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The frock shop  作者: たま
3/5

メリダの場合3

狐につままれる、というのは、こんな出来事を言うのだろうか?

それとも単にからかわれたのだろうか?

分からない。

ただ、あのワンピースを着た時の高揚感は忘れられない。

あんなに気持ちが高ぶったのは、初めてジェームスとキスをしたとき以来だろうか?


その後、何とも実感のわかないまま、メリダは一日の配達を終えたのだ。

家に帰り、夕食の準備を終えたら、一段落。

メリダはゆっくりと紅茶を飲んだ。

紅茶を飲みながら考えるのは、ワンピースの事ばかりだ。

不思議な店。不思議な店員。

本当に自分の身に起きたことなのだろうか。

今でも今一つ信じきれない。

お店に行ったら200ルピア取られて追い出される、なんてことがあるかもしれない。

やはり兄に相談して一緒に行った方が良いのだろうか。

しかし、秘密に、と言われたくらいだから大幅な値引きをしているのだろう。

口が軽いと思われ、正規の値段で買うことになったら、と思うと躊躇する。

自分の部屋に行き、小さな箪笥の奥に隠していたメリダのお小遣いを数える。

200ルピアは、あのワンピースの代金としては安いが、自分にはやっぱり高い。

少しずつ少しずつ貯めた小銭は218ルピアあった。

とりあえず200ルピア以上あることに安堵する。

良かった、買える。

あの服が、買える。自分のものになるのだ。

そう思うと心が満たされる。


タオルで体を拭く頃、兄のニックが帰ってきた。


「ただいま、メリダ。

お前に良い知らせがあるよ。

明日、ジェームスが仕事終わりにメリダに会いに来るってさ。良かったな」


「!!!本当?兄さん?

ジェームス、元気そうだった?どう?変わりなかったかしら?」


思わずがっつくように質問をする。

兄はニヤニヤ笑いながら、そう簡単に人は変わらないよ、と答え、メリダの頭をポンっとなでた。

夕飯はじっくり煮込んだベーコンボーンと野菜をたっぷり入れたスープに、パン、そして温野菜。両親が帰ってくるのは3日後だから、それまでは兄と二人の食事だ。

兄にジェームスとのことをからかわれながら、和やかに夕飯を終えた。


その夜、メリダは幸せな気分でベッドに入った。

嬉しくて中寝付けない。

3週間ぶりだろうか?

久しぶりに会えるのだ、嬉しい、なんてものじゃない。

あぁ、やっぱり自分はジェームスが好きなのだ。

会えると聞いただけで、こんなにも嬉しい。

仕事終わり、ということは、4時頃だろうか?

じっとしていられず、踊りだしたくなる気持ちを抑える。


そこでメリダは思い出す。

アーロンは、3時までにお店に来い、と言っていたことを。

そうだ、あの、レモンイエローのワンピースを着て、会いに行こう。

何て言ってくれるだろうか?

それとも、気が付かないだろうか。

会うのにこんなにドキドキするなんて、自分は一体どうしたんだろうか。

色々想像をしては、メリダの顔に笑みが浮かぶ。

うん、私は幸せだ、そう思いメリダは明日のために静かに目を閉じた。


翌日、メリダはいつもより少しだけ早く起きて、仕事の準備をした。

仕事中にお店によるのではなく、仕事が終わってからゆっくりと買いたい、と思ったからだ。

朝食の紅茶とビスケット2枚、リンゴを食べ終わると郵便物をチェックする。

昨日は街の南側をメインに配達したから、今日は北側だ。

カバンの中身をチェックする。

配達する手紙、そしてオレンジのハンカチに包んだ210ルピア。

北側のマーケットに確か焼き菓子が売っていたはずだ。

それを買ってお礼に渡そう。

準備を整えて家を出る。

昨日よりも仕事に行く足取りが軽いのは、メリダの気のせいだろうか。


弾むような気持で配達に向かった。


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