カルビ姫と最強の策士、まさかの夫婦に。ただし世界の命運を賭けて
ウチ、アイル。
嫌な予感。
焼肉「梁山泊」。
最高級和牛コースが次々と運ばれてくる。
「……妻に迎えたい」
孔明の言葉が、ウチの頭の中をグルグルしとった。
その瞬間、孔明は悪戯っぽく口元をゆるめ、扇子で顔を隠す。
「さてと、冗談はさておき……」
はぁ!?
なんやねんそれ!
ウチの純情なハートをもてあそぶ気か、この策士!
そのとき、孔明はすっと紙切れを差し出した。そこに書かれていたのは、ウチの思考そのものやった。
……キモッ。
背筋がゾワッとした。生理的に受けつけへん。
だが孔明は、そんなウチを気にもせず、ホルモンを頬張りながら言った。
「これは権能なんです」
なんや。
女神から与えられたスキルか……。
孔明はハイボールを一気に飲み干し、喉を潤す。
「女神から、イツキたちを倒せと命じられました。そうすれば元の世界に帰す、と」
「でも、その女神はもう倒されたはずやろ?」
「ええ。本来なら我々は自由の身。……ただし、タキオンだけは違う」
「……あいつが、イツキと戦ったのを見ると、この世界そのものがヤバいかもしれんな」
「アイル。あなたなら、彼女たちと話ができるはず」
なるほど、そういうことなんか。
英雄を召喚し、戦わせるこの世界の真実。
女神がウチに千年の加護を与えた理由も、すべては今日のための保険。
孔明の権能が描いた脚本通りに、ウチは敵を倒すための駒として選ばれたんや。
「お前が仕組んだんやろ。ハッキリ言えや。神々もろとも、全部ぶっ壊せって」
孔明はふっと笑みを浮かべ、ゆっくりと視線を向けた。
「……さすが、我が妻」
その言葉に、冗談の色はひと欠片も残っていなかった。
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