第一話『やる気のない魔女、動かされる』
こんにちは、フラウです。……あ、別に元気じゃないです。眠いです。
でも、ミルクが「第一章くらいは起きて書けニャ!」ってうるさいので、仕方なく起きました。
どうやら今回は、わたしが〝ちょっとだけ動く〟お話らしいです。
うん、たぶん、動きたくないけど動かされる……そんな感じ。
どうぞ、眠気まじりの魔女の一日をお楽しみください。
(ミルク)「寝ながら紹介するなニャ!!」
『Xにて動画公開中』
朝。
といっても、太陽はすでに頭の上。
魔女フラウ・メリッサドールの一日は、だいたい〝昼〟から始まる。
「……ふあぁ……あれ、ミルク。なんか、床が……光ってない?」
「今さら気づいたニャ!? それ、魔法陣ニャ! あんたの魔力が漏れて勝手に床に描かれたニャ!」
「え~……昨日の夢の続きで描いたのかも……?」
「寝ながら魔法を発動するなニャ!!」
ミルクのツッコミをよそに、フラウはあくびをかみ殺し、光る床をぺたぺたと触ってみた。
指先から淡い〝時間の波紋〟が広がる。
「……あれぇ、なんか妙に懐かしい感じ。これ、あたしの魔力じゃないよ」
「は? 誰のニャ?」
「知らんけど……もしかして、あの古時計の仕業じゃない?」
二人(?)が同時に振り向くと、部屋の奥の時計がカチ、カチと不気味に音を立てていた。
その針はゆっくりと逆回転し、時折、まるで心臓の鼓動のように震える。
「……ねぇミルク。時計って、鼓動するものだっけ?」
「普通はしないニャ!」
「だよねぇ~。うん、じゃあ寝よ」
「寝るなニャあああっ!!」
ミルクの悲鳴も虚しく、フラウはベッドに戻ろうとする。
だが、その瞬間――。
ドクンッ。
床に描かれた魔法陣が赤く光り、部屋の空気が震えた。
古びたカーテンが、ばさりと揺れ、机の上の本が勝手に開く。
「うわっ、ちょ、やばいニャ! 時の封印が……」
「ミルク、静かに。……これ、聞こえる?」
フラウは目を細めた。
空間のどこからともなく、誰かの〝声〟が重なって聞こえてくる。
『……時をつなぐ者よ……汝、怠惰を越え、輪廻の鎖を断て……』
「……あー……うん、やっぱ寝ぼけてるわ、あたし」
「寝ぼけてないニャ!! これ完全にやばいやつニャ!!」
「でも〝怠惰を越えろ〟って言われても……無理なものは無理じゃん?」
言いながら、フラウは床に描かれた魔法陣を、つま先で軽くつついた。
その瞬間、魔法陣の中心から、黒い光がぶわっと立ち上がる。
「にゃ、にゃにゃにゃ!? 封印が――!」
「……あ~あ。やっちゃった?」
「〝やっちゃった?〟で済む問題じゃないニャ!」
光の中から現れたのは、一冊の黒い本。
表紙には、銀色の紋章――〝時の檻〟の印が刻まれている。
「……あれ? これ、どこかで見たことあるような……」
「封印指定書ニャ! つまり、それを開いたら何か出てくるやつニャ!」
「ふぅん……まぁ、出てくるなら出てきてもいいかなぁ。退屈しのぎに」
フラウが黒い本を持ち上げた瞬間、ページが勝手に開き、風が逆巻く。
天井に描かれた魔法陣が起動し、光と影が混ざり合う。
『――目覚めよ、“封印の鼓動”』
そして、静寂。
フラウの髪がふわりと揺れ、ミルクが身をすくめる。
「……あーあ、また面倒なの呼び起こしちゃったかも」
「〝かも〟じゃないニャ! 完全に呼んだニャ!」
「ま、なんとかなるでしょ。ね、ミルク?」
「……この子、ほんとに世界を動かす魔女ニャのに……なんでこう……」
ミルクは尻尾をぴしっと立てて、ため息をついた。
フラウはそんな猫の頭を、のんびりと撫でながら微笑む。
「……ねぇミルク。次の昼寝、二人で一緒にしよっか」
「話をすり替えるなニャ!!」
こうして、怠惰の魔女と使い魔の猫は――
世界を再び動かす〝封印の鼓動〟に、知らぬ間に巻き込まれていくのだった。
……ふぁぁ……終わりました。
どうやら封印とか、黒い本とか、世界がちょっとざわついてるらしいけど……
まぁ、今はいいかな。お昼寝の時間だし。
(ミルク)「いや全然よくないニャ! 封印解けたニャ!?」
(フラウ)「だいじょぶ、寝ればなんとかなるって」
次回、たぶん動きたくない魔女が、ちょっとだけ動かされる第二話。
よかったら、またのんびり覗きにきてくださいね。




