ハイスペック乳児
俺の名前は、土屋健一、十八歳。某都立高校の三年生、そして『転移能力者』だ。
亜空間一層で転送ゲートを開き、地球とは違う世界に転生した。
今の俺の生活の基盤は地球だ、受験生をしている。戻ろうと思えば、戻れる。だが、それには、この世界で固有技能の開放を行わなければならない。
それには、明確に、開放する呪文は詠唱しなければならない。
開放の呪文は……
『アクティベート・ユニークスキル』
だがね、まだ俺、喋れないんだよ。生まれたばっかりだし。今の詠唱、声に出したんだけど、赤ん坊の泣き声になってるから。
もし、泣き声でも有効ならば、前に固有技能を開放した時みたいに、体幹に衝撃が走るからな。それで分かるんだけど。
という事で、無事転生出来た。良かった。さっき、尻叩かれたのは、お袋のお腹から出た時に、なかなか泣かなかったからだろう。
それで、気が付くと、産湯に浸かっていた、と言う訳なんだ。
目の前には、若い女性が居る。転生しているから、これが俺の母親か?あ、違うらしい。でも産婆にしちゃ若いね。
その女性に、綺麗に体を拭いてもらった。タオル?いや、お包みだな。そして、今度は本当の母親に抱っこされた。
地球では、前の世界の記憶を持って転生出来なかったが、ここでは、地球での記憶を持って転生できた。有り難い。
見た目は生まれたばかりの赤ん坊だが、中身は高校三年生の知識と、知恵を持ったハイスペック乳児だ。あ、そう言えば男で生まれたんだよな……
異世界能力者は、転生するときに、前の世界の性別は引き継がない。だから、前の世界とは違う性で生まれたりする事も有る。
男か女か、これじゃまだ、自分の体、見れないしなぁ……
ま、女に生まれたら、それはそれで。ムフフ……
なんか、とても邪な考えが頭に浮かんでしまう。それは、俺が十八歳、まだDTだからか?
この場に居るのは俺を除くと、俺の母親、母親と同じくらいの年齢の女性一人、それに大人の男性一人、あとは男の子だ。
男性は、俺の親父かなのか、すると男の子は兄貴って事になるのか。
「◎☆□○#○□☆、◎$&%」
「☆□○#$、○☆□#」
「#$◎☆*、□&○%」
「◎#$&%☆□○、○#$☆□○」
おおー、何言ってるのか全然、分からねぇ……
こんな時、ナレッジが有ればなぁ。
『ガタン』
扉が開いた音だ。もう一人、男がこの部屋に入って来たぞ。
「☆□○$☆□、◎#$&%○#○」
「☆#□&%、☆□○$%○#○」
お袋にキスしてら。
ああ、この男が俺の親父か。出産には立ち会えなかったのね。
親父は、お袋が抱っこしていた俺を受け取ると、俺の目をじっと見つめた。
「☆$☆◎#*□、ケンイチ、◎#☆#○」
ん?俺の名前が聞こえたぞ。
「ケンイチ、☆◎#□、ケンイチ」
お袋も、ケンイチと呼んで、俺の事頬ずりしてくれている。
「ケンイチ」
「ケンイチ」
「ケンイチ」
この場全員が、ケンイチと俺の事を呼んでいる。もしかして、名前、日本と同じのを付けられたって事なのか。
転移の場合は、日本の名前をそのまま名乗ろうと思っていたが、転生の場合は、そのときの親に命名されちゃうからな。
いずれ、日本に戻る事は有ると思うが、言葉が話せる様になる、一年後の話だ。その時に混同しないとも限らないし。
だから、同じ名前を付けてくれたのは有り難いと思う。それにしても、同じ名前なんて、偶然かね?
一通りの出産儀式は終わったのだろう。お袋と俺以外の人間は、この部屋を退場した。
お袋は俺を抱きしめていた。お産が終わったばかりなのに、有り難い事だ。
んんん、あ、なんか出た。
そう言えば、オシメしているんだよな。トイレって言えるようになれば、起こしてやってくれるよな?
オシメを交換してもらうと、お袋は隣のベッドで横になった。これから、一ヶ月は、オッパイ、オシメと面倒掛けるんだよな。普通の赤ん坊だと、全くの本能だから大変だろうが、俺は、ハイスペック乳児だ。これからもお世話して貰うんだから、あまり手間を掛けないようにしないと、だな。
そう思ったら、眠たくなってきた。寝よう……
……あ、腹減って来た。お袋は……まだ寝返りできないから、横見れねぇ。まだ明るいし、まあいいか。
「おぎゃー、おぎゃー」
ベッドから起きる音がした。暫くすると、俺はお袋に抱き上げられた。
少しあやしてくれたが、授乳と気が付いたようで、俺を抱きかかえると、上衣をたくし上げて胸を出した。
お袋、めちゃくちゃ綺麗。それに胸はかなりのボリューム。
もしかすると、育児期限定かもしれないけどね。
弟か妹が出来るまでは、このおっぱいを俺が独占できるのか……夜中は俺の親父が好きにするんだろうが、これは仕方無い。
男にとって、オッパイこそ命!!やはり、母は、垂乳女に限るよな。
最初に右胸、次に左胸の乳首を吸わされた。
母乳が旨いかと聞かれれば、旨くは無いと思う。日本では高校三年生だ。ジャンクフードだって食っていたし。
そう言えば、日本にいるお袋から聞いたが、俺は母乳だけで育ったと、言っていたよな。その時の記憶は、当然無いけどさ。本当のお袋もオッパイは大きかったらしいからな。
だから、やはり、母は、垂乳女に限るよな。
で、右胸の乳房を銜えされられた。もうお腹いっぱいだったが、乳首の感触を楽しんでいた。ああ、ずっと吸っていたい。
俺が感触を楽しんでいるだけと、お袋は分かったのだろう。乳首から離して、抱き上げると、背中をさすった。
ああー気持ちええーー『ゲップ』
な、なるほど。授乳したあとは、こうやってゲップさせるんだ。
授乳が終わると、俺はまたベッドに寝かされた。
母体の中に居た記憶って、三歳位まで覚えているんだとか。中には、転生前の記憶も持って生まれてくる赤ん坊も居るらしいです。私は、忘れてしまったのか、記憶にはありませんが。
過去に生まれた天才が、生前の記憶を持ったまま、赤ん坊に転生して、そして大きくなっても忘れずにいたとしたら。
ノンフィクションで、記憶を持ったまま転生したって、レポート。誰か書かないですかね。
まだ本編に入ったばかりですが、プロローグを通して、面白そうだ、今後も読んでみたいと思われましたら、ぜひブックマークをお願いします。もしかすると、投稿のペースが上がるかもしれません。
よろしくお願いします。