ラスボス詰んでるのに、関西魔王はまだ見せ場を欲しがる
ウチ、アイル。
どうなるんや、地球。
関西の魔王イツキは、固有スキル『超回復』で傷を塞いだ。
血の気の引いた顔で、かろうじて声を絞り出す。
「……スマン、来てくれたんか」
ウチは口を尖らせ、仏頂面のまま答える。
「別にアンタのために来たんやない。第三十五代アイルとして、伝承に従って加勢しとるだけや」
――やらかしてもた。
また素直になれへんかったわ。
「やっぱりアイツの子孫は、あのまんまやな」
イツキは薄く笑った。
その頭上では、サラ、レイナ、かなえ――ラグナヴィアの神々が、フリーズした敵と会話を交わしている。
シルヴァーナたちは悪魔の塔から吸い上げられた魂を解き放ち、戦場の神兵どもは『天界創造』の光に呑まれ、ほぼ壊滅。
死滅王冠ネヴァーベンドも、完全に動きを封じられとる。
……完全にチェックメイトやん。
そんな中で、イツキが低く呟いた。
「……かっこええとこ、見せたるわ」
血に濡れた足を引きずりながら、ゆっくりと立ち上がる。
いやいやいや、もう決着ついとるやろ!?
なんで今さら舞台挨拶みたいに出てくんねん!
胸の奥で思わずツッコミを入れながら、ウチはその横顔を見つめてしまった。
アホやのに、なんでその表情が――ちょっとだけ頼もしゅう見えてまうんやろな。
……ホンマ、損な性分や。
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