孔明の知略、アイルの決意──天下三分の計
ウチ、アイル。
災難やったわ。
洛陽。
酒場 《レッドライオン》。
昼間からグラスを傾けるエドワード。
豪快に笑いながら、おでんをつまんでいる。
「孔明はナポレオンを撃退したのか? すげぇな」
ガハハと響く笑い声。
でも、これは笑いごとやない。
「洛陽を、曹操と司馬懿と呂布に明け渡すなんて……劉備さまは本当に蜀に行くのかしら……」
《ムーンライトセレナーデ》のヴァレンティアが顔を真っ青にして、低い声で言った。
「ウチはこのお店をエドワードに返そうと思う」
奴の目が驚きで見開かれた。
「まさか、蜀の成都でお店を出すのか?」
「よう分かったな。パトロンがおるねん。かなり太い客や」
ヴァレンティアが少し不安そうに言う。
「私たちも付いていきたいんだが……」
ウチは肩をすくめて答える。
「そこのバックヤードに壊れた冷蔵庫あるやろ? あれ、向こうに行けるようにしとるから、いつでも遊びに来て」
エドワードはグラスの中身を一気に飲み干し、ちょっと黙った後、笑った。
「まったく、お前らしいな。でも、応援するぜ」
「やれることをやるだけや」
ニヤリと笑いながら、ごぼ天にマヨネーズをかけて、指でつかんだ。
未来をつかみ取るかのように。
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