怒りさえも調理する、ゴッドミシェロンの狩り
ウチ、アイル。
騎士の「純粋な後悔」を食らったことで、全身の麻辣熱は最高潮に達しとる。
「う、うめぇ……! こんな、苦いのに、なんて滋養のある後悔なんや!」
極限まで神威を消耗した「空っぽの鍋」が、一瞬だけ、満たされた感触を覚えた。
「くそっ、これじゃあ、全然足りへんわ!」
ウチは、次の獲物――鎖を振り回して暴れるバーサーカーと、冷たい鎌を構える死神少女、そして静かに青龍偃月刀を構える偽りの関羽を見た。
バーサーカーは、騎士が消滅したのを見て、さらに牙を剥いた。
「てめぇ! 獲物を奪いやがって! 俺の憤りは、誰にも抑えられねぇんだ!」
鎖が闇を切り裂く。
それは、バーサーカーの怒りそのものやった。
「やかましいわ! そんなもん、出がらしにもならへん!」
偽りの関羽が、冷笑を浮かべて、青龍偃月刀の切っ先をウチに向けた。
「この世界、食うか食われるかでござる。貴様の運命は、既に定まっておる」
『かっかっかっ! マスター! 敵の挑発に乗るのデス!』
ドクロスマホが甲高い電子音で煽る。
バーサーカーが鎖を振り回し、地を這う。
その爆発的な怒りのオーラに、天空竜宮城の石畳が融け始めた。
ウチは、その鎖を真っ向から受け止めるため、両腕をクロスさせた。
「制御不能な怒り」の鎖が、ゴツンッ! と腕に当たる!
熱い!
「最高の料理人は、怒りさえ調理して、感動のスパイスに変えるんや!」
ウチの全身の麻辣オーラが、一瞬で最高級の『冷却』に切り替わった。
熱と冷気が激しく衝突し、路地裏全体が巨大な蒸し器のようになった。
ウチはバーサーカーの鎖の根元に、氷点下の炎を纏わせた刃を叩き込んだ。
キンッ!
鎖は脆くも砕け散り、バーサーカーの装甲は霧散した。
そこから溢れ出したのは、純粋な『憤怒』の光。
『マスター! これが『制御不能の憤怒』の味! 最高の調理法は、『冷静の出汁』で急速に煮詰めること!』
「食らうたる!」
ウチはその光を、先ほど騎士の『後悔』を吸い込んだ中華菜刀で掻き集め、一息に吸い込んだ。
ゴオオオオッ!
後悔と憤怒という二種の感情が混ざり合い、ウチの体内で新しい法則を生み出そうと軋む。
「ちくしょう! 満たされへん! もっとや!」
ウチは、残る二体――偽りの関羽と死神少女――をじっと見据えた。
死神少女はセーラー服を翻し、大鎌を構え、偽りの関羽は青龍偃月刀の切っ先を向けたままや。
「よっしゃ……お前らも、まとめて調理したる!」
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