プロローグ『やる気のない魔女と、寝ぼけた朝のはじまり』
光と時間を司る魔女フラウと、口うるさい白猫ミルクのゆるやかで神秘的な日常。
――眠ることが、世界を守ること!?
ゆるふわ×神話系ファンタジーをお届けします。
『Xにて動画公開中』
「……んぁ~……あと五時間だけ寝かせて……」
朝日が差し込む古びた家のカーテンのすき間で、魔女フラウ・メリッサドールは毛布にくるまっていた。
ベッドの上は、まるで小さな戦場。
開きっぱなしの魔導書、転がる水晶球、そして寝ぼけた主の頭の上には――。
「フラウ、起きなさいニャ! また魔力漏れてるニャ! 床の下でキノコが育ってるニャ!」
「ん~……勝手に育っとけぇ……あたしは今日、動かないって決めたの……」
白猫の《ミルク》は、前足でフラウの頬をちょいちょいと突いた。
その顔は完全に〝母親〟のようである。
「決めてもムダニャ。昨日だって〝今日は働く〟って言って、結局お昼寝してたニャ!」
「だってぇ……空気が眠そうだったもん」
「空気のせいにするなニャ!」
ミルクがため息をつくと、部屋の奥の時計が「カチリ」と音を立てた。
止まっていた古時計が、ゆっくりと針を動かし始める。
「……ん? あの時計、ずっと壊れてたんじゃなかったっけ?」
「まさか……フラウ、これ……時の魔力が……」
「いや、知らんし……ていうか、ミルク、あたしまだ寝てるから……」
フラウは、再び布団に潜り込もうとしたが、その瞬間――
魔女の家の外から、風と共に光の粒が舞い込んだ。
部屋の中をぐるりと回る光が、フラウの髪をそっと撫でる。
どこからか、優しくも不思議な声が響いた。
『――やる気のない魔女よ、目覚めのときです。時が再び動き始めました』
「……やる気のない魔女って、あたしのこと言ってる?」
「他に誰がいるニャ!」
「うわぁ、やっぱそうかぁ……せっかくの寝坊チャンスが……」
フラウはのそっと起き上がり、寝癖のついた髪をかきあげた。
その瞳の奥で、淡く〝時の魔法陣〟が光る。
「……ま、いいや。どうせロクでもないことの始まりでしょ」
「そんな軽いノリで世界を動かすなニャ!!」
ミルクの叫びを背に、フラウは大きく伸びをした。
窓の外では、逆さまに流れる雲と、踊る光の花弁。
――そして、怠惰の魔女のゆるい一日が、世界の時を再び動かし始めるのだった。
「世界を救うより、もう一時間だけ寝かせて――」
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