第二話
体育の時間、今日は体力測定だ、運動はあまり得意じゃないから気乗りはしないけど……少しでもやる気を絞り出して校庭へ移動する。
開始してそうそう、よくある仲のいい人でペアを組んでね、をまさかの入学一週間目でかましてきた体育教師を横目に智久とペアを組んで準備体操をしていた。
「なぁ、学校三大美女って知ってる?」
急に智久が訳のわからないことを言い始めた。
「いや、今時そんな漫画のような謎システムが存在するのか?」
そもそも学校の七不思議でさえ今日日聞かない都市伝説なのに学校三大美女とかもはや漫画の中だけのファンタジーだろ。
「それが、なんでもここ瑞風高校の文化祭で伝統的に非公式ミスコンがあるらしくてそこの上位三位までを学校三大美女って言ってるみたいやね」
――伝統的な非公式?
「情報が多すぎて整理がつかないけど、つまりはそういう制度があるってことか」
「そうそう、そういう認識でええよ」
まぁ、思春期真っ盛りの高校生男子だ、内輪で騒いでいたのが後輩へと受け継がれて学校側としては公認はできないが黙認しているってのがオチかなぁと考えて。
「それで、急にその三大美女がどうした?」
「なんでも、去年のコンテストで優勝者が今の二年生で他の二人はもう卒業したらしくて今は実質一大美女らしいんよ…………きにならん?」
一大美女って語感はどうにかならなかったのかとも思うが確かに少し、興味は出てくる。
そんな、美女だって持ち上げられたら唯でさえ平穏な日常はやってこなさそうなのに他の二人は卒業していないときたもんだ、絶対に面倒くさいことになるのが目に見えている。
「ねぇねぇ、二人ともなんの話をしてるの?」
準備運動を終えたであろう鈴音がトトトッと近寄ってきて声をかけてきた。
「ともが、学校三大美女がなんとかって」
「あー、私も知ってるよ。確か、二年の三条先輩だっけ?」
……結構有名なのか?
いや、二人とも知り合いが多そうだからその筋からの情報かな?ほら、人の口に戸は立てられぬともいうし……違うか。
「湊人、僕らが情報通なんじゃなくて君が他を気にしすぎなんだよ。学校……というか教室でも良く話題になってるし、なんやったら一年の人がもう告白して玉砕したらしいし」
なん、だと!?
いや、確かに他の人の話なんて興味はなかったから聞き流していたけど……
俺が馬耳東風なだけだったか?
それでも、そこまで話題になっていたのなら少しくらい話が耳に入ってきていてもおかしくないんじゃ……
「まぁ?湊人は昔から恋愛関係の話って興味がなかったし、不思議じゃないけどね!」
すず、興味がないわけじゃ……
そう言いかけて、ふと思い直すと……
――湊人ー!あの子、かっこよくない!
――そうか?
――わたしはねー、〇〇ちゃんは〇〇くんのことが絶対好きだと思うんだよね!
――ふーん
「湊人?ボーっとしてるけどどうしたの?」
「いや、なんでもない」
たしかに!?
完璧なスルーをしていましたね、あれだな恋愛関係の話は体質的に聞こえないのかもしれない。うん。
いや、別に嫌いってわけじゃないし。
「それで、なんの話だっけ?恋バナ?」
「ちゃうよ、二年の三条先輩の話やで」
話しながらも続けていた準備体操を終えて本日の体育、体力測定が始まった。
正直、順番が来るまで暇なので他の生徒の体力測定を眺めながら智久と鈴音の三人でさっきの話の続きをした。
「んで、その三条先輩はどんな人なん?」
「そうやねー、容姿端麗、スポーツ万能、成績は学年一桁代、さらには人当たりもよくクラスの中心人物らしいよ?」
ファンタジーかよ、完璧超人すぎてドン引きです。
あれだな、神様の考える最強の人類って感じだな。
「そうそう!それに、結構な数の告白を受けているのに好きな人がいるからーって、誰一人オッケーをしてないらしいよ。そこまで、断ってたら嫉妬の1つもありそうだけどそんな話も聞かないし……」
「好きな人って、定番の断り文句だけど、本当にいた時に相手への嫉妬が凄まじそうだな」
憧れは憧れのままで終わらせておくのがちょうど良いってことだな。
――次!早川!
