第四話『神話の残響と、時の檻』
フラウです。
ユリエラが家に住みついてから、何故か私の睡眠時間は削られ続けています。
でも、今回こそは平穏に——そう思ってたんだけど、やっぱり事件が起きました。
(ミルク)「諦めたほうがいいのニャ、フラウの運命——」
……運命なら返品したい。
夜。
フラウの家の床下で、再び〝拍動〟の音が鳴った。
コ、コ、ン……。
「やだもう、この音やめてよ……心臓に悪い……」
「フラウちゃん、起きているのね?」
ユリエラが静かに姿を見せる。
「フラウちゃん……来たわ。封印の〝影〟と、あなたが過去にだけ見た〝存在〟がね」
「見た記憶ないんだけど!」
「あなたは忘れさせられたのよ。時間を少し、削られて」
「削られてるの!? 私の睡眠時間も削られてるのに!?」
「それは、別問題なのニャ」
影が現れ、混乱に拍車がかかる中——
突然、家全体が ゴウッ……! と低く震えた。
「ひえっ!? 地震!?」
「……違うわ。これは――」
ユリエラが、窓辺に手を翳した瞬間、
遠くの空が真っ赤に裂けた。
炎柱が天へ伸び、轟音が空を揺らす。
「な、なにあれ……!? 火事どころじゃない……竜!?」
「竜の咆哮なのニャ……! しかも、これはやたら強いのニャ!」
その赤い光の中、誰かが巨大な炎竜に向かって魔法を放っていた。
「誰か……戦ってる!?」
「ええ、フラウちゃん。炎竜……中位を超える個体。それに立ち向かえるのは、只者ではない筈――」
ユリエラは、すぐに動き出した。
「フラウちゃんは、ここで待っているの。影の封印は、私が戻るまで触られないようにしておくわ」
「え!? ちょ、ちょっとユリエラ!? 私も行く! だって、家に影がいるんでしょ!?」
「大丈夫よ、影は〝あなたが眠れば〟動けないもの」
「……え? 眠れば?」
「ほらフラウ、もう眠そうな顔してるのニャ」
「してないし……う……」
ユリエラが、ふっと優しく笑った。
「フラウちゃん、眠るの。今は〝夢〟のほうが安全だから」
「……なんで、そうなるの、よぉ……」
でも、闇の拍動と炎竜の轟音が混ざる中、
フラウの瞼は、重く重くなっていった。
「む……無理……限界……」
ばたり。
「本当に寝たのニャ!? こんな時に!?」
「可愛いわね……それじゃ、行ってくるわ」
ユリエラは蒼い髪を翻し、空へと飛び立った。
遠くの空ではまだ炎がうねり、謎の人物が炎竜に立ち向かっている。
フラウの寝息と対照的に、空だけが燃えていた。
フラウです。
気づいたら寝てました。
—―って、いやいやいや、なんで〝緊急事態=睡眠〟になるのよ、私!?
(ミルク)「フラウは、寝るのが特技なのニャ」
(ユリエラ)「戻ったら起こすわ、可愛いフラウちゃん。ふふふ」
……いや起こして、ほんとに。




