表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/162

ごぼ天、裁かれる──孔明の不敵な笑みと異世界裁判

 ウチ、アイル。

 罪を背負って、人を憎まず。

 孔明と他愛ない会話をしていたら、突然、金髪の美少女が現れた。


 その少女は、一切の感情を顔に出さず、ただ、まっすぐにウチを見つめている。

 

異端審問(ジ・インクイジション)


 少女が告げたそのスキル名が、ウチの脳裏に深く刻まれる。


 その瞬間、油断したウチの視界がぐにゃぐにゃに歪んだ。



 気が付いたら、裁判所の中やった。


「皆さん、静粛に」


 ガンガン!と金槌かなづちを叩く音が響く。


 聖職裁判官インクイジターや。


 傍聴席には大勢の兵士や聖職者がおって、大きなざわめきが起こっとる。


 隣には孔明。


 なんでか知らんけど、オーロラが渦巻いた模様の、巨大なペロペロキャンディー持っとるし!


 扇子はどこいったんや、お前!?


「これはジャンヌ・ダルクのスキルです」


 冷静に解説すな!


 てか今、それどころちゃうやろ!


 こんな時、ウチが取るべき行動は一つや。


「異議あり!」


 裁判官はウチをジロジロ見てくる。

 その後ろには、さっきの金髪の美少女が、無表情なまま控えていた。


「異端者アイルよ。貴様は、神聖なるパンを冒涜ぼうとくした罪により、ここに召喚された。弁明の余地はない」


「は? なんのことでっか?」


「とぼけるな! 貴様が揚げているという、あの得体の知れぬ棒状の食べ物。ごぼうという名のそれは、小麦粉を衣として纏わせ、清らかな油で揚げたという……これは明らかに、神聖なるパンへの侮辱ぶじょくである!」


 ……アホらし。


 ウチの頭の中で、毎日ごぼうを揚げてた記憶が走馬灯そうまとうのように駆け巡る。


 油が弾ける音、香ばしい香り……それが、異端審問にかけられるほどの罪やったんか!? 


 こんなん、絶対おかしいやろ!


「ちょ、ちょっと待って! それ、パンやなくて、衣やし! そもそも、ごぼうは野菜やん!」


 ウチが必死に叫んだら、傍聴席から「ごぼうは異端!」「生のごぼうを食え!」といった野次が飛んできた。


(ああ、もう! こいつらアホや! ほんま、孔明! なんとかせぇ!)


 隣の孔明は、相変わらず涼しい顔でキャンディーをめとる。


(あかん、コイツほんま使えへん!)


 裁判官が再び金槌を振り上げた。


「弁明は聞かぬ! 異端審問は、もはやお前の魂に問いかけている。貴様、そのごぼうという名の棒で、一体何を成そうとしたのだ!」


 ウチは愕然がくぜんとした。


(……ごぼ天、全国チェーン化計画を……)


 その思いが脳裏をよぎった途端、『罪状確定』の文字が浮かび、ウチは意識を失った。


 ……この異世界召喚、どうやらごぼ天にまで自由は無いらしい。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