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元引きこもりの学園生活1

「えっ?」


「おい、どういう事だよ?」


「んっ?」


「……?」


 この疑問符のすべては俺に宛てられたものだと思う。

 何せ一年間ほとんど学校に来ていなかった奴が今になって学校に来たとあれば驚くのは当然だろう。そして、きっと……

 誰も俺が進級できると思ってないのだろうな……


「はー、疲れたな」


 自分の席と思われる椅子に座ると誰に話すでもなく声が出ていた。

 俺的には人生初の登校で自転車と電車を使った片道三十分の道のりは一年間引きこもりをしていた者としては過酷な道のりであった。


「このクラスとも今日でお別れか……」


「三年間ずっと同じクラスが良かったー」


「みんな明日からは別のクラスだけどまた、集まろうね」


 俺への注目が終わるといつの間にかいつもの空気になっていた。


「はい、しーずーかーにー」


 そして、担任である七瀬ななせ先生が教室に入ってきた。

 先生は数学を教えているにも関わらず、上下ジャージ姿で男勝りな印象を受けるのだが、身長が高く、髪を肩より上でそろえたショートカットは動きやすさを優先していると分かりながらも元の顔立ちやスタイルがいいのか動きやすさ云々の前に似合っている。

 そして、一年最後のホームルームが終わり、先生が最後の挨拶をするとこのクラス最初で最後のイベント、二年次のクラス発表がされた。


谷戸千尋やとちひろ、B組」




 最後に各自のクラスに行くように言われると一年間を過ごし、俺の為に勝手にお手伝いをしてもらっていたクラスメイトに別れを心の中で告げ足早に一人、二年B組の教室に向かっていく。

 そして、俺を見えていないのかのように話しかけてくる同級生はいないのだが……



「おい、ちょっとまて、谷戸!」


 俺を呼ぶ声に振り向くと、そこにはさっきまで生徒のクラスを発表していた七瀬先生が立っていた。


「……なんですか?」


「不思議だな、一年間で一番多く話した生徒はお前だというのに初対面の生徒を相手にしている気分だぞ」


「実際俺が先生と会って話すのは久々ですし、そんなものでしょ」


「……まあ、そんなことはいい、ちょっと話があるから後で職員室に来るように」


 なんだろう俺は初登校日にして職員室に呼び出されてしまった。

 七瀬先生にはお世話になったし、何かしらの声はどこかでかけられるだろうと思っていたのだがこんな形で呼び出されるとは思っていなかった。





「で、話って何ですか?」


 クラス替えの教室に行くと明日の入学式の連絡と新たな担任の自己紹介で今日の一日は終わった。

 明日からはここに通うのかと思ったら、自室のベットが恋しくなってきたが引きこもりに戻ることは出来そうにないし、あの新しい担任が引きこもりとなった俺の事情を話したところで進級させてくれるとも思えなかった。


「私はどうにもお前のことが心配なようなのだ」


「はー」


 七瀬先生には何かと心配をかけていた手前、こんな声しかでない。

 しょうがない、この一年引きこもりだった俺がこうして二年になれたのはすべてこの先生のおかげだし、この恩は忘れない。


「つまり、私はまだ君の面倒が見たいということだよ」


 この人は俺のことが好きなのか? さっきまで恩は忘れないと話していたし、ここは男の俺から告白するべきであろうか? でも、俺は恋人というより学校に慣れる為、友達を作らなきゃならないんだよな……


「面倒ですか……んー、そういう話ってここで話しても大丈夫なんですか?」


「そうだな、君の今後の話でもあるし一応場所は変えようか」

 

やっぱり、そうなのか? そうなのだろうか!




 そうして何故か俺は屋上に連れて来られていた。

 初めて来る屋上には小さなプレハブ小屋とベンチとそれの近くに変な筒のようなものが置いてあった。


「あれ、屋上って入れるんですね?」


 確か、去年、俺の知る限り入れなかったと思うのだけどな……


「ここは鍵が無ければ入らないし、原則生徒の出入りを禁止している為、普通は入れないのだよ。ラッキーだぞ、君は」


 先生はポケットからタバコを取り出し、慣れた仕草で自身の口へ運んでいくと火をつけた。ここって喫煙可なんだろうか?

 先生は屋上の入り口から、話をするためにベンチの方まで行き座った。

 そこには遠目では筒にしか見えなかった、吸い殻入れが置いてあった。

 なるほど、ここは先生方の喫煙所なのか……

 そりゃあ、生徒は入れないわな。


「あっ、君はタバコの煙が嫌いなくちか?」


「いや、別に吸ったこと無いですし、今後も吸おうとは思わないですけど、別に人が吸う分にはどうも思わないですよ」


「……確かに、君はまだ若いし、そうなのだろうな、その気持ちを大切にしておきたまえ」


 説教の真似事に満足したのか、先生は大きく息を吸うと煙を吐き出した。

 なんだろう、タバコは好きでも嫌いでもないがこの人が吸う分には好感が持てる。


「で、話って何だったんですか?」


「あー、悪い悪い、ここに来るとどうしても一服したくなってしまう」


 なんだろう先生のこの態度……

 これが今から告白をしようという人の態度なのだろうか?

 でも、大人の余裕を持っている人はこんな感じなのだろう。

 表情も先ほどから変わらず普通であるし……


「先ほども話したと思うのだがどうにも私は君のことが気になってしまうのだ……」

 やっぱりですね。そうなんですね、先生!


「……」


「それは君と私が一年間ほぼ毎日同じ時を過ごし、君のことを心配していたと言うことに理由がある」

 確かに、先ほど先生は一年間で一番話したのは俺だと話していたし、これはもしかして……


「はあ……」


「それで、私は去年一年間君の面倒を見てきて、押し付けがましいかもしれないが君が二年生になれたのも私の成果だと思っている」


 俺が二年に上がれたのもこの方のおかげだし、多大な恩は感じている。今の俺があるのもこの人のおかげである。

 だから、俺はこの人と……


「だから、私は君に……」


 つきあ……



「ある倶楽部に入って欲しいと思う」


お久しぶりです。

瑞樹一です。


遅くなって大変申し訳ないのですが、新作です。

良ければ読んでやってください。

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