魂を縛る鎖、断たれし絆
――その声が、胸を貫いた。
「――愛琉……お前、なのか?」
ロウィンの問いかけに、ウチは泣きそうになりながらも笑った。
ほんまに……まだ覚えとったんか。
「そうや。世界が一つに巻き戻る中で、ウチだけ別の世界に飛ばされたんや。
……幼馴染の勇者にまで裏切られて、どうしようもなくなった時に――女神が力をくれたんや」
隣のリュミエルが、いかにもって顔で頷く。
優しげに見せて、ほんま腹立つ笑みや。
「困っている人を助けるのは、私の役目ですから。かつての仲間と再会……まるでドラマみたいですね」
――ドラマ? ちゃかしとんのか。
でもウチ、ここで言い返せん。胸の奥が、ずっと縛られとる。
その時や。
シルヴァーナが一歩前に出て、空に向かって手を掲げた。
「来い――《冥哭の剣 ディスティニア》!」
空気が裂けて、轟音と共に大剣が現れる。
耳を突き刺すような叫び声……いや、あれは剣の声やない。魂そのものが叫んどる。
「……っ!」
ウチの胸がざわつく。リュミエルの顔も初めて曇った。
「その剣……魂そのものを断ち切る禁忌の……!」
シルヴァーナは冷たく笑う。
刹那、光が走った。
ウチの中と女神を繋いでいた――魂の回廊が露わになり、次の一撃で粉々に砕け散ったんや。
「なっ――!?」
リュミエルの声に焦りが滲む。
「今、この子を奪われる訳には……!」
女神の足元に魔法陣が展開され、眩しい光が溢れる。
ウチの体が勝手に浮かび、光に呑み込まれていく。
「やめろ!」
ロウィンの叫びが響く。彼が拳を握りしめるのが見えた。
……いやや。
まだ話したいこと、いっぱいある。まだ終わりたない。
「あっ、ちょっ……なんでやねん!」
ウチは必死に手を伸ばした。驚きと懇願と、どうしようもない戸惑いを全部のせて。
でも、届かん。
ウチの手は空を切り、そのまま身体は粒子になって散っていった。
――冷たい絶望が胸を掴む。
最後に見たんは、ロウィンの凍りついた顔。拳を突き出したまま、声も出せん姿。
「……愛琉」
その声が遠のいていく。
そして、リュミエルの冷笑が、耳の奥に焼き付いた。
「惜しかったですね。ですが――彼女はもう、私のものです」
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