スマホの裏に隠された時空の力、その先に待つ運命とは?
ウチの名はアイル。
ツッコミ担当や。
目を覚ますと、見慣れた酒場 《レッドライオン》のバックヤードだった。
硬い木製の床に、埃の匂いが漂っている。
ああ、そうか。
ロウィンとシルヴァーナに再会したのは、全部夢やったんか。
「んなわけ、あらへんで」
突然、額の上に置いていたスマホが喋り出した。
その声を聞いた瞬間、ウチはようやく「夢じゃなかったんや」と気づく。
背筋がひやりと冷たくなる感覚が走った。
「今後、あの女神には会われんのやな?」
「……うむ。もう無理だろう」
スマホは短く答え、再び沈黙に戻った。
その不穏な空気が、ウチの胸を締め付けていく。それでも、ウチの心には、あの女神や世界のことが、疑問として残っていた。
「それはそうと、お前、そろそろ正体を教えてくれてもええんちゃうか?」
スマホはまた無言。
その態度にイラっとしながらも、ウチは畳みかけるように問い続けた。
「何かあった時の転送ポイントやろ? やから、ウチの監視もしてたんやな?」
静まり返るスマホ。
「しかもAIとちゃう。ホンマは、スマホのフリした人やないんか?」
図星をつかれたのか、スマホが震えだす。
「嘘発見器みたいやな!」
バイブ機能でごまかすつもりか?
ウチは笑いをこらえながら、起き上がってスマホを掌に乗せる。
「なあ……ウチはあんたの味方や。だから、全部話してくれへんか?」
やがて震えが止まり、かすれた声が漏れた。
「……私の本当の名は、タキオン。アイルをこの世界に導いた、時空の案内人です」
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