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『自動でん動重力機・まいまい』

作者: 一色 良薬

「これがカイヅカ重機の最新機、ですか?」

 満面の笑みで力強く頷いた貝塚社長に、タチバナ建設社長──立花マモルは戸惑いを隠せずにいた。

「ええ、そうですとも! 創業六十七年。我が社が積み重ねてきた努力の結晶を、この一台に全て注ぎました。誰よりも先にタチバナ建設さん、いや、立花社長にお見せしたいと思いまして、この場を設けさせていただきました」

 溌溂とした通りの良い声が響き渡る。漫画の効果音がつきそうなほど、勢いよく満月の頭を下げた貝塚に、立花は自分の目に映るものが幻覚なのではないかと疑いはじめた。

 のっべりとした軟体に特徴的な貝殻を背負った生物のミニチュア模型が鎮座している。

 カタツムリだ。どう見てもカタツムリだ。まごうことなきカタツムリだ。

 その横には最新動力機械の概要説明資料が置かれており、表題には『自動でん動重力機・まいまい』と商品名が堂々と印字されていた。

 冗談にしては手が込んでいる。つまり──本気のプレゼンというわけだ。

「まずお声がけ頂きありがとうございます。貝塚社長に誰よりも、と言ってもらえて光栄です。しかし我が社も商売第一。画期的で、斬新な重機だとは思いますが……使用するかと問われたら難しいですね」

「気持ちは分かりますとも。いきなりこんなものを見せられたら、とうとうボケたのかと思いますよね」

 思わず苦笑してしまう。しかし一転して真面目な顔付きをした貝塚が『まいまい』を手にして口を開いた。

「この子は小さいですがラフテレーンクレーン同様、どんな場所でも走行することが可能なのです。そして燃料は建設現場の廃材です。不必要になった材木やコンクリートの余りなどを処理します」

「それは興味深いですね」

 内心小馬鹿にしていた認識を改めるように、立花は『まいまい』をじっと見つめた。

「ただですね」

 途端貝塚が濁すような表情を浮かべた。

「作業は丁寧なのですが、稼働が遅くてですね。時速48kmしか動かないのです」

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