焼肉奉行 趙雲、レッドライオンの夜に吠える
ウチ、アイル。
運命の再会。
酒場 《レッドライオン》。
今日のお店は、ちょっと特別やった。
長坂橋の英雄、趙雲子龍が、クエスト受付嬢のサッキュンと焼肉デートのあとに立ち寄ってくれたんや。
(……ほんま、女子に弱いんやな、趙雲って)
心の中で呟く。
戦場では鬼神の如き硬派な武将が、女の前では照れ隠しの機械みたいになっとる。
「……あの、えっと……サッキュンが、ちょっと、あの……」
彼女が顔を赤くするのを見て、ウチはニヤリ。
すると、趙雲がぽつりと呟いた。
「……いや、こんなに柔らかい肉、久しぶりに食べたな」
「は!? ちょ、趙雲さま!?」
思わず吹き出した。
戦場の鬼が、まさかの肉フェチ発言や。
サッキュンは顔を真っ赤にして笑いをこらえてる。
タキオンも誘ったけど、用事があるらしい。
女か?
まるでウチが惚れてるみたいやな。
まあ、ええねんけど。
店は貴族のお忍び客で賑わい、大盛況やった。
……あれ?
窓の外、空を見上げると、タキオンの気配がした。
「……あとは頼むで」
スタッフに声をかけ、合流魔法で路地裏へ駆けつける。
彼は倒れていた。
「どないしたんや?」
「……敵にやられた」
≪女神の息吹≫で、彼の傷を癒す。
こんなに弱々しいタキオンを見るのは初めてやった。
絶対に許さへん。
ウチの子をこんなんにして。
そのとき、闇を裂くようにゲートが開いた。
目の前に現れたのは、男のような巨人女。
体格も迫力も、とんでもない。
体の力が抜け、息が止まる。
「おい、貴様。そこで寝転んでいる男を渡せ。さもなくば――」
「イツキ……か……?」
戦いの予感が、洛陽の夜にざわめきを落とした。
ウチの心臓も、激しく波打っとる。
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