1話「能力開花」
彼女の名前は柊言葉という。
名門の柊家の娘として誕生した、産まれたときにはまだ能力は開花していなかったのだ。
彼女の能力が開花したのは小学校六年生の時、学校で授業を受けていた時だ。
「ぐ…うぅ…眠い…」
彼女はこの日の前日に珍しく夜更かしをしていた、何故夜更かしをしていたかと言うと友人からとある番組を薦められたのだ。
その番組は深夜番組だった、言葉は夜更かしなど人生に一度もしたことがなかった。
しかし、友人から折角薦められたのだ。翌日に感想でも聞かれて見ていないと答えのは申し訳がなかった。
「言葉ちゃん大丈夫…?昨日やっぱり夜更かししてたの…?」
眠そうにしてる言葉を見て隣の席の女の子が話しかけて来た、彼女が言葉に深夜番組を薦めた張本人だった。それからなのか普段見ない言葉を見て心配そうな表情を浮かべていた。
「ん…大丈夫よ、そんなことより話してると怒られるわよ…私の事はいいから授業に集中して?」
「う、うん…分かったよ…」
彼女は渋々、黒板の方を向き授業に取り組み始めた。
この時、言葉は既に限界に達していた。しかし寝るわけにも行かないと踏ん張っていたがその努力も虚しく眠りについてしまったのだった。
しかし、言葉はすぐに目を覚ました。そして明らかに風景が違うのに気づいた。
「ここは…」
周りを見渡すと、真っ白な空間に赤いソファが3つと細長い白い机、その机の上には紅茶が入ったティーカップが一つと懐中時計が一つ。
「夢…?それにしては意識がしっかりして……」
すると、何かの気配を感じとり後ろを振り返った。
「お目覚めかな、柊くん。突然だがここは夢の中だ。それと君の事について話そう、そこに座ってくれたまえ。」
そこには軍服姿の黒髪の綺麗な女性が立っていた。
「…誰ですか?それに私の事を知ってるの…?」
言葉は恐る恐る相手に訊ねて様子を伺った。すると相手の女性はクスッと微笑みソファに脚を組んで座った。
「如何にも。私はずっと君を見ていたからな?君の嫌いな物は大体把握してるぞ?ピーマンにニンジンにお化け…と、こんなところかな」
言葉は驚きを隠せなかった、今まで自分の嫌いなものを話したことは一切無かったのにそれを見事言い当てたからだ
「…それで、ここは何処なの?」
言葉は相手を睨みながら質問を続けた。
「さっきも言っただろう、ここは夢の中だ。君が昨日夜更かしをしたせいで今は授業中なんだが爆睡している。」
そう言うと謎の女が指をパチンと鳴らした、すると彼女の後ろに鏡が現れ眠っている自分が映し出された。
「……早く起こしてここから出して!!!」
言葉は謎の女に掴みかかり激しく揺らし始めた。
「あ"ーーーー!!!やめろ!起こす前に大事な話があると言っただろう!話を…話を…うっぷ…」
相手の顔をじっと見つめて揺らすのを止めると謎の女はごほんと咳き込み話始めた。
「まず…私の名前はアルファ。君の監視役だ。これから話すのは君の身にとても大変な事が起こっているということだ。それは…」
如何にも胡散臭いと思い、言葉はジト目で相手を見つめ相手の話を待った。
「君に特殊能力が芽生えたん…」
「早く起こして…」
相手を胡散臭いと判断し、胸ぐらを両手で掴み激しく揺らし始めた。
「待った…!待て!本当なんだ…本当なの!やめて!揺らさないで!説明するから…説明するから!」
言葉はスッと手を離してじぃぃっと見つめ、話を聞くことにした
「ご、ごほんっ!本来なら私には会えないはずなんだが君は私の部屋に干渉してきた。つまり君には何らかの特別な力が発現したということなんだ…理由は分からないが本当に有り得ない事なんだ…信じてくれ…」
初めて会ったときよりしおらしくなってるアルファを見て可哀想だと思ったのか仕方無く相手の話を信じてこくっと頷きソファに座った。
「ふぅ…それで私は君の能力が…ええと、人が眠るときに見る夢に関わる能力なんじゃないかと思ったんだ。でなければ私には会えない、そもそもこの部屋にも来れない様になっているんだ」
よく分からないが相手を見つめて頷いてみるとアルファは話を続けた
「それでだ、まだ確証は得れない。その為、少し手伝ってほしい。力には副作用があるからそれがなにかを調べてみたい。とにかく帰ったら寝てみてくれないか…そこでまた詳しく話そう、いいね?」
ん、とよく分からないまま相手の話を受け入れて頷き従うことにした。
「とりあえず、起こしてあげるから後はよろしく頼んだよ」
そうアルファが言うと、言葉の目の前が黒に包まれていき意識を失った。
そして目を覚ました、周りを見渡すと授業はもう終わっているような様子だった。
「ん…よくわかんなかったなぁ…」
「こ、言葉ちゃん…あの…」
「とりあえず帰ろっか…」
ボーッとしながらランドセルを背負い、教室を出た。何か聞こえた気がしたが聞こえないフリをした。
寄り道をせず急いで家に帰り、自分の部屋に行きランドセルを降ろすと夢の中で聞いたことを仕方無く実践しようとベッドに入って目を閉じた。
しかし、全く眠れない、先程まで凄まじい眠気が襲って来ていたはずなのにも関わらず寝れないのだ。
「どうしよう…あの変な人のところに行けない…」
ここで人生初の窮地に立たされたのだった。