月までのカウントダウン
「十。お待ちかねのカウントダウン開始よ」
私はパートナーの彼女と、ベッドで催眠ごっこ中だ。目を閉じて仰向けで、声に耳を澄ます。
「九。まぶたの裏に月が見える。煌々と輝いてる」
「八。何も身に着けていない、貴女の体が照らされていく」
「七。身体が軽くなる。行ける。空に浮かんで何処までも行ける」
「六。浮かび上がる。ベッドに横たわった、今の心地よさが何倍にも増加する」
「五。月から声がする。バニーガールが一人、二人、三人。もっと大勢」
「四。引き寄せられる。月の魔力が貴女を逃さない。身体が月へ近づく」
「三。空気も重力も、何にも考えなくていい。堕ちる、浮かびながら堕ちていく」
「二。全ての束縛から解放される。これから起こるのは全て、貴女が望んだこと」
「一。月が貴女を待ち構えている。大勢のバニーガールが貴女を囲む」
「零。月と貴女の距離は零になった。零、零、零……」
永遠のような零が来る。夢見心地で、意識を手放した。