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31話:山頂の古びた神社へ②

 山頂へと向かうのは、俺とカエデ、他は数名の妖たち。


「カエデ。もし、あの祠が壊れたらどうなる?」


 俺の問に、カエデは難しそうな表情をする。


「そうですね……封印されている妖や魔物たちですが、昔、人間の里と妖の里を襲った強い妖も封印されています。被害は大きくなるでしょう」


 じいちゃんが言うには、僧侶に封印されたという妖のせいで、災害が起きたって言っていたから、それだけの力があるということか。


「じいちゃんが住んでいる集落でも、多くの災害があったと言っていたからな」

「ですが、あの量の魔物が溢れていたということは……」

「嫌なことをいうな。そうなる前に対処すればいいだけだ。それに、じいちゃんとばあちゃんが住むこの場所は、俺も好きだからな。必ず守ってみせる」


 俺の言葉に、一緒に来た妖も同意した。


「私たちもこの場所が気に入っている。守って見せる」

「その通りだ。この命に代えてでも絶対に守るんだ」


 カエデは頷き、瞳に力強い意志が宿る。

 みんな、この場所が好きなんだ。戦う理由なんてそれだけで十分だ。


「急ぐぞ」


 俺たちは急いで向かうのだった。

神社がある山の麓までやってきたのだが……。


「まさかまだ、これだけの魔物が……」


 カエデは目の前の光景に目を見開いて驚く。

 カエデだけじゃない。他の面々も同様に驚いている。

 一体何に驚いているのか?

 それは麓から山頂近くまで蔓延る、魔物の大群であった。


「いっそのこと山ごと吹き飛ばしたいくらいだな」

「……冗談、ですよね?」


 カエデや他の妖も、俺に顔を向けている。

 こいつら、俺が本当にやると思っているのだろうか?


「冗談だ」

「できないとは言わないのですね?」


 やろうと思えばできるが、それをしてしまうと、二人の大好きなこの場所がなくなってしまうのでやらない。


「じいちゃんとばあちゃんは山頂にある桜の木が気に入っているんだ。それに俺も、あの場所が好きになったからな。そんなことはしないさ」

「ですが、これはどうしますか? 一度引き返しますか?」


 カエデの言葉に俺は首を横に振って否定する。

 見てしまった以上、このまま放置することはできない。

 もしそれで、じいちゃんたちに被害が出たらと考えると、ここで見逃したことを後悔することになるから。


 俺の気配察知に、山頂から大きな妖力、魔力を持った妖だろうものが確認できる。

 恐らく、アレが封印されていた正体だろう。

 てか、封印解けてるし……

 俺は収納から聖剣を取り出してカエデたちに告げた。


「いや、封印が破られている以上、放置はできない。ここで確実に仕留める」

「ふ、封印が破られている、ですか?」

「申し訳ないが、事実だ」

「やはり、あの大量の魔物は……」

「封印が破られたからだろうな。んじゃあまあ、正面突破するか」


 カエデが慌てて俺の服を掴んで止めにかかった。

 振り向いてカエデに顔を向ける。


「正気ですか⁉ この量の魔物を前に、正面突破ですか⁉」

「そうだ! 考え直せ! 考えもなしに行くなど無茶だ!」


 カエデを筆頭に、俺を止めようとする。


「俺は行くと決めている。それにさ」

「なんでしょうか?」

「この程度の数の魔物でどうして引き返す必要があるんだ?」

「え? ですが明らかに強そうな鬼も……」


 カエデが言っているのは、こちらにゆっくりと歩み寄って来ている、オーガの上位種のことだろう。

 まあ、オーガよりちょっと強いくらいで問題はない。

 アレくらいなら魔王城に乗り込むときに何度も倒してきた相手だ。

 加えて今の俺は、帰還時に女神様がさらに強くしてくれたので、楽勝もいいところ。


 だから俺は、聖剣を横に一閃。

 オーガは崩れ落ち、塵となって消えた。


「「「……え?」」」


 俺以外の全員の、間の抜けた声が聞こえた。


「え、あ、え? い、今何を?」

「普通に斬っただけだ。この剣には魔を滅する力があるからな、ああやって塵になって消滅する」

「そんなことを聞いているのではなくて……」

「んじゃあ、行くぞ」

「え? ちょっ⁉」


 俺は一気に駆けだし、次々と魔物を倒して山頂へと進んでいく。


「ああ、もう! 置いて行かないでください!」


 カエデたちは遅れて俺の後を追いかけるのであった。


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