強制転送! 黒き業火に沈んだネオトーキョー
ウチ、アイル。
卒業ライブの熱狂に包まれとる。
孔明が帰りの馬車で急に声をかけてきた。
「未来のネオトーキョーで、子孫がアルカナ・ヘブンの神々と激突します。開祖アイルがいてくれるだけでいい、という話です」
強制イベントか?
気乗りはせんけど、いかなしゃーない。
「せっかちやな!」
ウチが返事をする間もなく、転送の光に包まれる。
眩しい――いや、目が痛い。
もうちょい優しくしてくれや!
視界が焼けるような痛みが去り、ウチは目を開けた。
そこは、黒き業火に沈んだネオトーキョー。
崩壊した摩天楼と炎の残骸だけが広がる、終末の光景や。
瓦礫の上に立つ、可憐な少女が微笑んだ。
「我が名は孔明。初めましてなのだ!」
「イベントが始まるんやな」
「ええ、今日はビシシッと決めるので、開祖に見て欲しいのです」
「よっしゃ、ええとこ見せてや」
その瞬間、世界の命運を背負った五人の伝説が光を爆発させながら姿を現した。
王権の象徴、黄金のマントを纏うロイヤル勇者エリザベート。
戦場を朱に染める血染めの剣、クリムゾン勇者ブリューゲル。
鋼の肉体、不屈の魂のUSV勇者ゼットメン。
千夜一夜の幻獣を従えるアラビアン勇者スーパーバトラス。
東洋の覇気を解き放つKPO勇者イミョンゴル。
そして、中心に立つのは――関西の魔王、イツキ。
どう見ても、地球とアルカナ・ヘブンとの最終決戦やな。
舞い散る火花の渦を抜け、天空から巨大な影が降臨する。
崇高たる死滅王冠、ネヴァーベンド。
仮面の奥で嗤いが揺れた。
「愚かなる勇者どもよ。滅びの舞台へようこそ」
ラスボスか……。
てゆーか、ウチの出番ないやろ。
まあ、いつものことやけどな。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




