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主の楽園 約束の地  作者: macchang
時代の終わり
6/23

英雄は使命を終えて

前書き2万文字も入るのか。一般的な投稿作品3話分くらいいけるのか。

頬を撫でる感触に目を覚ます

瞼が重い

それでも何とか目を見開く

どこかで見た様な天井が見えたと思った刹那、無理矢理身体を引き起こされ、

あまり豊かでない胸に頭を抱きかかえられる。

頭を拘束する相手の背中に手をまわす

身体に力が入らないのを感じつつ、今、目いっぱいの力で抱きしめる。

聞きなれた声の嗚咽が聞こえる

想ってもらえる幸せをかんじてしまう。

頭を抱える力緩み、胸から引き離される。そうして涙でグシャグシャになった恋人の顔を見る。

「おはよう。」

「バカ」

いうなりキスで唇をふさがれ押し倒される。

身体がまだ動かないのでされるがままだ涙と鼻水に顔を汚されながらキスと抱擁を繰り返し受ける。

暫く続けると、今度はこちらの腹の辺りにかかる布団に顔をうずめて動かなくなった。

そんな彼女の後頭部を撫でてやる。

少し意識を集中すれば頭に彼女に関する情報が流れ込んでくる

この世界においては「スキル」や「ギフト」と呼ばれる特殊能力、その中の「鑑定」と「解析」による効果だ。

呼び方は教会の関係者は神からの贈り物という「ギフト」

教会の勢力下に無い組織や地域では「スキル」と呼ばれるが基本的に同じものだ。

そしてそれらは、前世の自分というものがゲームとして親しんでいたものでもある。

この世界に生まれた時からある前世の記憶と、前世での死後の記憶。

この世界の神とは違う、神に近しい何かによってこちらの世界へ転生させれた記憶。

「スキル」や魔法のある、物理法則の多くが異なる世界に転生させられた理由は、

こちらの世界の技術や思想の発展の為らしい。

与えられた「鑑定」と「分析」、そしてこの世界の特有の「魔法知識」というスキル

それに前世で欲しかった「科学知識」を与えられこの世界を成長させるために生まれ変わったのだ。

他にも目的は違えど転生者はいるらしいが出会ったことは無い。

何にせよ、そこそこ裕福な商家に生まれ、学ぶ機会をえた自分は。スキルを使い頭角を現し

近隣の学園へ成人前に入学。

魔法を道具へ付与する技術の革新にて成果を上げ卒業。

家業でアイテム制作と販売を始めたわけだ。

ちなみに「知識」とつくスキルは解析したり鑑定したものを正しく認識する能力ともいえるもので

それらをもって初めて「解析」スキルは機能する。

そういった都合からこの世界は「解析」と「鑑定」の使い手は少なく、習得していても生かせない人が多いようだった。

おかげて学者としての評価は高く得られ、未成年という若輩の身でありながらそれなりの評価と信頼を得るのに有利に働いた。

勇者である彼女アレサとは、まだ学生だった時に試作のアイテムを試す為に冒険者を雇ったのが始まりだった。

まだ勇者として活動はしていなかった頃の彼女は、力も無く、安く雇えたのと、困った人を助けるために、誰もやりたがらないような仕事を進んで受ける傾向があった。

学生の作った試作アイテムの試験、時にダンジョンに素人の学生を守りながら入らなければいけない依頼もある。

仕事もしていない人間の出せる依頼料で受けてくれるのは彼女くらいのものだった。

試験の終わったアイテムで彼女が気に入った物は報酬として渡していた。

