追憶
「元気ですか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「前は見えますか?私の声は、聞こえてますか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「喉は乾いてませんか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「お腹は、空いてないですか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「寒くないですか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「私の手は、暖かいですか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「苦しいですか?」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「⋯疲れたんですね。」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
少女は、洞窟のような、バックヤードのような、先が見えない暗闇の中、赤黒い液体に染まり、形容しがたい悪臭に包まれて座っている。
壁にもたれて記憶をなぞるように上を向き、目を閉じる。
肉塊に右手をかざしながら、楽しそうに、少し憐れむようにそれ見つめる少女は、目を向けられないような環境とは裏腹に上機嫌に見えた。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
黒い肉塊は、モゾモゾと動き出す。
少女は、胎動を眺めるような神聖な面持ちでそれを見つめる。
「ふふふ、いつもあなたに迷惑かけっぱなしだった私が、今はあなたの子守りをしてるみたいです」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「ゆっくりでいいですよ。ここには私しかいませんが、安全です。」
目を閉じた彼女の脳裏に、10年とも20年とも、昨日のたった1日だけにも思えるような記憶が浮かんでは沈み、膨らんでは溶ける。
「じゃあ、思い出話でもするとします。私とあなたと、あの子もあの子も、、みんなとの思い出です。」
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
「さて、何から思い出しましょうかね」