「ほら!湊人呼ばれてるよ、いってきたら?」
俺の番が来たようだ。
走るのは得意じゃないから少し憂鬱になりながら400メートルトラックへ足を進める。
後ろから大きく手を振りながら鈴音の応援する声が聞こえる。
……幼馴染も応援してくれていることだし少しは頑張りますか。
――――――――――
――あぁ窓から吹き込む風ってこんなにも素晴らしいものだったのか。
放課後になり教室で机に突っ伏しながらうなだれている。
もはや、体力は一ミリも残っていない。体を動かすのが好きとか走るのは気持ちいいとかいってる奴は絶対ドMだろ。
鈴音のやつは、今日は友達とカラオケだからって先に帰ってしまったし。
「湊人はまだ帰らへんの?」
「いや、そろそろ帰るか、本屋にも寄りたかったし」
確か、押し先生の新作が今日発売だったはず。
前巻ではいいところで終わっていたから、気になって夜しか眠れない。
「さよか、僕なんやけどまだ学校に用事があるから先帰っとってくれる?」
「りょうかい、んじゃまた明日」
「はいはい、また明日」
鞄を手に取り校舎を後にする。
帰り道、商店街の一角にたたずむ隠れた名店……だと思っている書店、文栄堂が見えてきた。
ここは、いわゆる大手書店とは違い人が多くなく、いたとしても一人か二人いるぐらい。
それに個々の店長とは感性が似通っているのか入荷する本はどれも俺の興味を引くものばかりだ。
「あった、これ買って帰るか」
目当ての本を手にとって会計を済ませる。
頭の中で小説の読み方をぐるぐると考える。
一息に読んでしまおうか?何日かに分けて呼んだほうがいいのだろうか?もう少し寝かせておいたほうがいいか?
子供が好物の食べる順番で議論するように頭の中では裁判よろしく議論を広げている。
――あの!私、一緒には。
ガヤガヤと人だかりができていた。
野次馬根性を出して見に行ってみると、大学生?らしき人が瑞風高校の制服を着た少女にナンパをしているようだ。
――ですから!……あっ!
少女と目が合った。
気づかれないようにサッと目を逸らすもスタスタとこちらへ歩みよってきて。
「ダーリン!まってたんだからね!……というわけですので、お引き取りください」
ダーリン?
頭の悪いバカップルか?
腕をつかまれて逃げようとしても逃げることができない。
そうしていると、スッと少女の顔が近づいてきて耳元でこういった。
……話を合わせてください。お礼はあとでしますから。
はぁ、厄日だ。
改めて、ナンパ男を見てみると俺に対して怒っているのかいろいろとまくし立てているが、そもそもそういった態度でナンパが成功すると思っているのだろうか?
「ごめんよ、マイハニー。そこの本屋で本を見ていたら時間を忘れてしまって」
言っている本人でさえ驚くほどの棒読みで言っていた。
もう少し演技の練習とかをしておくべきだった。
「っち!彼氏待ちかよ!そうだったらそうとちゃんと最初からそう言えよな!」
まさかの通じてしまった。
俺は実はハリウッド顔負けの俳優だったのかもしれない。
などど、あほなことを考えていると、ナンパ男は怒りながら去っていった。
「ありがとうございました。……えっと、同じ高校の方ですよね?」
「あぁはい、瑞風高校一年の早川湊人です。1年A組の」
肩までかかる黒髪に整った顔立ち、かなり美人な人だなこの人。
「あっ!自己紹介がまだでしたね。私は瑞風高校二年の三条詩織です」
……三条、整った顔立ち。
この人、今日智久が言っていた非公式ミスコン一位の三条先輩か?
ナンパが寄ってくるのも、ミスコン一位も納得の容姿だと感じた。
「すみません、今日は急ぎの要がありまして。また後日、お礼にうかがわせていただきますね」
そういって三条先輩は商店街の喧噪の中に消えていった。
確かな疲れを感じる体を動かしなが家への帰路についた。
家に着くころには残っていた体力は尽き果てて、そうそうに寝る支度を整えて自身の部屋へと入った。
とうに手に入れた小説のことなど頭の中からはとっくに消え失せていた。
ベットに入る。
夢の中で踊る羊は100を数えるころには意識は深く、深く闇の彼方まで……
一思いに気が付けば書ききっていました。
王道は刺さる人が多いからこその王道だと感じました。
なんてったって私自身が設定好きだなって思いてここまで書いてしまったのですから。
P.S.
思い付きで初めてしまったがためにプロットも設定も何もあったものじゃないので一旦そちらを詰めていきたいと思っています。




