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八月九日はハグの日

 

 お久しぶりです。

 

 





 【元治(もとはる)優菜(ゆうな)



 突然、ものすごく良い匂いに包まれた。


「ゆゆゆ優菜!? どうした!?」


 あわあわしながら尋ねると俺の麗しの婚約者は、


「んー、今日はハグの日なので」


 と、愛らしく首を傾げ答えた。


 ……こ、これはまさか両思、


「あ、元樹(もとき)君!」


「わ、どうしたんですかユーナ姉さん?」


「ハグの日です!」


 ……き、期待なんてしてなかったからな!


 うう。






 【柊耶(しゅうや)子鞠(こまり)



「きょうはハグの日なのでこまりねえさまをギュっするのですよ。しゅうちゃん」


 と、お盆の内弟子の兄さん方の帰省のタイミングで行う鴇田(ときた)の旅行のお供準備の為一時帰宅中の自宅で、目につく動くものすべてに抱きつくという悶絶ものの可愛らしい行動をしていた姪(三歳)に命じられた。


「からな」


 そうこれまでの流れを説明すると、突然の登場とハグに目を瞬かせていた許嫁は楽しそうな笑い声を上げた。


「さすが末良(うらら)ちゃん、最強ですね」


 もちろん、


「良い口実だったからな……会いたかった」


「帰ったの一昨日だよ?」


 ……それはそう、なのだか、


「夏休みはずっと一緒にいるつもりだったから」


 ん? 顔が赤い……暑いのか?


「……柊耶ちゃんは可愛すぎて困る」


 ?


「可愛いのは子鞠や末良さんだぞ?」


「……そういうところが可愛いのー」


 わたしが守らないと、などと言いつつ握り拳を作る子鞠……うん、


「やはり可愛いのは子鞠だ」






 【月史(つきひと)今璃(いまり)



「八月九日はハグの日、なんだってー」


 使用人寮の多目的スペースで(ゆずり)の足指を華やかにしながら今璃が言う、


「で、紗々蘭(ささら)がそれを朝のテレビで見て……で、ご当主が今日を休みにしたと」


 ご当主付きの兄さん達がそこら辺に落ちてる理由はそれか、


「……ハグ」


「父もお昼には帰るらしいから」


「帰ったら団子」


「ねー」


 それで久しぶりに家族で料理をして、ゲームで遊ぼう。


「楽しみだよねー」


 俺はこっくり頷いた。






 【月明(つきあきら)梨絵(りえ)



 ――これはハグというより、


「子守りか介護」


 ここは桜花院(おうかいん)家の居間、ハグの日なる知識を得た残念な婚約者は朝から抱っこオバケと化している。


「姉上、持って行くお洋服は決めましたか?」


 すると、姉達が持って行かなかった家事能力を、胎内で全て吸収したらしい出来た妹さんがボストンバッグを出して来てくれた。


 崎坂(さきさか)のお盆に今年から、俺と弟は婚約者を連れて行くことになったのだ。


「あー君、どんな服が良い?」


「とりあえず……丈夫な長袖長ズボンを明日着て行くとして……」


 んー、後は、


「大叔母の家に行く時用の服ですかね?」


 いわゆる親戚へのご挨拶だから……、


「ではお嬢様コーデセットを用意しますねー」


 助かります。……後は、


「あっちで買い物予定ですからその時の服と寝間着にもなる部屋着くらいで」


 寝るのは、


「女子部屋なので変な服は入れないように」


 妙な期待をしていそうな女に、そう告げると不満げに鳩尾を攻める困った生き物に化けた。だが、髪をなでながら、


「ちゃんとして下さいね。婚約者殿?」


 と、耳元で囁やけば、


「が、頑張る!」


 なんてとても良い返事をする。


 ……ほんとこういうところは可愛いよな。






 【緑郎(ろくろう)一玻(かずは)



「ハグの日絵! マンガ! 小説! ……ありがとうございます!!」


 タブレット端末に向かい、正座で頭を下げるハニー。


「……ああ、ほんと可愛いよなー」


「……あれを可愛いって言うのは緑兄だけだよ」


 デカいリュックを玄関に運びながら今璃がツッコむ、


「ほんと今は姉ちゃんに厳しいよなー」


 口はともかく行動は優しいがな、


「緑兄が甘すぎだから良いのー」


 ……うん、反論できねー、


「あー、なんだ、留守中の姫さんと一玻さんは任せろ」


「お嬢九割でね」


「……了解です」


 ……あー、とりあえず、


「ハニー、英気を養う為にー」


「ひゃあ!? だ、抱きつかないでくださいー」


 ……あー、やわらけー、最っ高っ。






 【カップルよりラブラブな父娘とその他】



「パパ、ギュー」


「ギューな」


 世界一可愛い娘の小首を傾げてのおねだりにもちろん応じながら思う。ああ、朝、


「ハグの日なの!」


 と、抱きついて来た娘を見て出社拒否して良かった。と、……つーか今日他所との仕事なくて良かった。と、


 ……まあ書類仕事はまあまああったからしてるが、でも紗々蘭も一緒に、


「よし、もうひと頑張り」


 と、任せてる仕事を片付けてるから、


「……やべぇ、めっちゃはかどる」


 なので……午後イチには終わるなー、


「紗々蘭、二時には暇になるがどうする?」


「! じゃあ、パパのピアノでヴァイオリン弾きたいです! あと一緒にお茶して……あ、映画も!」


「おー、シアタールーム予約しとくな」


 ……ああ、もうほんとに、


「朝の俺英断」



 ――ハグの日なので私の分も元子(もとこ)ちゃんにハグして下さいね♡


 と、姉様からメールが来たので祖母に抱きつこうとしたら……、


「……大丈夫?」


「大丈夫ー!」


 正面衝突したわ。


 元子ちゃんにもそういうメールが来たから起きた悲劇よ。


「姉様には内緒ね……」


 私達はおでことアゴをなでながら頷きあったわ。



「……暑苦しい」


 目の前で抱き合う双子に思わず吐き捨てる。ハグの日だから! とか言ってたわ。


 だけど私の感想は少数派らしく、


「キャー、サービスありがとうございます!」


 って女子達は叫んでいる。


「……私、女子力足りないのかしら?」


「……あーうん……別に平気だと思うよ」





 

 

 ちょっとした愚痴。


 溺愛三兄弟出会って無いじゃん!!


 ……糖度は父娘で補いました。

 

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