洛陽城の舞台裏――ワンカップ片手に実況してみた
ウチの名はアイル。
酒と人生を呑み干す女。
洛陽城――この世の富が一点に集まる聖地や。
金銀財宝は宝箱にギッチリ詰め込まれ、壁や柱は黄金でギラギラ輝き、天井にはクリスタルのシャンデリアがいくつも吊るされとる。
豪華絢爛。ここに集まる者は権力と美を味わい、欲望をむき出しにする。まさに王の宮殿やな。
玉座の上では城主・袁紹が豪快に笑い声を響かせた。
「はっはっは! 朕は機嫌が良い。あの孔明を退けたのだからな!」
……はい、ドヤ顔キター。えー、完全に曹操の手柄を横取りしてますやん。
左右には、ちょっと際どい衣装のエルフたちが従い、甘い香りと笑みで王座周りを包んでいた。
曹操は目を輝かせて両手をこすり合わせる。
「我が身は、これからも袁紹様に捧げる所存です――!」
――ワッショイ、ヨイショ勇者か?
この男に二つ名は足りへん。いや、もう伝説級やで。
ウチは遠く離れた角のミカン箱を即席テーブルにして、ワンカップ片手にカマボコをつまむ。御前は許されんらしいから、アリーナ席から見学や。
(なんぼなんでも、世界観違いすぎやろ。ここ、センベロか?)
そう思いながら、女神の加護「真実の心」をアプリで起動した。
画面に文字が浮かぶ――袁紹の笑顔の裏に隠された邪悪な本心、曹操の目に潜む野望。嘘やごまかしは一切通用せん。
(……ああ、やっぱり。こいつら、街や人々なんか眼中にない。ただ権力と欲望だけで動いとる……)
袁紹は曹操に視線を向け、本題を切り出す。
「帝勅命の劉備軍、孫堅軍、司馬懿軍――すべて洛陽に押し寄せる。朕を討ち取り、国を興すつもりだろう?」
そう言いながら、袁紹は胸元から玉璽を取り出す。
玉璽――皇帝の権威を象徴する印章や。これを持つ者は正統な命令権を得られる。
曹操の瞳が野望でギラリ。
(それを我が手にして、いつか国を作る……!)
袁紹はその目の輝きを見逃さない。
(……なるほど、貴様の野望も大きいな)
口元には、計略の匂いを残す笑み。
そして袁紹はひそかに奸計を思いつく――曹操を前線で目立たせ、敵を動揺させ、劉備・孫健・司馬懿の軍勢を巧みに誘導する。
城門の一部を開放して「撤退ルート」を見せかけ、敵を罠に誘い込む計画だ。
(ノーパン勇者よ……これぞ三国の策略、勝利の舞台だ!)
ウチの心には、微妙な苛立ちと使命感が入り混じる。
(……戦争って、こうも派手に演出されるんやな。
でも、放っておけば国が滅ぶ……ウチが動かんとアカンか)
ノーパンはあえてスルーして、
近衛兵におでんのおかわりを依頼した。こんにゃく多めで。
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