プロローグ_学習
プロローグ四話目です。
家から駅までは五分だ。そこから○武○宿線に乗る。ジェイアールとの乗り換え駅まで、十分ほど。俺が地球で転生した時よりも前から走っている黄色い電車だ。その乗り換え駅には、なぜか予備校が多かった。
高校の三年間、正確に言えば二年と数ヶ月は、部活に明け暮れた生活だった。
お陰で、二年生の時には、三年生を抑えてレギュラーとなった。インターハイ都予選には、二年生と三年生の時の、二回もレギュラーで出場する事が出来た。
だが、勉学は一歩出遅れてしまったんだよな。現役で合格するのは難しいとは思うが諦め切れない。予備校に通って、はっきりと思ったんだ、もう一年こんな生活をするのは嫌だと。
そんな訳で、部活引退後は、予備校に通っている。志望校は……国立理系の某大学だ。模試では、今だにC判定を抜け出せてはいない。やはり勉強量が圧倒的に少ないのか?
夏休みはもう後半戦、だが、受験生に夏休みは無い。
今日も朝から予備校に来ている訳だ。美琴とは志望校、コースも違うが、大学に入っても、付き合って行こうと思っている。だから絶対に現役で合格したい。美琴は、頭良いから、絶対現役合格するだろうしな。
と、昨日までは鬼気迫る感じで予備校に通っていたと思う。おまけに、美琴とも気まずい雰囲気だったし。
だが、今日からは違う。俺は生まれ変わったんだ。
まず、この先生。ええと、たしか現国を教えていたっけ。
『ゲット、ナレッジ・ウィズ・デフォルトフィルター』
おお、すげぇ。現国だけじゃない。
そうか、国文系全般強いんだな、この先生は。流石東大出!!
東大出、だからでは無いのだろうと思うけど、予備校で講師を続けるって事は、大変なのだろう。いかに生徒に分かってもらうか、授業の準備とか。そんな先生の特技を一瞬で貰ってしまった。ああ、先生の努力は、この不肖、土屋健一が有り難く使わさせて頂きます。
『オーガニゼーション・ナレッジ』
これで、国文系はOKと。だが、他の国文系の先生も、見つけたら、頂戴しておこう。
次はと……ああ、そうそう、英語。この先生はリスニングの先生だったな。ネイティブだけど、日本語も凄い流暢だ。予備校で教えているのは、英会話教室よりも待遇が良いからだとか。
そんなこんなで、講師を見つけたら、目視し、片っ端から『ゲット・ナレッジ』『オーガニゼイション・ナレッジ』を繰り返していった。
その度に、俺の頭の中には、高校三年までの知識と受験のテクニックがどんどんと蓄積して行く。
固有技能を発動する度に、体幹に衝撃が走る。かなり押さえては居るが、周りから見ると、挙動不審な人間と思われたかも知れない。だが、ナレッジの都度、知識を整理していかないと、頭の中がパンクしそうでな。ほら、俺って馬鹿だろ?!
どれだけオーガニゼイションせずに、ゲットナレッジを出来るか試してみたいが、容量を超えた時、どうなるか分からないし。予備校の中で倒れちゃったらと思うと、踏ん切りが付かないな。
授業の前に会えたのは、現国とリスニング、数学と化学の講師だった。残りは、物理に日本史と世界史、地理くらいなものか。お、あの先生は、地理を教えていたな……
そうこうしているうち、午前中一コマ目の授業の時間になった。教室に行かないとな。
教室に入る。座席は、と。やっぱり、一番前の席は敬遠されるのかな。二番目から埋まっていく。
俺は、一番前の列、中央から二つ右の席に着席した。俺が座った後に、前の席は全て埋まり、やがて講師が教室に入って来た。授業の開始だ。
確か、この講師は、まだナレッジしていなかったな。試しにこのまま、授業を聞いてみようか。
授業は……
とってもつまらなかった。ああ、先生のせいじゃないよ、俺のせいだ。だって、すでに分かっている内容を改めて聞くなんてさ。まあ、今までの知識の確認っ事も大切だけど、俺には『オーガニゼイション・ナレッジ』があるからなぁ。
昨日までは、分からなかった事、知らない事をノートに取って、必要があれば講師を捕まえて聞くとか、空き時間に自習室で復習したりとかな。齷齪としていただろう。ああ、もっと早く覚醒していればと、思った事は無いよ。
夏期講習は午前中に二コマ、午後に一コマ取っていた。国立志望だから、文系理系のコースに限らず、全教科満遍なく頭に入れておかなければならない。だが、それは志望ではなく無謀と言う物だ。昨日までだったらな。
次のコマの授業も同じ教室、移動するのも面倒なので、座席はそのままだ。次の時間も欠伸を堪えるのに、とても苦労した。
結局、午後の一コマは受けずに予備校を出る。今日出て来ている講師全員から、ゲット・ナレッジで知識とテクを受けたからだ。
もしかすると、もう予備校には来なくてもいいんじゃねぇ、位な学力になっていると思う。
もし、今、東大の二次試験を受けたとして、全教科満点を取れる自信はある。どんと来いだ。今から、志望校を東大文一にしちゃおうか……
授業予定を見ると、今日ゲットした講師以外が来るのは、来週だ。となれば、少なくとも来週まで予備校に来る必要は、多分無い。だって、毎日欠伸を堪えて、分かりきった授業を聞く。もう、苦行以外の何者でも無い。
同じ苦行ならば、滝に打たれたりとか、禅寺で座禅を組んだ方が、受験には為になるかもしれないしね。
親父、お袋すまん。決してサボる訳では無いんだよ。もうこれ以上授業を受けても無駄なんだ。だから、あとは他の予備校をちょこっと回って、くらいしか、思いつかないんだよ、今日の所は。
俺は、予備校を後にし、駅に向かった。
実在の場所を参考にしておりますが、基本的にはフィクションという事で。
しかし、受験生の時から思っていたのですが、山手線沿線ですと予備校が集中しているのは城西地区なんですよね。池袋、高田馬場、代々木、渋谷、ですか。城東はオフィス街ばっかりのイメージが浮かびます。
特急で十分、駅から歩いて五分じゃ、家に帰った方が良いのに、と思ったりしませんか。わざわざ隣の駅まで歩く位ならば。
まあ、そこは受験生という事で。たまには生き抜きも必要なのです。