そんな付き合いを続ける内に、親しくなりはしたが当時はとにかくアイテムの開発に夢中で都合の良い冒険者くらいにしか思っていなかった。

そんな中で、彼女が勇者として目覚める。

ある時、依頼を受けた彼女のステータスを鑑定してみると、勇者の固有スキルを習得していた。

勇者というのは前世のゲームではイベントをこなすと得られる実績であり、職業や称号というわけでは無い。

 この世界では勇者固有スキルを持つものを総じて勇者扱いしているようだ。

最初、彼女が得たのはステータスに補正のかかるパッシブスキル。

本人はスキルの事など気が付かず、身体の調子が良いと笑っていた。

それから身体能力の向上した彼女は、成果と名をあげていった。

そして彼女が持つ、魔法が付与されたアイテムにも注目する者たちが出てくる。

その中には正当な勇者の家系のも者もいて、そこから彼女が勇者の力の目覚めたことが公認されて広まっていった。

 彼女が勇者として活動を始めた後は、少し関係が変わってくる

僕は勇者に協力する職人であり、実家が商店を営んでいたこともありスポンサーの様な立場になる。

研究が成果を上げ、僕の名前も彼女の勇者としても名声に劣るが知られるようになっていた。

実家では初歩的な治癒魔法を付与した装飾品や小物を量産し大きな利益を生み。

中級から上級の魔法の付与を、高い報酬で受けて稼いでいた。

この世界にある魔法が付与されたアイテム、魔道具は原則的に神に与えられるか、ダンジョンと呼ばれる魔物の領域で手に入れる以外に入手方法がなく、生産技術は存在していなかった。

「魔法知識」と「科学知識」があれば技術的には難しくはないのだが「科学知識」と「解析」恩恵は大きい。

新たに現れた勇者が、貴重な魔道具を複数所持しているという事実。

僕はその制作及び提供者として認識されていった。

アレサに渡していた試作品の改良品を勇者の家系に提供することで後ろ盾になってもらい研究の協力を得た

同時に複数の魔道具を駆使し成果を上げる彼女を良く思わない勇者の家系の人々から彼女を守ることにもなった。

正当な家系に無い新人勇者が、良い道具を持ち成果を上げているのをやっかみ、道具を取り上げようとしたり、女であることを使い名声を得ているというような風評を広める様な勢力があったのだ。

それが、僕が知られるようになり、彼女の持つ魔道具より上質なものを提供し始める事で、そういった嫌がらせは消え、代わりに正当な勇者が使う道具の試作係と認識されるようになったそうだ。

危険を伴う事もある試作実験は外の者が担当すれば良いという認識になり、勇者になる前の状況に近い扱いを受けるようになる。

急に勇者と言われ、身の振り方が分からず、嫌がらせだけを受ける立場だった彼女にとって、それは物凄い救いになったのだと後に本人から聞かされた。

その頃からアレサは僕を意識していたらしい。

僕の方は実家以外に大きな後ろ盾を得られ、研究資金や施設が充実し始めこれからだと盛り上がっていた。

そして高度な術式や人に合わせた製品の試作を始めていた。

個人や特定の属性を持つ人間の専用アイテムの政策。汎用性を捨てて性能の向上を図った製品の作成に伴い、試作品もアレサ専用の物が造られていく。

その制作過程において、当然のように彼女の身体能力、魔力、性格、経歴等、彼女の事を知っていく必要があり、その結果声を聞いたり、ちょっとした仕草で体調や、ストレス状態を把握できるようになっていた。

