姫として覚醒したけど、加護なし(ポンコツ)で世界の最終安全装置を落としました
ウチ、アイル。
黄金郷を飛び出して、時空転送便に密航した女。
<アイル 転生後>
転生して、女神の千年加護はもう失った。
魔法なんて、全然使えへん。
でも、孔明に会いたい。
アイツの嫁として、とにかく一発殴り込みたいんや。
まだ抱かれてへんけどな。
「おい、アイル。諸葛巾を急ぎで届けてくれ。孔明がマンドラゴンを入れたら、穴を開けたらしい」
リルヴァナの命令は、孔明の暴走を止める『最終安全装置』を届けること。
こんなもんが、あのクソボケに効くわけないのは、ウチが一番よう知っとる。
時空コインもないし、正規の手続きを待ってたら日が暮れる。
だから、船に飛び乗った。
アナウンスが響く。
「全ての異世界が崩壊したので、荷物が届かない場合があります。絶対に置き配はしないでください」
ウチの顔が真っ青になった。
な、なんやて……?
皆、黙ってたけど、リルヴァナが世界を復活させたんか?
「異世界カオスフィアに到着」
アナウンスが続く。
ここやな。
とりあえず、降りよか。
って、ここはどこやねん。
辺りを見回すが、孔明の気配なんてどこにもない。
アイツの手がかりを探すために、適当な宿屋を探そか。
お金はないんやけどな。
その時、遠くから声が聞こえた。
「お待ちください! これ以上、お城を抜け出してはなりませんぞ!」
ウチのことか……?
はぁはぁ、と息を切らす声が近づいてくる。
「急いで戻りますぞ、姫!」
金閣寺みたいな豪華な馬車に乗せられ、身だしなみを整えられる。
どうやらウチは、この世界で「姫」という設定らしい。
孔明の場所もすぐにわかるやろ。
ラッキーや。
そう思って、孔明に届けるはずのリセットキーを確認する。
リュックに手を突っ込み、探す。
何度も何度も探す。
……あれ?
孔明の暴走を止めるはずの『諸葛巾』が、どこにも見当たらへん!
密航のドタバタで、どこかに落としたんや!
最悪のピンチ。
世界の最終安全装置を無くしたアホな姫が、孔明に再会する。
――この大騒動、どうなるかは、皆の想像にお任せや!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




