攻めあぐねている間に、開始からかなり時間を使った。そろそろ時間切れになる。

 ヨヅキが手堅いのは分かった、よく俺の動きを見ている。俺も勝負に出なければならない。


 大剣を振りかぶるとすぐに突きが飛んでくる。

 速いが、防げないことはない。


 わざと大降りに振り払い、その槍を弾いてみせる。少しでも待たれれれば、突きを刺される。


 読み勝った。ブレた姿勢を直さないでいると、期待通り追撃が飛んでくる。

 手堅く攻めてくるがゆえに、予想ができた。


(隙を晒せば、反応するよな!)


 槍の薙ぎ払いが来る。鍔迫り合いは避けるだろう。なら、ヨヅキは必ず一度退く。

 狙いは穂先と柄のつなぎ目。完全に止めれなくとも、一瞬引っかかればいい。

 角度を調整すれば、退くことを前提にした攻撃なら必ず引っかかる。


 槍を防ぐと、狙い通り引っかかった。すぐに飛び退かれるが、蹴りなら届く。


「流石に、対応できるぞ!」


 オレはヨヅキの腹を全力で蹴り飛ばした。






*****






 地面に転げ落ち、視界が土と砂でいっぱいになる。

 なんとか防いだが、状況は最悪だ。怪我はしていないんだろうが、腕が痛む。力が入らない。

 それでも急いで立ち上がる。


 シュウはすでにこちらに駆けている。

 大剣で切り上げようと構えている。さっきのように、こっちが攻撃して中断させることもできないだろう。

 攻撃をしても槍を弾き飛ばされ、そのまま振り下ろしの連撃で押し切られる。


 なら、おとなしく攻撃を受け入れるのか?


 それはない。負けるとしても、できる限りのことをやってからだ。

 俺は槍を短く握りなおす。両腕では振れない。だからといって右手だけではあの剣に打ち込むことはできない。左手は最低限添え、右手も限りなく脱力て握る。


(まだ、終わってない。)


 自分自身に言い聞かせる。

 シュウに向かって飛び込み、槍を剣のように振り下ろす。シュウは表情を変えず、大剣を振り上げた。


 当然、打ち合いになれば負けるのは俺だ。だから、大剣の剣先に槍を当てに行く。

 早すぎればそのまま弾かれ、遅すぎればそのまま胴を叩かれる。

 息を止めて慎重に、武器同士が接触する瞬間を見極める。

 

 刃先が触れた。


 ――その瞬間、俺は左足で地面を蹴り、体を右にひねる。


「は!?」


 槍を飛ばそうとしていたシュウが驚愕の声を上げる。

 弾かれる槍を、必死に右手から離れないようにする。短く握り続けることは最初から諦めていた。だが、手さえ離さなければ柄の下、石突が引っかかり飛んでいくことはない。


 そのまま地面に転げないようにバランスを取り、勢いを乗せて右足を軸に回った。


 弾かれた際の遠心力を利用し、そのまま回転しながら振る。武器がリーチの長い槍で良かった。これなら大剣よりも遠くから攻撃ができる。


 シュウも切り上げた大剣をそのまま振り下ろしてくる。しかし――


(届く…!)


 俺は槍を、そのまま大きく振り抜いた――。



読んでくださりありがとうございます!

ちょっと忙しくて更新遅めになりました、ごめんなさい!!

評価やリアクション、感想などあるとモチベになります。よろしくお願いします!

次回は金曜か土曜に更新する予定、です。


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