猛虎と焼き肉の香ばしい匂い――孔明、妻宣言
ウチ、アイル。
モテ期が来たんやろか。
洛陽。
焼肉「梁山泊」。
歴史は長く、もう三千年ぐらい営業しとるらしい。
ウチと孔明のサシ飲み……そういえば、記憶にないなぁ。
有名人が二人で歩けば、週刊誌の記者がすっぱ抜くかもしれん。気を遣うわ。
赤い暖簾をくぐると、王 大徳が青龍刀を持って、厨房から飛び出してきた。
「あいや、今日はコンパでうるさいアルヨ!」
奥の席を覗くと、趙雲子龍がコンパを開いていた。
かなりの盛り上がり。
「どうだ、俺の槍さばきは、ガハハハッ!」
そう言いながら焼き肉をひっくり返す姿は、さすが歴戦の猛者。
キレイどころも笑顔で拍手している。
「まさに猛虎、愛立つ」
孔明がドヤ顔で言った。
もしかして酔うてるんか?
すべった感はハンパないけど、こんな日もあるんやろな。
ウチらは洛陽を一望できるVIPルームへ足を運んだ。
「孔明、ウチのこと、どう思てるんや?」
「……妻に迎えたいと」
――――肉の焼ける香ばしい匂いの中で、空気が止まったように静まる。
その言葉の重みが、思わず胸に刺さる。
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