8話 一緒に行こう。
あんなに暑くて私を苦しめた夏も、少し涼しくなった。
夏、暑くて家に籠もっていたせいか、体力絶賛低下中だ。暑さに負けず、毎朝鍛錬していた瑠依さんは全然そんなことはないのだが…。
まず、朝、ウォーキングを始めた。
走るなんてとんでもない。
絶対に十分持たない、自信がある。
そのことを瑠依さんに言うと笑いながらほっぺをつつかれた。
イケメンってやっぱすごい。何やっても絵になるもん。
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フィチアートが動き出したのかは分からないが、フィチアート物語の映画化が決まった。
本格的に忙しくなった私を見て、彼が本業にすれば?と声をかけてくれることが最近多い気がする。
彼とこのままゴールインする感じだし、生活するには十分すぎるくらいのお金もあるので、それもありかなと、最近思い始めた。
でも、いきなりやめます!じゃ、これまでお世話になった会社に迷惑をかけてしまうわけで…。
今のところ、辞めるなら、3月になりそうだ。
今日は二人揃って、ぶどうがりにきている。
遠くに住む両親や甥たちにお盆休み帰省できなかったから何か送りたいし、純粋に、季節を感じたいし。
ぶどうって、本当美味しいよね。
もぎって、〇〇に送ってくださいって頼んで…。今、帰りの車の中、渋滞にはまって、パクッとひと粒ずつ食べてるよ。
友人にも上げたいからたくさん車に積んであるし、ちょっとやそっと食べたっていいでしょ?
「あと、どのくらいかな?」
「さあ、わからない、音楽でも流すか?」
「そうする?」
CDケースをゴソゴソ。
夏なのに…冬歌しかない。
「冬歌でもいい?」
「ああ。」
知っている曲だったのか口ずさむ彼。
流石です。貴方、歌手になれるんじゃない?オーディション受けたら100%受かるよ。顔良し、歌うまし、そして性格良しって。花丸ばっかじゃん。
「歌、上手だね。」
「聞いてたのか?」
「勿論。」
この私が、瑠依さんの歌を聞き逃すとでも?
…。
何気ない会話してるところ、申し訳ないんだけど、…。あ〜。ごめん。私、眠くなっちゃったよ。
「運転、ガンバッテ。」
「雫?」
瑠依さん、私、3秒で寝れるんだ…。
何しろ、睡眠に飢える作家生活長いので。