アレサ曰く、

「嫌な事あった時に何かあったのか?」と心配して声をかけてくる僕は先の嫌がらせから助けた事も相まって、自分を理解してくれる素敵な人に見えたそうだ。

そして彼女を知ろうとする僕をみて、きっと僕もアレサに気があるのだと思っていたらしい。

実はその頃から気になっていたと言っておいたが、当時それどころではなかった。

他の転生者はどうなのか知らないが、僕はこの世界の発展を使命として転生した。

そして、使命にはノルマがあった。

期間内に一定の成果を上げることで、新たな知識に関わるスキルや幸運が得られた。

そして達成できなければ当然のようにペナルティがあった。

ペナルティ、とても単純なもので転生生活の終了である。つまり成果が無ければ死ぬのだ。

現在、すべてのノルマを達成しこの世界で好きに生きて良いと転生させた神に言われて落ち着いているが、

当時は利用できるものを全て利用して必死に生きていた。

彼女に思いを告げられたのは、転生のペナルティから解放され、研究していた学園を卒業しこの先の身の振り方を思案しているときだった。

彼女が身を寄せる勇者の住まう館に工房を設けるのでそこで研究と制作をして欲しいと打診をうけ、

その時に告白され、引き受けるように懇願されたのだ。

情に絆されたのかと言われればその通りとしか言いようがなく。

今まで協力してくれた彼女の事が異性として一気に惹かれるようになった。

それからは館の離れに工房を設けて、住み込む形で研究を始めた。

そして順調に仕事とアレサとの仲を発展させているさなかに

魔王討伐の計画が浮上してきたのだ。

正当な血筋の本家勇者とアレサの力をもって魔王と倒さんとする計画だが

その実、アレサを捨て石にして、本家の勇者が成果をあげんとするものだった。

いくら魔道具の作り手として名が売れていようが、そういった戦略的な話に発言力などあるわけも無く

アレサはある種の覚悟を決めた様な顔見せるようになる始末。


それからは彼女を生還させるためだけに研究を続けた。

あまり時間は無かったが、やれるだけの事はやった。

それにしても今回、討伐される事になった魔王の事を調べている間は絶望しかなかった

魔王カリアス、僕の記憶にあるゲームにおける集団でボスに挑むレイドイベントのボスだ。

カリアスのイベントはクソレイドと名高く、何度も修正を受けてまったくの別物になった不評なイベントだ

イベント概要は倒せないボスに挑み全滅までの時間と与えたダメージを競うイベントだがボスに挑むまでも長い。

幹部として過去のレイドボスとそれに率いられる高レベルのモンスターの群れと戦い、

それらを全て切り抜けた先で負け確定のカリアス戦である。

上級のプレイヤー以外はそもそも最後のカリアスに合う事すらかなわないような難易度のイベントであり。

それ以外にプレイヤーを不快にさせる要素がてんこ盛りの、何故こんなイベントにしたのか理解に苦しむものだった。


この世界がゲームそのままのものではなく、少なくない差異を持っているのでそこに希望を持ち対策を練り続けた。

その末に見つけたのが過去の聖人が使った術。

術者の意思と術式の継続を条件に運命を捻じ曲げる魔法。

これを使えば通常の戦闘での死は免れる事が出来るだろう。

後はこちらの意志力次第だ。

ゲームには無かった術による希望。

それは新たな障害の発見でもあった。

強大になり過ぎは魔王種は神格を帯び、能力を認めた相手に祝福を授ける事もあるという。

「スキル」、「ギフト」と呼ばれるそれを授ける事が力をつけた魔王種には可能だという

カリアス程の存在であれば出来たとしてもおかしくは無い。

それどころか過去に現れた配下の実力を見るに、出来るものと考えるのが自然であろう。

ゲームには無かったこの情報、記述のあった過去の魔王討伐の資料にある、魔王を討伐した勇者の最期に問題はあった。

魔王の呪いにより苦しみの内に死に絶えたというもの。

そしてそれが配下への祝福と同義の物であるという事だ。

魔王は自らを倒した相手に、その実力を認め祝福を授ける。

これが魔族間での世代交代ならば強力な次世代を生むことになるが、

その祝福は魔族以外には死の呪いとなる。

「スキル」の習得を拒むものはこの世界に存在しない。通常、そんな必要は無く当然ながらその祝福への耐性を得る機会などありはしない。

そして抵抗なく死という「ギフト」を受け取ってしまうのだ。

今の状態では、アレサが捨て石となり当代勇者が魔王を討伐したなら彼が、

上手くアレサが魔王を討伐できても彼女が死ぬことになる。

前者なら責任の行く先は分かり易い。アレサの社会的な死だけで済めば良い。

新たな魔王討伐の旗印にでもされたなら今度は確実に魔王を倒すか彼女が死ぬまで戦う事になるだろう。

魔王の祝福はそれその物は死ではない。

聖人の術で一度の死は切り抜けても消えることなく、間を置かず新たな死が彼女襲う。

そうなればもう救いは無い。

目的は政治的な後腐れ無く、魔王を討伐しアレサの生還。

手段は単純だ

捨て石として特攻をかけるであろう彼女の装備の充実と、討伐の呪いの対策。

万が一失敗した時の為に聖者の術も使うが、これが高価を発揮しないことを祈るばかりだ。

それらを実現するために、勇者の装備充実を謳い研究資金と人材を集め気たるべき日に備えたのだ。


現在、過程としては多少の想定外はあったものの結果は充分だといえる。

もう少し腹の上にのるアレサの頭の重みを感じて居たかったが、突然開いたドアに彼女が顔をあげてしまう。

「そろそろ目覚めそうだと聞いて飛んで来たぞ!ハジメ君さぁ遠慮なく起きるが良い。」

部屋に入るなり乱入や高らかに言い飛ばした。

「落ち着きのない奴が来た。」

「バカ」

アレサの恨みがましい声に一切反応しないこの乱入者こと、当代勇者ジョイス・リノマンである。

あとがきと合わせて・・・・・もうここだけで別作品書いても良くね?


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