プロローグ_覚醒とラッキースケベ
プロローグ二話目です。
ん、ここは何処だ?
確か、トイレに行こうとして、部屋の扉を開いた、つもりだったのだがな。
小さい頃、夢の中と気付かずに用を足して、翌日、起きてみると布団が大洪水になっていた事があった。うぅぅ、恥ずかしい記憶を思い出した。
さすがに、小学校の三年を過ぎると、夢の中だと認識して、無闇矢鱈と放水する事はしなくなった、と思う。だから、次の日に布団が濡れているような、恥ずかしい事は無くなかった、と記憶している。
その代わり、夢の中で、同級生の女の子に抱きしめられ……その後は、同性の貴兄なら、多分ご存知だろう。
俺の場合、それが妹の千秋だったので、かなり、ショックではあったのだが。
と、自分で過去の夢の事で、突っ込みを入れてみたのだが。
改めて、周囲を見回してみる。俺が居るの場所は、俺の部屋の扉を出た、すぐの所だ。左側にトイレがある。
でも夢だ、絶対に、夢に違いない。なぜなら、部屋を出た所の壁の上に常夜灯が点いているのだが、全てが白黒のモノトーンだからだ。
いくら暗めとは言え、壁のクロスならいざ知らず、扉やフローリングの木の色も白黒だとか、どう考えても有り得ないじゃないか。そこで、俺は、後ろを振り返った。
そこには、俺の部屋がある。扉は、半開きのまま、俺が部屋を出た時の、そのままだ。
でも変だ。開いた扉の所だけがフルカラー、俺が記憶している通りの色だ。だが他は全部モノトーン、勿論左横にあるトイレの扉もだ。
だから、ここに入って用を足せば、翌朝は洩れなく、もとい、漏れて……ああ、恥ずかしい事態になっている事、間違い無しだ。
フルカラーの夢を見る人、モノトーンの人。最初はフルカラーだが、途中からモノトーンとなる人、またその逆。
いろいろとパターンはあると思うが、モノトーンの中にフルカラーがポツンとある、そんな事って有るのだろうか。
普通は、ここで目が覚めて、ああ、夢だったのか、とか、念のためライトを付け、起きている事を確認したり、とかするのだろうが、一向に目が覚めない。
否、覚めているのか夢の中なのかも分からない。
それに、なぜか尿意も消えうせていた。
一旦、部屋に戻ってみた。
あれ、扉が……部屋の扉を閉めようとしたが、動かない。いや、動かないなじゃなくて、扉に触れない。通り抜けちゃうからた。
扉の隣ある、部屋の照明スイッチを押そうとした。これも、スカって感じで触れやしない。
だが、次の瞬間、俺の頭の中に膨大な知識が詰め込まれた。俺の能力に関する事だ。
そうか。思い出したぞ。ここは……そうか、俺、転進ゲートに入ったんだ。
「バックワード」
次の瞬間、元の平穏な状態に戻る。
扉は閉められるし、ライトのスイッチをオンにする事もできる。何しろ、尿意も戻ってきたからな。
俺は、覚醒している事を再度確認し、トイレに行って用を足す。そして、扉を閉め、布団の上に敷いてある敷布団代わりのタオルケットに包まって寝た。
『ピビビッ、ピビビッ、ピビビッ、ピビビッ』
うーん、朝だ。そろそろ起きないと。
布団から起きようとして、包まっていたタオルケットを……あれ、タオルケットは、どうしたんだ?
ごろんと左を向こうとした所、左手に低反発クッションの感覚があった。
なんだ、これは。俺の枕は確か蕎麦殻……
「うーん……」
あれ……コノブッタイハナンダロウ……ヨシ、もう一度、突いてやれ、エイ!
「っ………あ、お兄いちゃん。もう、痛いじゃない。もう少し寝かせてよ。目覚まし、止めてくれる」
俺は、目覚ましを止めた。って、そんな事じゃない!
タオルケットを捲る。ああ、流石に下は穿いてたのね。
お、俺は?ああ上下穿いてたよ、って当たり前だ!!
「ち、千秋、お前、何で、俺の布団に寝てんだよ!!」
「えー、ここ、お兄いちゃんの部屋だっけ?」
「俺の部屋だ。寝るなら、お前の部屋に行け」
「んーいいじゃん。偶には」
「偶には、ってなぁ」
千秋は、トップレスの胸を俺の胸に擂り当てた。
「私のせいでお姉ちゃんと喧嘩してんでしょ?だから、一緒に寝て、ほら、こうやって慰めてあげる」
「慰めるってなぁ、お前にしてもらっても嬉しく無いからな」
「えー、お兄ちゃん、昨日は自分で慰めてたじゃない」
「っ!」
「しっかり見ちゃったからね、うふふっ」
なんか、頭に来たぞ。
「ほら、こうやってお姉ちゃんの事、パンツ一丁にしてたでしょ」
「それが如何した。別に無理やりした訳じゃないからな」
「へぇー、でもその後、お姉ちゃんに、口利いてもらってないでしょ」
その原因はお前だろうが。
「このパンツ、どうしようとしていたのかな?」
「どうしようと、お前には関係無いだろう!!」
「もしかして、お兄ちゃんが、下ろそうとしていたとか」
頭の血管が浮き出ているのが、自分でも分かる。
「それとも、こうやって、お姉ちゃんが自分で下ろしてたの?」
千秋は、白い布に両手をかけていた。
「やめれ!!」
とうとう、俺の血管がブチ切れた。俺は、千秋の両手をパンツから剥がし、少し捲れ上がった白い布を元の位置にずり上げてやる。
「これ以上したら、母さん呼ぶからな。早く自分の部屋に行け!!」
「もぅ、ぶうぶう」
妹は、やっと俺の布団から起き上がり、パンツ一丁のまま部屋を出て行った。
久々に妹の生乳見たな、美琴と比べたら小さいけど。しかし、いくら兄貴相手だからって、恥ずかしくないのか?
まあ、妹のだが、眼福、眼福と。
十六歳の乙女が、たとえ兄だとしても一緒の布団に入っているなんてね、有り得ませんわ。絶対に!!
これが妹じゃなければ、とても嬉しいシチュエーションなのですが。