全異世界ログアウト! まだ終わりじゃない、仲間がいる
ウチ、アイル。
ヤバい。これ、マジでヤバいやつや。
大地が音を立てて裂けていく。
空は反転し、上下も左右も分からん。
さっきまで戦ってた張角の陣営も、トウモロコシの山ごと吸い込まれて消えた。
『終焉共鳴』
――全異世界を滅ぼすスキル。
冗談やと思ってた。
けど今、世界の端っこがデータみたいに削除されてる。
地平線が、まるで動画の編集ミスみたいにバグって消えていくんや。
「ちょ、ま、待って!? ウチ、そんなもん発動した覚えないで!?」
叫んでも、返事はない。
空に浮かぶ太陽まで、まるでGIFみたいに点滅しとる。
空気そのものがコード化して、数字の雨が降ってくる。
リュミエルの声がまた脳内に響く。
(あら、やっと気づきましたか。あなたが“怒り”を完全に解放したとき、それが起動条件なのです)
「勝手に人の感情をトリガーにすなぁぁぁっ!」
全世界が壊れていく。
蒼い空が割れ、海は逆流し、山々はピクセルの粒になって消滅する。
人々の悲鳴すらデータノイズになって、風に混じって消えていく。
曹操も、黄巾兵も、モザイク配信の視聴者たちも――
みんな、「オフライン」になっていく。
「ログアウト、ログアウト……ログアウト……」
という謎のシステム音が、どこからともなく漏れてくる。
ウチの手のひらが透けていく中、リュミエルの声が、直接、頭にねじ込まれてきた。
まるで勝利宣言のように、冷静に、皮肉に。
(ありがとう、アイル。これで全ての異世界は“平等”になります)
「そんなん、求めてへんて!」
涙が浮かぶ。
もう、笑うしかなかった。
まさか世界の終わりが、ウチの感情ひとつで決まるなんて――
そんなオチ、誰が想像する?
――そして、光に呑まれた。
通信は切断。
配信は停止。
この世界の記録は、ゼロになった。
それでも、どこか遠くで声がする。
(……アイル、まだ終わりじゃない。仲間がいるだろ?)
ウチの意識は、データの海に沈みながら、次のステージへと落ちていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




