プロローグ)語り手
この物語は戦いに終始する。
物語の開始と共に戦闘が始まり、戦闘の終結と同時に物語も終わるだろう。
その戦闘の結末は既に決定している。
ある一方が勝ち、一方が敗北する。
いや、もしかしたら何らかの奇跡が起きて、本来負けるはずだった側が勝つこともあるかもしれない。
あるいは神々が気まぐれを起こして、その戦いに介入する可能性だってある。
結末がわからないことが物語の醍醐味であるのならば、これ以上、それに触れることはやめておこう。
運命のままに進むのか、あるいは奇跡が起きるのか、誰にもわからないのが物語。
しかし一つ言えることは、主人公たちが倒そうとしている敵の魔法使いがとてつもなく強いという事実である。
彼はまだ若く、未熟な部分もあるが、歴史に残るほどの魔法の天才であり、その力を得るために様々な苦渋を舐め、これまでに多くの犠牲を払ってきた、らしい。
その敵の魔法使いの力が衆から抜きん出ているのには、それなりに理由があるのだ。
彼は充分な代償を払ってきた。
そんな相手を倒すのは容易ではない。
もちろん襲撃者である主人公たちも、その事実を充分に知悉しており、様々な作戦を練っている。
わずか一人の敵に対して、九人で立ち向かおうとしているのも、その作戦の一つであるだろう。
それに襲撃者の側にも、恐るべき魔法を使う少女がいる。
彼らはその少女に希望を託している。
前置きはそれくらいにして、さっさと戦闘の様子について語ることにする。
彼らは既に、その魔法使いが住むアパルトマンの前にスタンバイしている。
今まさにその建物の中に侵入しようとしているところだった。
登場人物表
シユエト
男性。リーダー格。暗殺のプロ。自分の姿を消す魔法が使える。牡牛班。
ブランジュ
女性。戦いの経験は少ない。近くの人を吹き飛ばして、牢獄のような場所に閉じ込める魔法が使える。牡牛班。
エクリパン
男性。物腰は軽く、よく喋るが、この戦いに最も積極的。あらゆる者の動きを止める魔法が使える。牡牛班。
アゴル
男性。魔法使いになりたての若者。牡牛班。
デボシュ
男性。魔法も使える戦士。闘技場の経営もしている大富豪。空気砲の魔法が使える。雌羊班。
ルフェーブ
男性。異国からやってきた素手で戦う戦士。デボシュの闘技場の王者。空気の段に乗る魔法が使える。雌羊班。
シャカル
男性。人を痛めつけるために魔法を使う犯罪者のような魔法使い。手を使わずに物体を移動させる魔法が使える。雌羊班。
アンボメ
知性も意識も失ったが、強力な魔法の力を持っている。シャカルに支配されている。普通の物体を爆発物に変える魔法が使える。雌羊班。
ダンテスク
男性。独りだけ離れた場所から、仲間たちに指示を出している。他者の感情の動きを読む魔法を使うことが出来る。