ウチは元・勇者パーティーの荷物持ち。世界を救う方法は、たぶんパブで見つかる
「アイル? ……ウチの名前って、ナナシノ ナナコと違うんか?」
目の前で、女神が思いっきり吹き出した。
ちょっと、初対面やのに、マジで失礼ちゃうか?
「それって、あなたのフルネーム?」
腹を抱えたまま、女神は大空へ舞い上がっていく。
「ちょ、ちょっと、待ちいや!」
女神が涙目で、ウチを見下ろす。
どう見ても、笑いすぎやろ。
「魔法も使えるけれど、神器とリンクしなさい」
そう言うと、コンパクトで美しい箱が地上に落ちてきた。
アイルは咄嗟にキャッチしてひっくり返す。
そこには古代文字がびっしり。
「ス……マ……ホ?」
もう一度見上げると、女神の姿はどこにもなかった。
その時だった。
王都・洛陽を取り囲む城壁から、敵の襲撃を知らせる鐘の音が鳴った。
東西の函谷関、虎牢関が同時に突破されたようだ。
街に緊張が走る。
「しゃーないな……まずは落ち着こか。パブで一息入れてから作戦や!」
西洋風の石造りパブの灯りが、戦火の不安をほんの少し和らげる。
ウチは拳を握りしめ、千年の加護に背中を預けた――さあ、ここからが本番や。
小さく息をつき、ビールを軽く口に含む。準備は万端や。
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