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013:闇ギルド②


 ――ギイィィ……。


 古めかしくも重厚感燻らせる玄関扉を開いて内側へと足を踏み入れる。

 コツコツと一歩前に出る毎に石床を叩く音が響いていた。

 館内はひどく薄暗いが夜目の利く俺には問題ない。


 砦に西洋風の館を継ぎ足したような外観とは裏腹に、中はがらんどうで随分と広々としていた。

 左右の壁際に厳めしい容姿の羅漢像が並び立ち、この間隙に置かれた篝火台にて光を放っている炎。

 洋館の玄関エントランスホールともなれば天井にシャンデリアが吊されている物だがそういったものは無く、この代用品なのか正面奥に見える昇り階段を挟み込む格好でガーゴイルの像が設置されていた。

 なんとまあ、凝った造りだ。

 そんな中、無人の野を征くが如く進み続ける俺。

 当然だが、その暗闇に紛れ潜んでいる者共の気配などは最初から察知していた。


「キエェェ!!」


 左右から飛び掛かってきたのは黒ずくめの暗殺者達。

 手にはそれぞれ武器と呼ばわるよりは暗器とした方が性質的に近かろう刀身を黒く塗りたくった曲刀が握られていた。


 ――氣術、戦輪斬。


 暗器には暗器を。

 そう思った俺は左右の手にリング状に成形した氣の塊を出現させて素早く対空迎撃。

 黒ずくめの人型は体を左右に引き裂かれ、己が臓物と共に石床の上に墜落する。

 二つの死体を一瞥して更に一歩踏み出そうとした俺は、しかし前方から響いてきた多数の靴音に否応なく足を止められる事となる。


「ほほう、侵入者と聞いたからどんな豪傑かと思えば、元気の有り余っている子供じゃあないか」


 やって来たのは30人はくだらないであろうゴロツキどもの集団。

 集団に紛れてチラホラ暗殺を生業にしてそうなのが混じっている。

 それら非道なる団体から一歩進み出た男が俺を見てニヤリと凶暴な笑みを浮かべた。


「攫った子を返して貰いに来た」


「無抵抗の使用人を斬り殺しておいて、随分と横暴な物言いだなぁオイ」


「なんだ。この家じゃあ子供一人に対して大の大人が二人掛かり、しかも刃物を持って襲い掛かる事を無抵抗って言うのかい?」


 言いながら手合いを観察する。

 男は身長二メートルの高身長、肩幅が広く隆々とした筋肉。

 ズボンとシャツを着込み、腰に短刀を差している。

 人相は極悪人っぽい面構えをしており、俺もあれくらいの悪人ヅラに整形でもしようかなどとつい思っちゃう程だ。


「ああ、勿論だ。殺してしまえば後はどうとでも言える。世の中なんてもんは“やったもん勝ち”だからな」


「なるほどお前の理屈は分かった。ならば俺がこの場でお前達全員を一人残らずぶち殺してしまえば全ての問題が解決するワケだ」


「できるならやってみろ。身の程を知らないガキが」


「ああ、最初からそのつもりさ」


 “やってみろ”と言ってくれたんだ。その好意に甘えることにしよう。

 俺は胸の高さまで掌を持ち上げると、この上に薄っぺらい輪っかの束を出現させた。


 ――氣術、戦輪斬・極。


 ブゥゥゥン、なんて唸り声にも似た音色を聴きながら、それらを腕を振り抜く要領でばらまく。


 そこかしこで悲鳴と肉を断ちきる音があって、次の瞬間にはもう三名ほどの人間しか立っていなかった。


「……ほう」


 ごく簡単に、お手軽に地獄と化した石造りフロア。

 台詞を吐くときには偉そうに腕組みしていた男が、血溜まりに浮く恐らくは部下であったろうゴロツキの頭部を踏みつけて感心したような声を出した。


「なるほど、氣術の使い手か。ならばその強さも納得いくというものよ」


 男は腕を解くと数歩進み出た。


「俺の名はバガリ。鬼道六席が一人。小僧、貴様の名を聞いておこうか」


「俺はヘルート、ただの大悪党さ」


「そういう答えは嫌いじゃあない。だが相手が悪かったな。俺の屋敷に押し入り舎弟どもを殺しちまった以上は生きて帰してやるわけにもいかねえ。諦めろ」


 悪党なのに随分と格好良い口上垂れやがる。

 俺はつい嬉しくなってニタァ、と口端を吊り上げ嗤うのだった。



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