アイル引っ越し大作戦:軍師はオマケで故障中
ウチ、アイル。
新しい冒険を求める女。
壊れた冷蔵庫のゲートをくぐって、洛陽から成都へお引っ越し中や。
なんとかえもんの、なんとかドアみたいなイメージ。
娘々たちとの挨拶も済んだ。
「おおきに。いつでも頼ってきてや」
「アイルさん、かまぼこのつまみ食いしてたの、実は私なんです……」
「成都でもつまみ食い歓迎やで」
泣かせるな。
そんなん、最初から知ってるわ。
トノサマバッタが大発生して、洛陽も食料不足や。
備蓄米を玄徳の名前で大放出したから、農民の志願兵がようけ集まっとる。
人も金も物資も情報も、どんどん流れ込んでくるんや。
一方で、孔明は大軍を率いて蜀へ。
引っ越し業者みたいに「転送屋」ってとこに頼んだらしい。
……あいつ、戦争を宅配便感覚で動かしとるな。
でも、今はそんな呑気なこと言うてる場合やない。
洛陽が戦火に包まれそうなんや。
呂布と曹操が揉めて、司馬懿は二人が共倒れするのを待っとるらしい。
めちゃくちゃやな。
孔明曰く――
「離間の計。小石を放り投げるだけでよいのです」
そう言うて、例の涼しい顔で笑う。
……うふぉふぉふぉふぉっ。
おい待て、なんやその笑い方。
壊れかけの炊飯器か。
正直、ウチの手には負えそうにない。
みんなもそう思うやろ?
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